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アンティーク新着品 その1


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No.20129 エドワーディアン イノベーション シルバープレート ブレッドフォーク
長さ 18.0cm、重さ 42g、最大横幅 4.8cm、1910年頃の英国製、一万三千円

ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃のイギリスは大発明時代でありましたが、その頃の時代の気分がよく伝わってくるアンティークです。

エドワーディアンの発明品で、注射器のようにして、刺したパンが押し出せる仕組みです。

写真一番目はパンをさす前の状態です。写真二番目は注射器のように柄先部分を押し込むと、スライダーが前に動いて、パンを押し出す状況が見えています。

可動部のある百年以上前のアンティークが、完品状態で今に至っているもの、レアものアンティークと言ってよいでしょう。

英国パテントオフィスのレジスター番号から1910年代の作と分かるのも、このアンティークの優れた特長になっています。

エドワーディアン イノベーション シルバープレート ブレッドフォーク


No. 20121 スターリングシルバー GOOD LUCK ホースシュー ペンダントヘッド
写真で見てホースシューの横の長さ 2.4cm、縦 2.3cm、最大厚み 3mm、1935年 バーミンガム、一万三千円

このスターリングシルバー ホースシュー(馬の蹄鉄)のペンダントヘッドが作られたのは今から八十年ほど前の1935年です。 銀地金の雰囲気がよく出たリアルな蹄鉄のデザインになっています。 ライオンパサントの横の長さは3ミリほどあって、大きめなホールマークが刻印されているのは、ホールマーク自体を見て楽しむという作り手の意図を反映しているのでしょう。

U字型の開口部が下向きになる格好で、これはヴィクトリアンからエドワーディアンの時代に好まれたホースシューの向きになります。その後、第一次世界大戦を経て、ホースシューはU字型の置き方が好まれるように人々の好みは変化していきました。

アール・ヌーボーからアール・デコに嗜好が変わっていったように、大戦争のビックインパクトが社会に与えた影響の大きさを反映しているのではないかと思っています。

写真のホースシュー ペンダントヘッドの場合は、昔好みな方の嗜好を反映した留め具の付け方になっているというわけです。

もう一つ取付穴があって、横置きも可能になっています。ヴィクトリアン タイプが落ち着くメンタリティーの旧世代の人から、新世代の方にオーナーが変わって、横置き用に仕様変更されたのではないかと思い、興味深く見ております。

裏面にはホールマーク以外にも、デザイン登録したレジスター番号と、「ENGLAND」の刻印が見えています。 ホールマークは順にHG&Sのメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1935年のデートレター「L」になります。 もう一つ、シルバージュビリーのマークも刻印されているのも面白いところです。

ヴィクトリアンやエドワーディアンの作ではありませんが、それでも1935年作といえば、かなり古い品であることがお分かりいただけると思います。 アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』が1934年に出ており、この頃の様子を知る手掛かりによさそうと思います。 

写真二番目で見て、左側上から三つ目にあるライオンの刻印が、英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 このライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。 

横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から500年ほど前の1544年のことになります。 これは当時テューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。 

銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。 

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。

ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄三つが描かれて、写真三番目のような「Three Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の図式はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。

ついでながら、シャーロック・ホームズの『白銀号事件』を読んでいましたら、ホームズの「I think that I shall put this horseshoe into my pocket for luck.(このホースシューは幸運があるように、私が貰っておきましょう。)」という台詞に出会いました。 この探偵小説は1892年12月に発表されていますので、少なくともヴィクトリアンの頃には、「ホースシュー=グッドラック(幸運)」の連想があったことが分かります。 シャーロック・ホームズ シリーズには、アンティークなヴィクトリアンの暮らし向きが読み取れる場面が豊富なので、注意して読むと面白いようです。

それから、蹄鉄の滑り止めはカルカン(Calkin)と呼ばれるのですが、ちょっと注意して見てみると、このホースシューのカルカンは左側に三つと右側に四つの合わせてラッキーセブンになっています。 ホースシューが本来持っている幸運の意味合いに、カルカンのラッキーセブンが掛け合わされて、ラッキーの二乗になっていることから、より効果のありそうなホースシューに作られているのです。 

それでは、なぜホースシューが好まれるようになったのか。 ヴィクトリア時代に書かれた 『The Horse Shoe, The True Legend of St. Dunstan and The Devil』 という書物には、ホースシューにまつわる伝説が書かれています。 その概要をご紹介してみましょう。

後にカンタベリー大司教になったセント・ダンスタンは、ハープを弾くのが上手で鍛冶屋の仕事もこなす器用な人でした。 ダンスタンが夜にハープを奏でていると、デビルがやって来て邪魔をするようになりました。 デビルの悪戯に困ったダンスタンは一計を案じて、蹄鉄を取替えに来たデビルの蹄足にホースシューの留め釘を深く打ち込んだのでした。 

痛がるデビルにダンスタンはこう言います。 「これからは礼拝の邪魔をしないこと、音楽を奏でる邪魔をしないこと、そしてホースシューを掲げた家には寄り付かないこと。 これを守るなら直して進ぜよう。」 デビルはダンスタンと契約をかわし、以降はホースシューが魔除けの役割を果たすようになり、さらには Good Luck をもたらすお守りとされるようになったのでした。

スターリングシルバー GOOD LUCK ホースシュー ペンダントヘッド


No. 20069 ヴィクトリアン スターリングシルバー シリング銀貨 with エナメルワーク ペンダントヘッド
直径 2.35cm、厚さ 1mm強、重さ 6g、銀貨の鋳造年 1890年、一万三千円

この品はラッキーシリングものの一つとなります。 ヴィクトリア時代のシリング銀貨にエナメル細工を施して、縁起物アクセサリーとして作られたものでしょう。 銀貨の周りのフレームには「SILVER」の刻印があって、全体が純銀製のアンティーク シルバー ジュエリーです。

シリングという貨幣単位はイギリスの旧通貨制度に由来していて、今ではもう使われていないので、ノスタルジックな響きにも惹かれます。

写真二番目に見えるように、表に描かれているのはヴィクトリア女王の横顔です。 

クイーン ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から六十余年に及ぶヴィクトリア時代が始まりました。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。

裏面にはヴィクトリア女王時代に好まれたシールドリバースのデザインに採用されています。 描かれているのは、右上にライオンの立ち姿でライオンランパント、左下にはハープクラウンド、そして三頭のライオンは『ライオンハート(獅子心王)』の愛称で知られる12世紀の英国王リチャード一世時代からのエンブレムです。 

エナメルワークとは日本語で言うと「七宝焼き」のことで、金属にガラス質の釉薬を焼き付ける装飾技法です。 元々は古代エジプトに起源を持ちますが、奈良時代には日本にも伝来しました。 その後、七宝焼きは日本で技術的な発展を遂げ、ヴィクトリア時代の英国では、逆に日本の技術が大いに研究もされました。 

『裸の王様』、『みにくいアヒルの子』、『人魚姫』などで有名なアンデルセンの作品の中に、19世紀半ばに書かれた『シリング銀貨』というおとぎ話があります。 外国旅行に出かけた英国紳士の財布にあった一枚のシリング銀貨が、異国の地で財布からこぼれてしまい、いろいろな人たちを巡りめぐって、最後には元々の持ち主であった英国紳士のもとに戻ってくるというストーリーです。 

物語の中で、シリング銀貨に穴をあけて糸を通し「Lucky Shilling」として身に着けるという話が出てきます。 シリングは大き過ぎず、小さ過ぎず、ペンダントヘッドにちょうど良いサイズであることと、シルバーという素材は幸福に通じることから、遠いヴィクトリアンの時代よりラッキーシリングとして好まれてきた背景があるようです。 

写真のようなアンティークが作られた背景が分かって興味深いので、岩波文庫にありますアンデルセン童話集も合わせて読んでみてください。

ポワロ シリーズの『Murder in The Mews』を見ていたら、ジャップ警部と事件を目撃した男の子のあいだで、こんな会話がありました。

ジャップ警部:「Here you are, my boy, here's sixpence for you.」
男の子:「Very kind, sir, but you couldn't make it a shilling, could you?」
ジャップ警部:「Go on. Clear off.」

昔のイギリスでは貨幣体系がややこしくて、分かりにくいのですが、ちょっと知識があればフムフムとすっきり楽しめます。

シリング銀貨は12ペンスにあたりました。 つまりは、ジャップ警部が目撃証言をしてくれた男の子に、ご褒美として六ペンス銀貨をあげたら、男の子が、ありがとうとお礼を述べながらも、できれば倍額のシリング銀貨をもらえまいか?と言って、ジャップ警部に調子に乗るなと追い払われている場面です。

ヴィクトリアン スターリングシルバー シリング銀貨 with エナメルワーク ペンダントヘッド(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)ヴィクトリアン スターリングシルバー シリング銀貨 with エナメルワーク ペンダントヘッド(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)

No.20071 エルキントン アール・ヌーボー リリーパターン ヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォーク with コート オブ アームズ(ウィング紋章)
長さ 21.6cm、重さ 74g、柄の最大横幅 2.7cm、柄の最大厚み 4mm、1879年 エルキントン作、一本 五千円

アンティークとしてかなり見所の多いよい品と、私は思っているのですが、お求めいただいたお客様から、実際に使ってみてのご感想をいただきました。 掲載許可をいただきましたので、ご参考ください。

以下がお客様からのご感想です。

『リリーパターンのフォークを見た時にはこれだと思ったのです。 対のテーブルウェア、それも歴史のあるもの、美しいもの、見た目にも触っても心地よいもので食事をするのは、これ以上無く贅沢な時間です。 100年の季を経てもなお艶やかなフォークとスプーンは、余計な物をそぎ落としたシンプルなデザインが、その存在全体を完全なものにしているように感じます。 

もちろん、見て楽しむだけでもいいのでしょうが、使うために作られたテーブルウェア、使ってこそその良さがわかります。 当時のイギリスでパスタを食べたかどうかはわかりませんが、このスプーンとフォークで食べるパスタは格別で、偏屈な夫が珍しく「おいしい」と何度も言いました。 このスプーンとフォークのお陰ではないかと思います。 

食べる時だけではありません。 洗うときも拭くときも、置いてあるときも、歴史を見てきた先輩がうちにいるような感覚、なんとも言えません。 表だけの模様ではなく裏にもさりげなく模様があって、コストカット優先の今日ではほぼ考えられない手間と材料を使って、良い物を作ろうという心はおそらく、たとえそれが生き物で無くても時を経ても宿るものなのなのかなぁと思っています。 

大切に使います。 本当に洒落た言葉の一つも書けませんが、畑様にはいつもいつも感謝しています。 ありがとうございます。』

お客様のご感想は以上でした。  S様 ご感想いただきありがとうございます。 私はこの品をとても気に入っており、皆様にお薦めしたいアンティークと考えております。 こういった新たな視点からのインプレッションは参考になり、皆様のお役にも立とうかと思います。 ありがとうございました。 店主


かなり大きなアンティーク フォークです、現代的な使い道としてはパーティーのときのサーバーとされるのもよいでしょう。

素材は厚めで質感があり、すべてしっかり出来たところが好ましい、おすすめ出来るヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォークです。 そして、アール・ヌーボーの時代を先駆けたリリーパターンというのはやはり大きなポイントでありましょう。 

写真四番目をご覧いただくと、エルキントンのマークが並んでおりますが、左から二つ目に見える四角に「T」のマークが、1879年作であることを示す刻印で、これはエルキントン独自のデートレター システムによっています。 シルバープレートの品においては、その大半が、もっと言えばおそらく99%以上の品では、製作年を特定することは出来ません。 エルキントンの品であっても、デートレターのある場合と、ない場合があります。

そうした事情にあって、1879作と特定できる写真のデザートフォークは、アンティークとしてめったにない優れた特徴を有していると言えましょう。

長さが22センチほどあります、まあ、本当に大きいです。 ヴィクトリアンのテーブルフォークはこんなにでっかいのかとビックリするのもアンティークの楽しみでありましょう。

ゆりモチーフのレリーフが華やかで、その優雅な曲線デザインが目を惹きます。 両面に見えるデザインの特徴から「Lily pattern(ゆりパターン)」と呼ばれます。 キングスパターンやフィドルパターンといったメジャーなパターンではなく、マイナーパターンの一つなので、アンティーク シルバーウェアの参考書では紹介されることがあっても、実際に見かける頻度はそう多くありません、その意味でもレア物アンティークの一つ言ってよいでしょう。 

アール・ヌーボーの歴史を紐解くと、ゆりデザインは大きな役割を果たしてきました。 「Lily pattern(ゆりパターン)」は、エルキントンという有名どころのシルバースミス(銀工房)が、1850年に考案しデザイン登録したのが始まりです。 そしてChawner & Co.のパターンブックでは 「Lily pattern」と名前が付けられて、世に知られるようになった経緯があります。 ヴィクトリアン中期のNaturalism(自然主義)を代表するデザインで、アール・ヌーボーにダイレクトな影響を与えたデザインと言われます。

柄先にはウィングの紋章があり、どこかのマナーハウスで使われていたものと思いますが、セット総体では製作年はいくつかに分かれており、リプレイスされたりしながら、長く使われてきたものでありましょう。

フォークについて言いますと、普段使いで純銀製のフォークをお使いいただくと、歯先が曲がったりして、残念なことが起こりがちであります。 

銀という素材はやわらかく、スターリングシルバーは銅を混ぜて100%銀よりはずいぶんと硬い素材にはしてあるのですが、それでも、フォークの歯先やナイフの刃先として使うには、まだ強度が足りず、よほどの注意が必要になってきます。 そのあたりが、スプーンに比して、ナイフやフォークに全銀製が少ない理由となっています。

エルキントンのこのレベルの品では、テーブルスプーン一本あたりに2gから3gの純銀を使って、エレクトロプレートが施されています。 小さな純銀インゴット型ペンダントヘッド一つで、テーブルスプーン二本程度の割合ですので、エレクトロシルバープレートとは言っても、相当量の銀が使われているなあと、私は感じます。 そのことは手にとって眺め、触ってみると、実感として伝わってきます。 

加えて、実際のところ、歯先は硬いので、気にしながら使う必要はなく、普段使いには最適だろうと見ております。

なんといっても、英国シルバープレート品にあって、エルキントンはビックネームなので、贔屓目もあるかも知れませんが、裏面のメーカーズマークも格調高く、やはりシルバープレートの仕上がりもよいですし、メーカーのよさを感じます。

エルキントン アール・ヌーボー リリーパターン ヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォーク ペア with コート オブ アームズ(ウィング紋章)


No. 20070 エルキントン シルバープレート ポット
高さ 19.0cm、重さ 540g、最大横幅 8.3cm、ハンドルの先から注ぎ口までの長さ 19.1cm、容量 1.25パイント=712ml、エルキントン作、一万五千円

コンディション良好なエルキントン シルバープレート ポットです。 容量は目一杯で1.5パイント入りますが、少し余裕をみて1.25パイント=712mlあたりで使うのが適当でありましょう。

なんといっても、英国シルバープレート品にあって、エルキントンはビックネームなので、贔屓目もあるかも知れませんが、底面のメーカーズマークは格調高く、やはりシルバープレートの仕上がりもよいですし、メーカーのよさを感じます。 

写真五番目の底面で一番上に見えるのが、エルキントンのメーカーズマークです。 楯状刻印の中に「E & Co」とあって、これがエルキントンのメーカーズマークになります。 その下に見えるのが、「SILVER PLATED」の刻印です。 さらに「ENGLAND」の表示もあります。


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エルキントン シルバープレート ポット(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20029 フランス製 シルバー Hope, Charity & Faith 三種セット クリスチャン モチーフ ペンダントヘッド SOLD
長さ 2.7cm、留め具を含む縦長 3.0cm、最大横幅 1.65cm、最大厚み 6mm、19世紀終り頃のフランス製、一万四千円 SOLD

ハート、アンカー、クロスの三種セットは、クリスチャンモチーフの組み合わせになり、ハートにはCharity(思いやり)、アンカーにはHope(希望)、そしてクロスにはFaith(誠実)の意味合いがあります。

ホロー(中空)構造をしていて、写真二番目に見えるように、かなり立体感があり、手にしてみると厚みを感じるHope, Charity & Faith三種セット クリスチャン モチーフ ペンダントヘッドに仕上がっています。 

写真三番目は裏面の様子になりますが、上部の円環部分には、フランス製シルバーのスタンダードマークである「いのししの頭」マークが刻印されています。

小さなホールマークを手掛かりにフランス製と分かることは、この銀アクセサリーの興味深いところと思います。 一般にフランス製シルバーにはデートレターの定めはありませんが、刻印や全体の作りや雰囲気からみて、この銀製品が作られたのは、19世紀の終り頃からイギリスで言えばエドワーディアンの頃だろうと思います。

フレンチシルバーのホールマークはその小ささが特徴で、ちょっと見ただけでは分かり難いのですが、アンティークハント用のルーペがあれば、とても小さな手掛かりを読み取ることで、フランス製であることが解読できます。 この機会にフランスのホールマークについて少し解説しておきましょう。

1838年に導入されたフランス製シルバーのスタンダードマークにはいくつかの種類があります。 大きめな銀には知恵と武勇の女神、ミネルバの横顔マークを、そして比較的小さな銀には「いのししの頭」あるいは「蟹」のマークが刻印されます。 

ただ、問題は「いのししの頭」と「蟹」のマークの大きさが、1.25mm*1.75mmと小さいので判読が難しいことです。 まず、マークサイズが小さいので見翌ニしがちになり、ホールマークからこの品はフレンチらしいと気付くのに時間がかかります。 そしてさらに、小さな刻印の中に描かれた図柄まで識別するには、刻印の表面をクリーニングする必要も出てきますし、やはりルーペの助けが必要にもなるのです。

フランス製 シルバー Hope, Charity & Faith O夋Nリスチャン モチーフ ペンダントヘッド



No.20130 ヴィクトリアン or エドワーディアン アール・ヌーボー  リボン飾り 銅製 マッチケース
横の長さ 4.3cm、縦の長さ 2.9cm、厚み 1.45cm、重さ 12g、一万三千円

アール・ヌーボー デザインが優美な銅製マッチケースです。 四隅にはユリと思われる植物が綺麗です。上下にはリボン飾りがクルッとかかっていて、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃、おそらくは1900年前後の英国製と思います。

内側には木製ケースが入っていますが、一世紀ほどの年月を経て朽ちかかっており、側面のヤスリも弱くなっているので、銅製のフレーム本体を活かして、内部のマッチ箱は自作してください。

それから、クルッとしたリボン飾り、どうもこのデザインはヴィクトリアン終わり頃からエドワーディアン頃に多いように思います。当時のイギリスで流行ったデザインと云うことでしょう。夏目漱石のロンドン留学の頃と重なっております。漱石もロンドンで影響を受けて、『三四郎』に出てくるリボンの話に繋がっていったのではないかと考えています。

このリボン飾りについて少し考えてみたいことがあります。二十一世紀に暮らす日本人の私たちは、この装飾を見て、リボンがクルッとかかって、かわいいなと思われるでしょう。しかしながら、この品が使われていた一世紀ほど前に、当時の日本人が見たとしたら、そう簡単にはピンと来なかった可能性が高いのです。

その手掛かりは朝日新聞に1908年に連載された夏目漱石の『三四郎』にあります。第二章の最後に以下の一節がありますので、まずは読んでみましょう。

『四角へ出ると、左手のこちら側に西洋小間物屋(こまものや)があって、向こう側に日本小間物屋がある。そのあいだを電車がぐるっと曲がって、非常な勢いで通る。ベルがちんちんちんちんいう。渡りにくいほど雑踏する。野々宮君は、向こうの小間物屋をさして、
「あすこでちょいと買物をしますからね」と言って、ちりんちりんと鳴るあいだを駆け抜けた。三四郎もくっついて、向こうへ渡った。野々宮君はさっそく店へはいった。表に待っていた三四郎が、気がついて見ると、店先のガラス張りの棚に櫛だの花簪(はなかんざし)だのが並べてある。三四郎は妙に思った。野々宮君が何を買っているのかしらと、不審を起こして、店の中へはいってみると、蝉(せみ)の羽根のようなリボンをぶら下げて、
「どうですか」と聞かれた。』 (以上、引用終り)

四つ角というのは本郷三丁目の交差点で、向こう側の日本小間物屋というのは、「本郷も兼安までは江戸のうち」の川柳で有名な兼安を指しています。「蝉(せみ)の羽根のようなリボン」という表現は、すさまじい感じで、リボンを見たことがない人にも、リボンがなんたるか説明したい漱石の親切でしょう。

『三四郎』を今読むと、なんともノスタルジックで、アンティークな読み物と感じますが、朝日新聞に連載された頃はトレンディー小説だったわけで、当時の先端事情が物語の背景にあります。

小説の中で、野々宮さんがリボンを買いに、交差点を渡って、向こう側の日本小間物屋に行っていることがポイントです。明治終わり頃まで日本には国産リボンはありませんでした。リボンは西洋からの輸入品で、殖産興業の観点から高率な関税がかけられ、簡単に手に入る品物ではなかったのです。 

ところが、ようやく国産リボンの生産が始まったのが、ちょうど『三四郎』の時代でした。ですから、野々宮さんは西洋小間物屋ではなく、日本小間物屋でリボンが買えたわけです。国産リボンが出始めて間もない時代であったので、トレンディーでない普通の読者向けには「蝉(せみ)の羽根のような」という説明も必要だったと思われます。

写真のアンティークは『三四郎』と同じ時代に作られておりますことから、当時の普通の日本人にとっては、まだまだ馴染みのうすいリボンだったと考えられるのです。 

ヴィクトリアン or エドワーディアン アール・ヌーボー  リボン飾り 銅製 マッチケース





No. 20126 スターリングシルバー ペーパーナイフ with マザー オブ パール ハンドル SOLD
長さ 17.4cm、重さ 27g、柄の最大幅 1.3cm、マザー オブ パール柄の最大厚み 0.7cm、1926年 シェフィールド、James Dixon & Son作、一万一千円 SOLD



No. 19010 スターリングシルバー ペーパーナイフ with マザー オブ パール ハンドル SOLD
長さ 17.3cm、重さ 26g、柄の最大幅 1.3cm、マザー オブ パール柄の最大厚み 0.7cm、1926年 シェフィールド、James Dixon & Son作、SOLD
今から九十年近く前に作られたスターリングシルバーのペーパーナイフです。 メーカーは有名どころの銀工房で、James Dixon & Sonとなっています。 




アンティーク グッドラック ホースシュー、ヴィクトリアンと現代人でひっくり返った好み、その変遷を調べてみた。
https://ameblo.jp/igirisumonya/entry-12374566246.html …

グッドラック ホースシュー 上向き?下向き? どちらがよいか。

私たち現代人の好みをアンケートしました。

まずは、アンケート結果の発表です






No. 20066 エドワーディアン アイビーモチーフ スターリングシルバー クロス with ブリティッシュ ホールマーク
クロス本体の縦(丸い留め金含まず) 3.3cm、横 2.15cm、厚さ 1mm強、1903年 バーミンガム アセイオフィス、二万一千円

アイビーのハンドエングレービングが特徴的なエドワーディアン スターリングシルバー クロスです。 これまでにもいくつか似たタイプのクロスをご紹介してきましたが、持った感じのしっかりしたソリッドシルバーは、やはりいいものだと思います。 手にしてみると、銀の質感が心地よい、しっかり重厚な雰囲気のペンダントヘッドです。 今から百年以上前に作られたエドワーディアン アンティークであるところもグッドポイントです。

ちなみにソリッド(solid)とは、このクロスがホロー(中空)構造ではなくて、内部まですべてがスターリングシルバーの稠密構造であることを言います。

アイビーの輪郭は手彫りの彫刻がかなり深くて、ブライトカット様の光の反射をもたらし綺麗です。 基本デザインとは対照的に、背景部分のシェードをかけた彫りは大変な細かさになっています。 ルーペで詳細に見ていくと、ハンドエングレービングとしては限界的な職人技が施されているのが分かり、より楽しめるエドワーディアン アンティークであることがお分かりいただけると思います。 

アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。 

四つのブリティッシュ ホールマークがすべてしっかりと深く刻印されているのは、このアンティークの好ましい特徴といえましょう。 写真二番目に見えるように、ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1903年のデートレターになります。 

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 このシルバークロスが作られたのは1903年ですから、晴れて正式な‘アンティーク’に昇格している品ということになります。 日本でいえば日露戦争の頃、かなり古いことがお分かりいただけましょう。 

明治39年(1906年)には夏目漱石の『草枕』が出ております。 東京を離れた温泉宿で非人情の旅をする画工の話ですから、当時の社会情勢がメインテーマではありませんが、それでも、出征していく若者を見送ったり、日露戦争や現実社会の影が背景に見え隠れしています。 昔の時代に思いを馳せるアンティークな資料として、同時代の銀クロスを傍らに置きながら、あらためて読んでみるのも楽しいと思います。

そして、写真のエドワーディアン アンティーク シルバーが作られた少し前には、夏目漱石がロンドンに留学しています。 当時のイギリスの様子は以下の解説記事をご参考ください。
https://ameblo.jp/igirisumonya/entry-12340832863.html

一言に百年といっても、やはりそれだけの時の経過は大変なことと思います。 ちなみにこの頃の歴史年表を眺めてみますと、1910年:エジソンが電球を発明とか、1912年:タイタニック号氷山に衝突して沈没とか、ずいぶん昔のことなのです。 このアンティークが作られた時代というのは、電灯もなかった時代なわけで、こうしたアンティークを手にしながら、その昔の時代に思いを馳せるのはアンティーク好きの楽しみでありましょう。

最後になりましたが、イギリスのアンティーク シルバーを手にする大きなメリットの一つに、刻印されたデートレターを判読することによって、アンティークの製作年を一年刻みで特定できることがあります。 英国のホールマーク制度は、その歴史の長さ、制度の継続性、シルバースミスへの徹底の度合い等すべての面で欧州諸国の中でもピカイチなのです。

これは、一つには英国人の国民性によるところが大きいように思います。 博物学を発展させてきたイギリス人は、物事を整理分類するのが大好きで、500年以上にわたりホールマーク制度を維持し発展させてきました。

欧州諸国のホールマークは、ある特定の時代だけだったり、市場が小さく制度が徹底されていなかったりと不備なことが多いようです。 また旅してみると感じるのですが、欧州人にも気質の違いがあって、偏見かも知れませんが、同じことをイタリア人やスペイン人に要求しても、無理な感じがしないでもありません。

『International Hallmarks on Silver』という本を使うと、過去数百年にわたって各国のシルバーホールマーク体系が概観できます。 ざっくり申し上げると、北欧やオランダのホールマーク体系はイギリス寄りで比較的しっかり出来ていて、ラテン系の南欧諸国はちょっとゆるいといったところでしょうか。




No. 20050 エドワーディアン スターリングシルバー クロス Forget-me-not(忘れな草)モチーフ with ブリティッシュ ホールマーク SOLD
縦の長さ(本体部)3.3 cm、横の長さ2.1 cm、留め具の銀円環を含む縦長3.9 cm、1910年 バーミンガム アセイオフィス、一万九千円 SOLD

今から百年以上前に作られたスターリングシルバーのクロスで、手彫りのエングレービングが繊細なエドワーディアン アンティークです。 彫刻は全般に細かくて、センターには勿忘草のワンポイントが効いています。

写真三番目に見えるように、四つのブリティッシュ ホールマークが完備しているのも、アンティーク シルバー クロスとして、なかなか得がたい特徴です。

ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガムアセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1910年のデートレターになります。 

わすれな草はヨーロッパを原産とする、薄青色の小花が可憐な一年草で、信義とか友愛のシンボルとされます。 花言葉は「Forget-me-not」そのもので、「忘れないで」です。

「Forget-me-not」はイギリスのフィールドでよく見られる花で、昔から咳止めなどの薬草としても使われてきましたので、人気があって役に立つ花です。イギリスの勿忘草は、細かく言うと四つほど種類があります。野原で一般的なのは「フィールド勿忘草」、森の中で見られる「ウッド勿忘草」はやや大型です。イエローからブルーに色が変わっていくのが「チェインジング勿忘草」で、ふさが特徴の「タフティド勿忘草」もあります。

日本語で「忘れな草」を「勿忘草」と書くと、漢文調な雰囲気で古っぽく見えて、万葉集や古今和歌集にも出てきそうな日本古来の野草のようにも感じます。実際には「Forget-me-not」が日本にやってきたのは、百年とちょっと前のことで、「勿忘草」or「わすれな草」と訳語の日本名が付けられたのは、日露戦争があった1905年のことでした。

それでは、イギリスではどうかと言うと、これまた日本と同じ事情で、実は「Forget-me-not」という名前は舶来品の訳語でありました。 「Forget-me-not」という花の名は、元々は中世ドイツの伝説が起源で、ドイツ語の「忘れないで!」というのが、根っこになって世界中に広がっていったのです。この伝説をもとにしたポエムをイギリス人のサミュエル・コルリッジが書いたのが1802年でありました。そしてこれが英語の中に「Forget-me-not」が受容されるきっかけになったのです。

ドイツ起源の「勿忘草」がデンマークやスウェーデンに伝わり、そしてフランスに伝わり、イギリスに入ってきたのが1802年、それから百年ほどして日本へ、言葉の伝播の歴史も興味深く思います。
アンティーク エドワーディアン スターリングシルバー クロス Forget-me-not(忘れな草)モチーフ with ブリティッシュ ホールマーク(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20120 スターリングシルバー 幸運 お守り ホースシュー ペンダントヘッド
ホースシューの横の長さ 2.4cm、縦 2.3cm、最大厚み 3mm、1946年 バーミンガム、一万五千円

このスターリングシルバー ホースシュー(馬の蹄鉄)のペンダントヘッドが作られたのは今から70年以上前の1946年です。 銀地金の雰囲気がよく出たリアルな蹄鉄のデザインになっています。 ライオンパサントの横の長さは3ミリほどあって、大きめなホールマークが刻印されているのは、ホールマーク自体を見て楽しむという作り手の意図を反映しているのでしょう。

裏面にはデザイン登録したレジスター番号と、「ENGLAND」の刻印が見えています。 ホールマークは順にHG&Sのメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1946年のデートレター「W」になります。 

ヴィクトリアンやエドワーディアンの作ではありませんが、それでも1946年作といえば、かなり古い品であることがお分かりいただけると思います。 

ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄3つが描かれて、「Three Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の連想はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。

ついでながら、シャーロック・ホームズの『白銀号事件』を読んでいましたら、ホームズの「I think that I shall put this horseshoe into my pocket for luck.(このホースシューは幸運があるように、私が貰っておきましょう。)」という台詞に出会いました。 この探偵小説は1892年12月に発表されていますので、少なくともヴィクトリアンの頃には、「ホースシュー=グッドラック(幸運)」の連想があったことが分かります。 シャーロック・ホームズ シリーズには、アンティークなヴィクトリアンの暮らし向きが読み取れる場面が豊富なので、注意して読むと面白いようです。

それから、蹄鉄の滑り止めはカルカン(Calkin)と呼ばれるのですが、ちょっと注意して見てみると、このホースシューのカルカンは上側に三つと下側に四つの合わせてラッキーセブンになっています。 ホースシューが本来持っている幸運の意味合いに、カルカンのラッキーセブンが掛け合わされて、ラッキーの二乗になっていることから、より効果のありそうなホースシューに作られているのです。 

それでは、なぜホースシューが好まれるようになったのか。 ヴィクトリア時代に書かれた『The Horse Shoe, The True Legend of St. Dunstan and The Devil』 という書物には、ホースシューにまつわる伝説が書かれています。 その概要をご紹介してみましょう。

後にカンタベリー大司教になったセント・ダンスタンは、ハープを弾くのが上手で鍛冶屋の仕事もこなす器用な人でした。 ダンスタンが夜にハープを奏でていると、デビルがやって来て邪魔をするようになりました。 デビルの悪戯に困ったダンスタンは一計を案じて、蹄鉄を取替えに来たデビルの蹄足にホースシューの留め釘を深く打ち込んだのでした。 

痛がるデビルにダンスタンはこう言います。 「これからは礼拝の邪魔をしないこと、音楽を奏でる邪魔をしないこと、そしてホースシューを掲げた家には寄り付かないこと。 これを守るなら直して進ぜよう。」 デビルはダンスタンと契約をかわし、以降はホースシューが魔除けの役割を果たすようになり、さらには Good Luck をもたらすお守りとされるようになったのでした。

写真二番目で見て、右から三つ目にあるライオンの刻印が、英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 このライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。 

横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から500年ほど前の1544年のことになります。 これは当時のチューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。 

銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。 

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。

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No.20051 アスプレイ アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン 一部 SOLD
長さ 11.0cm、重さ 11g、ボール部分の長さ 3.6cm、最大横幅 2.4cm、深さ 6mm、柄の最大幅 1.15cm、1971年 バーミンガム、Asprey & Co. Ltd 作、一本 七千円 (12本あります-->6本あります。)

直線的なアール・デコ 幾何学デザインのスターリングシルバー ティースプーンです。 シルバースミス(=銀工房)は Asprey & Co. Ltd になります。 

このアスプレイというお店は1781年創業、英国王室御用達で、現在でもイギリスにおける宝飾店の最高峰と言われ、ロンドンのボンドストリートに立派なお店を構えています。 イギリス銀製品を専門に扱うガイドブック 『Jackson's Hallmarks』 では、アスプレイについて「Justifiably famous for the quality of its products (もっともで当たり前のことながら、その品質の良さは有名である。)」と最上級のコメントです。

アスプレイの作となる同じデザインのテーブルスプーンを以前に扱ったことがあります。 そのテーブルスプーンは1936年の作でしたので、写真のティースプーンのデザインは1930年代 アール・デコの時代から少なくとも1971年までの長きにわたって、アスプレイの定番として取り扱われてきたことが分かります。 

イギリスでも超のつくような老舗においては、頻繁にモデルチェンジしないと言うか、よいものであれば、あくまでも昔のものにこだわっていく姿勢が伺えて、興味深いところです。 ただ一方で思いますのは、こういう古いものへのこだわりは、老舗に限らず、広くイギリス人一般に見られる特性の一つかも知れません。 

昨今の例で言えば、イギリスがなんだかんだ言って、欧州共通通貨ユーロに参加せず、あくまでもスターリングポンドにこだわり続ける姿勢も、根っこのところでつながりがあるように見ています。

写真二番目に見える裏面のホールマークは順に「Asprey & Co.Ltd」のメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1971年のデートレターで、どの刻印もはっきりしています。 

林望氏の『イギリス観察辞典』という本に「アスプレイ」の項目があり、面白く分かりやすい解説がありますので、詳細は本をご覧いただくとして、抜粋をご紹介しましょう。

『世の中にまた、アスプレイという会社ほどイギリス的なものもあるまいと思われる。この会社はまったく不思議な組織で、アスプレイ家が経営している王室御用達の店なのだが、いったい何を商っているのかというと、なんでしょうねぇ...おおまかに言えば雑貨屋さんなのだ。しかし、そんじょそこらの雑貨商とは全然違う。 

いかなる注文にも応じて、この会社の職人に作れぬものはない、...

「たとえば...」とアスプレイのスタッフは言った。「当社では、お客様にロンドンへお越し頂くのではなくて、ロンドンから職人を派遣して、お客様のご注文を承る、ということになってございます。」  そのようにしてカスタムメイドされた流麗な散弾銃が二挺一組で六万五千ポンドだそうである。 ざっと千三百万円! どうです、安いものでしょう。

むろんこの会社は「物」を作って売る会社ではあるけれど、その本当の趣旨はもう少し深いところにあって、たぶんそういうイギリス人魂とか、イギリスの夢とでもいうようなものを、「何かの形」に作って売ることを目的としているのであろう。』 以上抜粋。

それから、このアスプレイにはアンティークシルバーのコーナーもあります。 ロンドンのボンドストリートやニューボンドストリート沿いの老舗アンティーク店の中でも、とりわけアスプレイは高級店で、気軽さはありませんが、英国にお越しの際にはロンドンアンティークショップの最高峰を見てみるのも面白いかも知れません。

1920年代、30年代はアール・デコの時代ですが、ヴィクトリアンあるいはエドワーディアンの伝統的で凝ったシルバーデザインとは大きく異なる変更が、この時代にあったことは、とても興味深いと思います。 ある解説によれば、このデザイン上の大きな断絶を生み出した最大の要因は第一次大戦だったと言われています。 当時の人たちはヴィクトリアンとエドワーディアンの輝かしい伝統の延長上に世界大戦が起こったことに大きなショックを覚え、ポストワーの時代には、昔の時代から距離を置きたいと望む風潮が強く、そこにアール・デコがぴたりとはまったというわけです。 

アール・デコについてはいろいろな説明がありますが、この解説はかなり言いえているように思います。 イギリスを隅々まで旅してみて、どんな小さな田舎の村にも、第一次大戦の戦没者を悼む記念碑が建っているのを知りました。 英国人の暮らしを根底から揺るがした出来事であったことが想像されるのです。

アスプレイ アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン


No. 20107 ヴィクトリアン スターリングシルバー シュガートング with ピアストワーク&フェザーエッジ
長さ 9.4cm、重さ 23g、つまみの間隔 1.95cm、透かし柄の最大幅 1.3cm、透かし柄の最大厚み 1mm強、1898年 ロンドン、二万四千円

今から百二十年ほど前に作られたヴィクトリアン スターリングシルバー シュガートングです。 ヴィクトリア時代の終り頃にあたる1898年に作られており、その古さはやはりアンティークとして魅力になりましょう。 透かし細工の美しさに加えて、シェルのモチーフ性や、フェザーエッジの技法もポイントになっています。

ピアストワークは手間のかかったハンドワークで、切面には糸鋸を使ったギザギザ跡が残っています。 ルーペを使って詳細に調べてみると、糸鋸を引いた跡も繊細で、細工のよい品であることが分かります。 手仕事で糸鋸を引いていくのですから、職人さんの優れた技術と多くの時間がかかります。 

現代のシルバースミスの方からお聞きしたことがありますが、作業にかなりの時間を要するこうした透かし細工は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや出来ないとのことでした。 そして、そもそもこれだけの技術を持った職人さんが現代ではいなくなっているのです。 

アンティークの楽しみの一つは、現代の品では到底望めないような素晴らしい手仕事の品に、時に出会えることだと思います。 今から百二十年ほど前に作られた写真の銀トングにはアンティークでしか手に入らない美しさが備わっており、丁寧なハンドワークの細工の良さそのものも、年月の経過を語っています。

トングの先に見えるシェルのデザインも特徴的です。 このシェルパターンは、12世紀にスペインの聖地 St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。

フェザーエッジの歴史は古く、イギリスのシルバーウェア史に現れたのは、今から二世紀半ほど前になります。 より具体的には、この装飾的なフェザーエッジの技法が初めて登場したのは1770年代のことでしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

似たような装飾技法にブライトカットがあり、フェザーエッジはブライトカットの派生系と言われます。 しかし、二つは歴史的にほぼ同時期に作られ始めていることから、二つの技法の関係は派生関係というよりも、兄弟姉妹の関係に近いとも考えられます。 

ブライトカットは、ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かうようにした彫刻技法です。 ファセットは平面状で一種類、それを互い違いに角度を変えて彫っていきます。 

フェザーエッジはU字谷とV字谷を隣合わせに彫っていく手法です。 V字谷のファセットは平面で向かい合う二面の角度が違っているところはブライトカットに似ています。 加えてU字谷のファセットは凹面状なので、当然ながらその反射光も様々な方向に向かいます。 V字谷のシャープな反射光に対して、U字谷の反射光は穏やかな感じで、二種類の輝きのコントラストに特徴があります。

一本の彫刻刀で作業を行うブライトカットに対して、フェザーエッジではU字とV字の二種類の彫刻刀を使いますので、その意味でブライトカットの進化系あるいは派生系がフェザーエッジと言われるのかも知れません。

クイーン・ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。


内側には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもこの品のよい特徴です。 ホールマークは順に「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1898年のデートレターとなります。

「William Hutton & Sons Ltd」は1800年ちょうどにWilliam Huttonが始めた歴史のある銀工房です。 息子から孫へと家族経営が続き、まわりのシルバースミスを吸収合併しながら、次第に有力メーカーの一つに成長していきました。 そして、ヴィクトリアン後期には、Herbert, Robert, Edwardの三人の孫たちが共同パートナーとなって銀工房が運営されておりました。

末っ子のEdwardには、最も芸術センスがあったのか、本体である「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークの他に、独自のメーカーズマークである「EH」刻印の作品が今に残っています。

おそらく、二人の兄たちはファミリービジネスの規模を拡大するという経営面に、より長けていて、末っ子のEdwardは経営より銀そのものに関心が高い人だったのではないかと思うのです。

「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークは縦横に並んだ文字配列が特徴的なので、一度でも見れば記憶に残ることでしょう。 楕円形のメーカーズマーク中央に位置する大きなHの文字がマークを四つの領域に分割し、それぞれにW、&、Ss、LDの文字が配された凝った作りのメーカーズマークになっています。

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、以下もご参考ください。

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【Still Victorian(百年ほど前のイギリスはどんな様子であったのか?)】
【アンティークなヴィクトリアン新聞を読んでみよう。広告欄から垣間見える昔のアンティークな暮らし】
ヴィクトリアン スターリングシルバー シュガートング with ピアストワーク フェザーエッジ(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20108 ファージング コイン ヴィクトリアン スウィーバル くるくる フォブ ペンダントヘッド SOLD
支柱を含む最大横幅 2.75cm、縦の長さ(留め具含む) 3.65cm、ファージング直径 2.2cm、厚み 5mm、ファージング鋳造年1901年、重さ 12g、SOLD

指で弾くとファージングの本体部分がクルクル回るので、何はなくとも、まわしてみたりと、こういう仕掛けものアクセサリーは楽しめます。

ファージング コイン ヴィクトリアン スウィーバル くるくる フォブ ペンダントヘッド








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