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新着情報 その1

新着のアンティークは、9/23   アップ分が最新です。 (下線付き品物名をクリックして、詳細画像と説明をご覧ください。)


9/23
No. 20030 『お気に召すまま』 アーツ・アンド・クラフツ 布張り装丁 チズウィック・ プレス ヴィクトリアン シェイクスピア シリーズ
縦 15.4cm、横 10.4cm、厚さ 1.1cm、119ページ、重さ 147g、1899年 George Bell & Sons ロンドン、Chiswick Press 印刷、一万四千円

イギリスの劇作家シェイクスピアの喜劇 『お気に召すまま』 のヴィクトリアン アンティーク本になります。 ハッピーエンドないいお話です。

日本の文庫本サイズですが、ハードカバーの布張り装丁本で、たいへん格調高いアンティーク本と感じます。 扉を開いてみると、写真二番目の下方に見えるように、『London George Bell & Sons 1899』とあります。 このシェイクスピア シリーズは、ヴィクトリアン終り頃からエドワーディアン頃にかけて、順に出版されましたが、この本はヴィクトリア時代の終り頃にあたる1899年に出たものと分かります。 百年以上前の本ですが、コンディション良好で、手元において眺めていても満足です。

このシリーズ書籍は夏目漱石と大いに関係ありと、私は考えております。 ロンドン留学中に英文学書籍を買い集めていた漱石が、書店で見て手にして、おそらくは求めて日本に持ち帰った一冊だろうと推理しています。 詳しくは以下をご覧ください。

45. 漱石の英国留学、チズウィック・プレス アーツ・アンド・クラフツ装丁 ヴィクトリアン シェイクスピア本、そして漾虚集(ようきょ集)

モスグリーンの布張り装丁には、アーツ・アンド・クラフツのチューリップ & フォーリッジ インターレーシング パターンが綺麗です。 印刷元のチズウィック・プレスは、ウィリアム・モリスの初期デザインを世に知らしめたことで名を成して、イギリスにおける印刷の歴史に大きな足跡を残しました。 

また、挿絵を描いている Byam Shaw はヴィクトリアン後期からエドワーディアンの頃に活躍したラファエル前派からつらなる画家で、シェイクスピアの挿絵画家としても人気がありました。 1910年には Byam Shaw School of Arts を創立しています。 現在ではこのアート・スクールは芸術分野において世界でも有数なCentral Saint Martins の一部になっています。

本文および用語解説の本体部は119ページありますが、それ以外に巻頭部には挿絵とイントロダクションが十ページほどあって、その後に登場人物説明、そして本文にあたる第一幕が始まっていきます。 

写真三番目は第一幕の始まり部分で、合計五幕構成の各幕始めにはそれぞれに違っていて楽しめるちょっとした挿絵があります。 その他に写真四番目&五番目のような大きな挿絵が合計六ページあるのも嬉しいところです。 

最終幕の後に写真六番目のような挿絵と『The End』が見えます。 さらにその後に続いているのが、「Glossary and Notes」の巻末用語解説で、五ページあって昔の用語について参考になります。 

英国BBC製作テレビシリーズの一つである『お気に召すまま』 を手助けにして、ヴィクトリアン アンティーク本を読んでみるのも面白いと思います。 ユーチューブにアップされているので、利用可能でありましょう。 百年以上の古さを持ったアンティークなテキストは、ちょっと立派過ぎるかも知れませんが、英語シェイクスピアの鑑賞&学習、まずは形から入るやり方もありでしょう。 

それでは、『お気に召すまま』から名台詞を二つほど。

JAQUES : All the world's a stage, And all the men and women merely players; この世は舞台、男も女もみんな役者さ。

もう一つ、
ROSALIND. I pray you, what is't o'clock? ロザリンド: お願い、教えて、今何時なの?
ORLANDO. You should ask me what time o' day; there's no clock in the forest. オーランド:一日のどのあたりかって聞くべきだね。 森には時計はないのさ。

「森に時計はない。」 これなどは、忙しい現代の人たちでも、何かの折に使えそうな台詞です。 シェイクスピアを踏まえていると分かれば、なおグッド。 ちょっとキザですが。

それから、私が使っているシェイクスピア読解法を一つご紹介しておきましょう。 やっぱり一番簡単なのは、まず映像で見ることではないかと思います。 例えば最近 『The Tempest』、The Shakespeare Collectuin、BBC版を見ました。 1970年代後半にイギリスのBBCがシェイクスピアの作品をテレビ化した一連の作品集のDVDが出ています。 せりふはシェイクスピアの台本通りですし、映像作品であることから、少しの時間で一通りの理解は進みます。 映像で見終わってから、あらためて書物を紐解くと、初めは難しく思えたシェイクスピアの原典も意外に早いこと読めるものです。

シェイクスピア英語原典の読み方』の解説記事をご参考ください。 シェイクスピアは劇なので、本から入るより映像からとっかっかるのが一番というのが私の考えです。

『お気に召すまま』 アーツ・アンド・クラフツ装丁 チズウィック・ プレス ヴィクトリアン シェイクスピア シリーズ、BBC製作のDVD付『お気に召すまま』 アーツ・アンド・クラフツ装丁 チズウィック・ プレス ヴィクトリアン シェイクスピア シリーズ、BBC製作のDVD付


No. 20029 フランス製 シルバー Hope, Charity & Faith 三種セット クリスチャン モチーフ ペンダントヘッド
長さ 2.7cm、留め具を含む縦長 3.0cm、最大横幅 1.65cm、最大厚み 6mm、19世紀終り頃のフランス製、一万六千円
ハート、アンカー、クロスの三種セットは、クリスチャンモチーフの組み合わせになり、ハートにはCharity(思いやり)、アンカーにはHope(希望)、そしてクロスにはFaith(誠実)の意味合いがあります。

ホロー(中空)構造をしていて、写真二番目に見えるように、かなり立体感があり、手にしてみると厚みを感じるHope, Charity & Faith三種セット クリスチャン モチーフ ペンダントヘッドに仕上がっています。 

写真三番目は裏面の様子になりますが、上部の円環部分には、フランス製シルバーのスタンダードマークである「いのししの頭」マークが刻印されています。

小さなホールマークを手掛かりにフランス製と分かることは、この銀アクセサリーの興味深いところと思います。 一般にフランス製シルバーにはデートレターの定めはありませんが、刻印や全体の作りや雰囲気からみて、この銀製品が作られたのは、19世紀の終り頃からイギリスで言えばエドワーディアンの頃だろうと思います。

フレンチシルバーのホールマークはその小ささが特徴で、ちょっと見ただけでは分かり難いのですが、アンティークハント用のルーペがあれば、とても小さな手掛かりを読み取ることで、フランス製であることが解読できます。 この機会にフランスのホールマークについて少し解説しておきましょう。

1838年に導入されたフランス製シルバーのスタンダードマークにはいくつかの種類があります。 大きめな銀には知恵と武勇の女神、ミネルバの横顔マークを、そして比較的小さな銀には「いのししの頭」あるいは「蟹」のマークが刻印されます。 

ただ、問題は「いのししの頭」と「蟹」のマークの大きさが、1.25mm*1.75mmと小さいので判読が難しいことです。 まず、マークサイズが小さいので見翌ニしがちになり、ホールマークからこの品はフレンチらしいと気付くのに時間がかかります。 そしてさらに、小さな刻印の中に描かれた図柄まで識別するには、刻印の表面をクリーニングする必要も出てきますし、やはりルーペの助けが必要にもなるのです。
フランス製 シルバー Hope, Charity & Faith O夋Nリスチャン モチーフ ペンダントヘッド


No. 20028 ミレニアム クロス シルバーホールマーク 刻印 スターリングシルバー リング もともと三つありましたが、今はあと一つあります。
リング内径1.7 cm、リング外径2.3 cm、銀の厚み2.5 mm~3 mm、リングの帯幅5 mm、重さ10 g、2000年 ロンドン アセイオフィス、
一万五千円

リング内側のホールマークとは反対サイドに、製造番号が彫られています。 

製造番号「75」、「155」、「201」の三つの手持ちがあります。-->現在は「155」一つの手持ちがあります。

西暦2000年と関係ある方におすすめです。『2000の文字をあしらった十字架マーク』=ミレニアム デートレターと、伝統的なライオン刻印のコラボとなる純銀リングです。

ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)の導入は1544年。歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサントにも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって使い続けて今日に到っています。

ゴロンとした銀塊のような風情に惹かれました。リングであることはもちろんですが、このタイプの銀リングですと、イギリスではペンダントヘッドとして身に着けている方もいらっしゃいます。そういう使い方も素敵だなと思います。

見る方向によって、銀リングの表情が変わってきますので、いろいろな楽しみ方があるのはポイントです。写真二番目に見えるように、手前で捩じれて交錯しております。その反対サイドは写真三番目にあるように、エッジが尾根状に盛り上がった二つ山のフォルムです。一つ一つの山が千年のミレニアムを表しています。

そして、そのミレニアムどうしが交錯するのが、西暦2000年ちょうどであり、ミレニアム シルバー ホールマークで記念しているのだと聞きました。

銀リングのデザインに意味合いがあると知れば、また楽しみが増すように思います。

写真一番目に見えるように、リングの内側には六つのブリティッシュ シルバー ホールマークがしっかり深く刻印されているのも、この銀リングの優れた特徴になっています。六つのホールマークのうち、2000の文字をあしらった十字架形のマークは、通常年のデートレターと異なり変わった形をしていますが、これが特別なミレニアムのデートレターです。

ブレティッシュ ホールマークは順にメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、スターリングシルバーを示す「925」マーク、ロンドン アセイオフィスのレオパードヘッド マーク、2000年のデートレター、そしてさらに2000年のデートレターとなるミレニアムマークとなっています。

ブリティッシュ ホールマークは銀の純度を保証し、製作年等を記録するという実用目的で、中世の時代に始まった制度ですが、ライオンマークなどは装飾性が高いこともあって、いつの頃からか、ホールマークのデザインそのものを楽しむ趣向の銀製品も作られるようになりました。

横歩きライオンの刻印が英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになりますが、このライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。

この歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から五百年ほど前の1544年のことになります。これは当時チューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけなのです。

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っています。


ところで、写真のような銀はいつどこで出来たのでしょうか。
石見銀山とか聞いたことあるし、地球の内部で出来たのだろうと思いがちですが、それは違います。 地球のようなヤワな環境では銀は生まれません。 太陽の中でさえ銀は生まれません。もっと大きい星が必要です。 遠い昔に宇宙で起こった超新星爆発の途方もないエネルギーの中で銀ができたのです。 

だから、写真の銀が出来たのは、地球が生まれるよりもずっと前のことです。 そして、運が良ければ、もうすぐ銀が生まれる大イベントが目撃できるかもしれないと言われています。 オリオン座の一等星ベテルギウスの大爆発がいつ起こってもおかしくない時期に差し掛かっているからです。 

ベテルギウスの寿命は一千万年、そしてそろそろ一千万年が過ぎようとしています。 ただし、誤差としてたったの0.1%爆発時期がずれたとしても、それは一万年、人間にとってはどうしょもないほど長い年月になっちゃいます。 だから運がよければ。。


地球が生まれた45億年前より、さらに昔に起こった超新星爆発で出来た銀です、悠久の時の流れに思いをいたすきっかけに如何でしょう。

ミレニアム ブリティッシュ シルバー ホールマーク刻印 スターリングシルバー リング 




No.20002 スターリングシルバー GOOD LUCK ホースシュー ペンダントヘッド SOLD
ホースシューの横の長さ 2.4cm、縦 2.3cm、最大厚み 3mm、1941年 バーミンガム、一万四千円 SOLD

この品はSOLDとなりましたが、同等品を入手すべく、心当たりをあたっております。 ご興味の方は先行してご予約を承りますので、ご連絡くださいませ。 店主

銀のホースシューにはいくつかタイプがありますが、こちらのホースシューは写真二番目に見えるように、『GOOD LUCK』のレリーフ文字付きという特徴があります。 

このスターリングシルバー ホースシュー(馬の蹄鉄)のペンダントヘッドが作られたのは今から八十年ほど前の1941年です。 銀地金の雰囲気がよく出たリアルな蹄鉄のデザインになっています。 ライオンパサントの横の長さは3ミリほどあって、大きめなホールマークが刻印されているのは、ホールマーク自体を見て楽しむという作り手の意図を反映しているのでしょう。

裏面には「GOOD LUCK」の文字をはじめとして、デザイン登録したレジスター番号と、「ENGLAND」の刻印が見えています。 裏面に見えるホールマークは順にHG&Sのメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1941年のデートレター「R」になります。 

ヴィクトリアンやエドワーディアンの作ではありませんが、それでも1941年作といえば、かなり古い品であることがお分かりいただけると思います。 

ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄3つが描かれて、「Three Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の連想はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。

ついでながら、シャーロック・ホームズの『白銀号事件』を読んでいましたら、ホームズの「I think that I shall put this horseshoe into my pocket for luck.(このホースシューは幸運があるように、私が貰っておきましょう。)」という台詞に出会いました。 この探偵小説は1892年12月に発表されていますので、少なくともヴィクトリアンの頃には、「ホースシュー=グッドラック(幸運)」の連想があったことが分かります。 シャーロック・ホームズ シリーズには、アンティークなヴィクトリアンの暮らし向きが読み取れる場面が豊富なので、注意して読むと面白いようです。

それから、蹄鉄の滑り止めはカルカン(Calkin)と呼ばれるのですが、ちょっと注意して見てみると、このホースシューのカルカンは上側に三つと下側に四つの合わせてラッキーセブンになっています。 ホースシューが本来持っている幸運の意味合いに、カルカンのラッキーセブンが掛け合わされて、ラッキーの二乗になっていることから、より効果のありそうなホースシューに作られているのです。 

それでは、なぜホースシューが好まれるようになったのか。 ヴィクトリア時代に書かれた『The Horse Shoe, The True Legend of St. Dunstan and The Devil』 という書物には、ホースシューにまつわる伝説が書かれています。 その概要をご紹介してみましょう。

後にカンタベリー大司教になったセント・ダンスタンは、ハープを弾くのが上手で鍛冶屋の仕事もこなす器用な人でした。 ダンスタンが夜にハープを奏でていると、デビルがやって来て邪魔をするようになりました。 デビルの悪戯に困ったダンスタンは一計を案じて、蹄鉄を取替えに来たデビルの蹄足にホースシューの留め釘を深く打ち込んだのでした。 

痛がるデビルにダンスタンはこう言います。 「これからは礼拝の邪魔をしないこと、音楽を奏でる邪魔をしないこと、そしてホースシューを掲げた家には寄り付かないこと。 これを守るなら直して進ぜよう。」 デビルはダンスタンと契約をかわし、以降はホースシューが魔除けの役割を果たすようになり、さらには Good Luck をもたらすお守りとされるようになったのでした。


写真二番目で見て、右から三つ目にあるライオンの刻印が、英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 このライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。 

横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から500年ほど前の1544年のことになります。 これは当時のチューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。 

銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。 

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。

スターリングシルバー GOOD LUCK ホースシュー ペンダントヘッド スターリングシルバー GOOD LUCK ホースシュー ペンダントヘッド


No. 20013 ライオン ランパント (立ち姿ライオン) ピアストワーク スターリングシルバー フォブ ペンダントヘッド with ライオン パサント 銀円環
縦の長さ(留め具含む) 4.3cm、最大横幅 2.4cm、本体の厚み 1mm強、重さ 5g、1920年代の英国製、一万四千円

イギリス人のライオン好きが背景にあるという意味で、とても英国風なシルバーアクセサリーと思って見ております。 英国王室の紋章にライオン、イングランドのサッカーチームのエンブレムにもライオン、そしてアンティークなシリング銀貨にもライオン等々、イギリスとライオンは切っても切れない関係にあります。

透かしの銀フォブにライオン・ランパント(立ち姿のライオン)のデザインです。 写真で見て色合いが濃いめに見えるシェード部分は、とても繊細なエングレービングで、1ミリ間隔に何本もの彫刻線を引いて影をつけていった仕事です。 ルーペで詳細に見ていかれると、ハンドエングレービングとしては限界的な職人技が施されているのが分かり、より楽しめるアンティークであることがお分かりいただけるでしょう。 

ライオンを取り巻く楕円状のフレーム部分には、「T.H.S. SPORTS 1929」と浅めな彫刻文字が見えます。 また、写真二番目に見えるように、裏面にはメーカーズマークと、スターリングシルバーを示す「STERLING」の刻印があります。 

英国シルバーにおいて 92.5%の銀純度を示すスターリングシルバー マークは、普通はライオンが歩いている刻印で「ライオン・パサント(Lion Passant)」と呼ばれます。 ロンドン、シェフィールド、バーミンガム等のシルバーウェアをお持ちの方なら、おなじみのマークと思います。 ところがスコットランドはグラスゴーとなりますと、ライオンは歩いた姿ではなくて、立っていて、これが「ライオン・ランパント(Lion Rampant)」と呼ばれるのです。 

上部の銀円環には「横歩きライオン」の刻印が、しっかり深く刻まれているのもグッドポイントです。

この銀円環に刻印されたライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)は、英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 ライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。 

横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から460年ほど前の1544年のことになります。 これは当時チューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。 

銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。 

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。

イギリスの数多いパブの中にあって、もっとも多い名前が「Red Lion」で、英国人のライオン好きを示しています。 この国には約六万軒パブがありますが、そのうちで一番多いパブの名前は「Red Lion」で、六百軒のレッドライオンがあると言われます。 英国中のパブのうちほぼ百軒に一軒はレッドライオンという計算です。 これまでにご紹介した中にも以下のレッドライオンがありました。

「26.クロベリー村」の Red Lion

「32. ウェルシュ ボーダーの Weobley村」のRed Lion Inn

「33. Avebury村」の Red Lion

ライオン ランパント (立ち姿ライオン) ピアストワーク スターリングシルバー フォブ ペンダントヘッド with ライオン パサント 銀円環


No. 20025 ハート&アイビー モチーフ エドワーディアン スターリングシルバー ブローチ
横の長さ 4.9cm、最大縦長 1.9cm、ハートの横幅 1.85cm、厚み(ピンと留め具含まず) 2.5mm、重さ 4g、1908年 バーミンガム、一万四千円

この分野のアンティークは現代の品には見られない雰囲気と、一つ一つが個性的で同じものをまず見かけないのが特徴で、ホールマークから製作年やメーカーの特定が可能なことも多いので、私は興味深いアンティーク分野と思っています。

くり貫きハートの内側にアイビーの葉っぱが三枚、そして蔦が伸びていって左右に大きめなアイビーの葉っぱがついています。 ハート&アイビーはともにヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に流行ったモチーフなのです。

現代でも馴染み深いハートのデザインですが、その歴史をたどりますと、英国におけるハートのモチーフはジョージアンの頃登場し、ヴィクトリア期に大流行した経緯があります。 

また、19世紀後半からしばらく、ヴィクトリアンやエドワーディアンのイギリスでは、当時の自然主義的傾向にアイビーがよくマッチした為、バルコニーやガーデンファーニチャーに絡まるアイビーが大変好まれました。 アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。

四つのブリティッシュホールマークがしっかり刻印されているのも、この品の優れた特徴です。 ホールマークは順に メーカーズマーク、バーミンガムアセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1908年のデートレターになります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 この銀のブローチが作られたのは1908年ですから、正式な‘アンティーク’に晴れて昇格したばかりの品ということになります。 

一言に百年といっても、やはりそれだけの時の経過は大変なことと思います。 ちなみにこの頃の歴史年表を眺めてみますと、1910年:エジソンが電球を発明とか、1912年:タイタニック号氷山に衝突して沈没とか、出てきます。

このアンティークが作られた時代というのは、電灯もなかった時代なわけで、こうしたアンティークを手にしながら、その昔の時代に思いを馳せるのはアンティーク好きの楽しみであろうと思うのです。

写真の銀ブローチが作られた1908年は明治四十一年にあたっており、この年の九月から十二月まで漱石の『三四郎』が朝日新聞に連載されておりました。 この小説は明治四十年夏の終りから翌年初までの東京を舞台にして話が進んでいきますので、『三四郎』はアンティークな当時の暮らしを知る資料になりえます。
エドワーディアン スターリングシルバー ハート&アイビー ブローチ


No.20017 女神 ブリタニア &エリザベス二世 グッドラック ペニー コイン with エナメルワーク
直径 3.1cm、重さ 11g、最大厚み 2mm弱、銅貨は1967年 鋳造、一万四千円

エナメルワークの美しいグッドラック ペニーです。 幸運を呼ぶお守りのように扱われてきた品と思います。 エナメルの上からカバーグラスがかかっていて、エナメルのコンディションがよいままずっと保てるようになっています。 手にした時の重厚感に惹かれるよい品と感じています。

イギリスには現在の最小通貨単位である1ペニー硬貨について、『Find a penny, Pick it up, and then all day, You'll have good luck.』 (ペニーを見つけて、持っとけば、そしたらその日は一日グッドラックあり。)という言いまわしがあります。 

Good Luck ペニーコインは1967年の銅貨で、ヘッド(表)側はエリザベス二世の若かりし頃のポートレート、テイル(裏)側はイギリス国家の守り神とされる女神ブリタニアのデザインです。 

そして、エリザベス二世といえば、イギリスの現女王であり、ロンドン オリンピックの開会式ではジェームス・ボンドとの共演も話題となりました。 戴冠六十周年のゴールデンジュビリーを迎えても、まだまだお元気で、パワーを与えてくれそうです。 写真のコインは今から半世紀ほど前のもので、その頃から女王を続けてきたことは、やはり凄いことだと思います。

イギリスは1971年の通貨制度変更で、それまでの12進法から10進法に改めましたので、旧制度のペニーコインは1970年を最後にイギリスで七世紀から続く歴史を閉じました。 そういう事情で、1967年の貨幣ではありますが、現在のイギリスでは通用しません。

写真のペニーが使われていた時代は、イギリスで通貨制度改革が行われた1971年より前の時代になります。 当時は1ポンドが240ペンスでありました。 1970年に役割を終えていますから、今日では存在しないのが当たり前ですが、素材となっている銅の価格が今では高騰している為に、ペニーの製造原価という側面から見ても、今ではとてもじゃないけど存在し得ないコインとなっていることも興味深く思います。

もう少し詳しく計算してみましょう。 ペニー銅貨は9.4グラム、そのほとんどが銅というコインでした。 ニューヨーク マーカンタイル取引所における直近の銅価格は453gあたり3.1ドルでした。 英貨で1ポンドにあたる240枚のペニーを作る為には重さにして2.256kg、銅価格にして15.4ドル。 ポンドドル相場 1.62$/£でポンドになおすと、9.5ポンドになります。 

1ポンド分のペニーを鋳造するのに、素材の銅価格だけで9.5ポンドのコストがかかるとしたら、そんなコインはとてもじゃないけど存在し得ないでしょう。 銅価格の変遷という事情が背景にあって、写真のペニーには、今となってはアンティークでしか手に入らない希少性が備わっているとも思うのです。

あらためて詳細に見てみると、なかなか細工のよいアクセサリーであることが分かります。 女神ブリタニアや女王が浮き出す形でエナメルがきっちり入っていますし、奥ゆきの感じられるエナメルワークは、光にあたった反射光が綺麗です。 エナメルワークとは日本語で言うと「七宝焼き」のことで、金銀などの貴金属にガラス質の釉薬を焼き付ける装飾技法です。 元々は古代エジプトに起源を持ちますが、奈良時代には日本にも伝来しました。 その後七宝焼きは日本で技術的な発展を遂げ、ヴィクトリア時代の英国では、逆に日本の技術が大いに研究もされました。 このあたりの経緯は、「英国アンティーク情報」欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治政府の岩倉使節団」後半に解説がありますので、ご参考まで。

最後にイギリスの昔のお金についてですが、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1ポンド」=「ペニー銅貨240枚」になります。 ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。

昔、サマセット・モームの「月と六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数字でもあるのです。
1971年になってようやく旧通貨制度が廃止され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。 

この十二進法時代の名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと落ち着かないのでしょう。

このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン時代のイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服者が「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。
女神 ブリタニア &エリザベス二世 グッドラック ペニー コイン with エナメルワーク女神 ブリタニア &エリザベス二世 グッドラック ペニー コイン with エナメルワーク


45. 夏目漱石のイギリス留学、アーツ・アンド・クラフツ ヴィクトリアン シェイクスピア本、そして漾虚集(ようきょ集)
文豪 夏目漱石はヴィクトリア時代のロンドンで二年間暮らしておりました。 漱石のイギリス暮らしはどんな様子であったのか。 帰国後に出版された 『漾虚集』にあらわれている漱石のイギリス経験について考えてみました。
アーツ・アンド・クラフツ装丁 チズウィック・ プレス ヴィクトリアン シェイクスピア シリーズ 『Romeo and Juliet』夏目漱石のイギリス留学、アーツ・アンド・クラフツ ヴィクトリアン シェイクスピア本、そして漾虚集(ようきょ集)(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20016 スターリングシルバー サラダ サーバー with ピアストワーク
長さ 21.4cm、重さ 54g、ボール部分の長さ 7.7cm、最大幅 4.6cm、深さ 1.2cm、柄の最大幅 2.8cm、柄の最大厚み 2.5mm、1943年 バーミンガム、二万七千円

今から七十年以上前に作られたスターリングシルバーのサービングスプーンで、元々サイズの大きなシルバーですが、透かし柄部分も大きめで、迫力のある仕上がりになっています。 柄元の方は最大で2.5ミリほどの厚みがあります。 ピアストワークが施されたあたりも2ミリ弱の厚みがあって、透かしを切り出していく作業には時間と労力がかかったと思います。 

ピアストワークは手仕事で、糸鋸を引いたギザギザ跡が残っています。 ルーペを使って詳細に調べてみると、糸鋸を引いた跡も繊細で、細工のよい品であることが分かります。 手仕事で糸鋸を引いていくのですから、職人さんの優れた技術と多くの時間がかかります。 

現代のシルバースミスの方からお聞きしたことがありますが、作業にかなりの時間を要するこうした透かし細工は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや出来ないとのことでした。 そして、そもそもこれだけの技術を持った職人さんが現代ではいなくなっているのです。 

写真三番目に見えるように、柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1943年のデートレターになります。

写真のタイプのシルバーウェアのことを、イギリスではサラダ サーバーと呼ばれます。 英国アンティーク シルバーウェアの参考書に記述があったので、写真四番目でご紹介しています。
サラダ サーバーは1750年頃からイギリスで作られるようになりました。 写真四番目で右側に見えているのは、18世紀後半 ジョージ三世の頃のオールドイングリッシュ パターン サラダサーバーです。 写真左側に見えるのはやはりオールド イングリッシュ パターンのサラダサーバーで、こちらは19世紀の作になります。

この品が作られた1943年は第二次大戦の最中になります。 英国は戦勝国とはなったものの、大変な時期であったことは間違いありません。 ロンドンはドイツから弾道ミサイルの攻撃を受けたり、爆撃機による空襲も頻繁にありました。 私の住む町はロンドンの北の郊外で爆撃の目標にはならなかったようですが、近所のお年寄りの話では、ロンドンを空襲した帰りの爆撃機が、残った爆弾を燃料節約の為に落としていくコースに当たっていて、怖かったとのこと。 

とは言うものの、写真のようなピアストワークの素晴しい不要不急品を作っていたとは、当時のイギリスは結構余裕もあったんだなあ、と思うのです。

スターリングシルバー サラダ サーバー with ピアストワーク

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