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No. 5738 ヴィクトリアン スターリングシルバー ケーキナイフ
with マザー オブ パール ハンドル
長さ 23.5cm、重さ 72g、ブレードの最大幅 2.1cm、ブレード背の最大厚み
2mm、マザー オブ パール柄の最大幅 1.85cm、最大厚み
0.95cm、1899年 シェフィールド、三万三千円
十九世紀の終わり頃に作られたスターリングシルバーのケーキナイフです。 ブレード部分のホールマークは順にシェフィールドの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1899年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。
フラワーデザインに植物模様のウェーブパターンは、典型的なヴィクトリアン アンティークという雰囲気です。 微細なエングレービングには手仕事としては限界的なテクニックの高さがあって、美しいケーキナイフに仕上がっています。
ブレードの背はギザギザと鋸(のこぎり)状になっています。 ケーキをサーブするのに、なぜ鋸かとも思いますが、イギリスのケーキは表面を砂糖の塊のようなアイシングで、こてこてに固めたケーキが多く、実際のところ切り分けには鋸が必要なのです。
このアイシングたっぷりのイギリス風ケーキというのは、びっくりするほど美味しくないことが多いので不思議です。 日本でこんなケーキが出てきたら、誰もがきっと絶句することでしょう。 しっとりとした普通のケーキとは似ても似つかぬ、水気もなくぱさぱさしたスポンジに砂糖の塊が数ミリの厚さで塗りつけてある食べ物です。
ところがもっと驚くのは、イギリスの子供たちは日本やフランス風のしっとりと美味しいケーキよりも、ぱさぱさごわごわのこうしたケーキがお気に入りなことです。 うちの娘の友達が集まるパーティーで、私が手作りケーキを作ってもあまり喜ばれません。近くのスーパーマーケットで買ってきたようなアイシングたっぷりのケーキがいいのです。
このアンティーク ケーキナイフのギザギザした鋸を見たとき、ずっと昔のヴィクトリアン ケーキもきっと凄まじいものだったのだろうと思いました。 百年以上の年月をかけて、ブリティッシュ トラディショナル ケーキの伝統がイギリスの子供たちにしっかり根付いているのです。
アンティークをきっかけに、その国の文化や伝統について考えてみるのは楽しいことだと思います。 英国アンティーク情報欄の「27.ホールマーク漏れと英国人気質」解説記事もついでにご覧ください。
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