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No. 5280 ヴィクトリアン スターリングシルバー ブローチ with ピアストワーク
横の長さ 2.9cm、縦の長さ 2.1cm、ブローチ本体の厚み(ピン含まず) 3mm、ピンの長さ 3.2cm、ヴィクトリアン後期の英国製、一万三千円

透かし部分のシルバーの厚みは1ミリほどあって、同じようなタイプのブローチと比較して銀が厚めに出来ています。 そんなわけでルーペで詳しく見ると、断面には糸鋸を手仕事で引いたギザギザ跡が残っているのが分かります。 

木の枝にとまる鳥のデザインは、ヴィクトリアン後期のジャポニスム モチーフブックから採用されたものと思います。 鳥の姿が純和風ではないのですが、イギリス人が日本趣味を取り入れると、こういう感じにもなるという事例でしょう。

表面に施されたエングレービングの繊細さは、ハンドワークとしては限界的な仕事で、驚くべき水準になっています。 お手元にアンティーク ハント用のルーペがあれば、さらに楽しめるブローチです。

このブローチにはホールマークが刻印されていませんが、透かし細工の様子、彫刻の細やかさ、モチーフ、ピンの形状などから見て、ヴィクトリアン後期の英国製シルバーブローチであることは間違いないでしょう。

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ヴィクトリアン後期の英国にあってはジャポニスムが新鮮で、大きな顧客需要があり、モチーフブック等の基礎資料も充実していたことが、今日私たちが日本趣味な英国アンティークシルバーにお目見かかれる理由なのです。 百数十年も前に多くのイギリス人たちが日本に大いなる関心を持っていたことには驚かされます。






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