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No. 4179 ヴィクトリアン スターリングシルバー ホースシュー ブローチ
横の長さ 4.35cm、ホースシューの縦長 1.2cm、最大厚み(留め具含まず) 5.5mm、ピンの長さ 4.2cm、ヴィクトリアン後期の英国製、一万三千円

左右両端と中央にタイプの異なる花飾りが付いています。 ルーペで詳しく観察してみると、両端の花には同心円状の飾り彫りが幾重にも施されているのが分かります。 中央の花には、放射状にライン彫りが施されていて、写真では影をつけたように色合いが濃いめに写っていますが、これは細やかな彫刻によるものです。 

ホースシューからは左右にクルッと蔓が延びて、葉っぱの飾りに繋がります。 葉っぱに見える彫刻は強めなタッチで彫られているので、光の反射が綺麗です。 

蹄鉄の滑り止めはカルカン(Calkin)と呼ばれます。 ちょっと注意して見てみると、このホースシューのカルカンは右側に三つと左側に四つの合わせてラッキーセブンになっています。 ホースシューが本来持っている幸運の意味合いに、カルカンのラッキーセブンが掛け合わされて、ラッキーの二乗になっていることから、より効果のありそうなホースシューに作られているのです。 

裏面をご覧いただくと、メーカーズマークとスターリングシルバーを示すライオンパサントが読み取れます。 アセイオフィスマークとデートレターの判読がむずかしいのですが、ヴィクトリアン後期に作られた銀のブローチと思います。 ホロー(中空)構造のシルバーフレームとホースシュー本体にもヴィクトリアンの趣がよく出ています。 

ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄三つが描かれて、写真三番目のような「Three Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の図式はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。

シャーロック・ホームズ 『白銀号事件』のなかに、ホームズの「I think that I shall put this horseshoe into my pocket for luck.(このホースシューは幸運があるように、私が貰っておきましょう。)」という台詞があります。 この探偵小説は1892年12月に発表されていますので、少なくともヴィクトリアンの頃には、「ホースシュー=幸運」の連想があったことが分かります。 写真のホースシューはまさに『白銀号事件』と同じ頃に作られたヴィクトリアン アンティークなので、あわせてシャーロック・ホームズを読み直してみるともっと楽しめるでしょう。

それでは、なぜホースシューが好まれるようになったのか。 ヴィクトリア時代に書かれた『The Horse Shoe, The True Legend of St. Dunstan and The Devil』 という書物には、ホースシューにまつわる伝説が書かれています。 その概要をご紹介してみましょう。

後にカンタベリー大司教になったセント・ダンスタンは、ハープを弾くのが上手で鍛冶屋の仕事もこなす器用な人でした。 ダンスタンが夜にハープを奏でていると、デビルがやって来て邪魔をするようになりました。 デビルの悪戯に困ったダンスタンは一計を案じて、蹄鉄を取替えに来たデビル蹄足にホースシューを深く打ち込んだのでした。 

痛がるデビルにダンスタンはこう言います。 「これからは礼拝の邪魔をしないこと、音楽を奏でる邪魔をしないこと、そしてホースシューを掲げた家には寄り付かないこと。 これを守るなら直して進ぜよう。」 デビルはダンスタンと契約をかわし、以降はホースシューが魔除けの役割を果たすようになり、さらには Good Luck をもたらすお守りとされるようになったのでした。






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