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No. 18034 蝶に花 ジャポニスム モチーフ 手刺繍 コットンクロス
縦 40cm、横 60cm、1930年代の英国製、七千五百円

蝶と花の手刺繍デザインが左右両方に見えています。 センターラインには小花の刺繍も効いています。 手刺繍の部分はしっかりと丁寧な仕事ぶりで、いい感じの仕上がりと思います。 

蝶が飛ぶ様子はジャポニスムのモチーフブックを参考にしたデザインと感じます。 作られたのは1930年代のイギリスと思われ、当時はまだヴィクトリアン後期に数多く出版されたジャポニスム モチーフブックが手に入りやすい状況だった為でしょう。 

どうして、こういった和風モチーフのコットンクロスがイギリスで見られるかというと、それは百五十年以上にわたる日本美術研究の蓄積がイギリスにあるからです。 

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ちなみに、イギリスにおけるジャポニスム研究書のさきがけとなった「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」の著者であるオールコックという名前、聞いた覚えのある方もいらっしゃるかと思います。

サー・ラザフォード・オールコックは、幕末の日本で数年間暮らしたイギリスの初代駐日公使です。 当時のイギリス公使館は、現在の品川駅から徒歩七分、港区高輪の東禅寺に置かれていましたが、オールコック在任中には、攘夷派浪士が英国公使館を襲撃した東禅寺事件など起こっています。 まさに命がけの日本勤務であったろうと思います。 彼は幕末日本滞在記である『大君の都 (岩波文庫 上・中・下)』も残しています。

オールコックと言えば、幕末期のイギリス外交官としての仕事に注意が向きがちですが、一方では日本美術に傾倒し、「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」という著作も残しているわけで、日本のよさを広く海外に紹介してくれた、よき広報官という側面もあったのでした。

オールコック初代駐日公使、「Art and Art Industries of Japan」、ヴィクトリア時代のJapanese craze(日本趣味の大流行)、ジャポニスム研究、数多くのモチーフブック等々、こういう歴史的な背景があって、イギリスで作られ現代に到っている手刺繍のコットンクロスというわけです。

蝶に花 ジャポニスム モチーフ 手刺繍 コットンクロス



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