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No.17118 グッドラック シリング銀貨(Lucky Shilling)& ヴィクトリアン パテント スターリングシルバー フレーム ペンダントヘッド with ブリティッシュ シルバー ホールマーク
最大直径 2.8cm、留め具の銀円環を含む最大縦長 3.1cm、重さ 8g、1891年 バーミンガム アセイオフィス、シリング銀貨は1887年鋳造、一万二千三百円

写真の銀アクセサリーは、ヴィクトリア女王の戴冠50周年を記念したゴールド ジュビリー コメモレーションの「One Shilling」 銀貨をペンダントヘッドにしたものです。 シールドリバース エンブレムと、裏面にはヴィクトリア女王のポートレートが入っています。 シールドリバースのエンブレムが素敵で好きなこともあって求めました。 もともとはブローチであったものに、太めの銀円環を取り付けて、ペンダントヘッドとして使われてきたものと思います。

フレームの縁辺部には、ブリティッシュ シルバー ホールマークが刻印されています。 刻印面の幅が狭いので、ホールマークの一部が見えるものですが、読み取りは可能で、メーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1891年のデートレター、そしてバーミンガム アセイオフィスのアンカーマークが刻印されています。

ヴィクトリアンのパテント(特許)を使ったスターリングシルバーのフレームになっています。 写真二番目に見えるように、「PATENT」と刻印されたバーを横にずらすと、シリング銀貨が取り外せる仕掛けです。 ヴィクトリアン銀貨のヘッド or テール、お好みのデザインを表側に据えて、リバーシブルでお使いいただけます。 あるいは、また、銀貨が取り外せますので、場合によっては、コイントスに銀貨を使ったりするのもおもしろいでしょう。 

この品が作られた当時はイギリス資本主義が発展途上にある段階で、パテント(=特許)という考え方も、まだ新しい考え方でありましたので、めずらしいこともあって、「PATENT」という刻印がわざわざ使用されているものです。 その辺りにも、ヴィクトリアンの歴史を感じさせてくれる手掛かりがあって、興味深いアンティークシルバーだと思います。 手掛かりと言えば、もう一つ、フレームの周りに配された銀の粒々はグラニュレーションと呼ばれ、ヴィクトリア期に好まれた銀装飾の手法です。

ヴィクトリア時代のパテントについては、『ハドソン商会 ウィッスル』にあるエピソードもご参考まで

ヴィクトリアン銀貨本体の使い方としては、ゴルフをされる方には、グリーン上でボールマーカーに使うのもいいかなと思います。 シリング銀貨のグッドラック効果もあり、パッティングの成績も上がるような気がします。

『裸の王様』、『みにくいアヒルの子』、『人魚姫』などで有名なアンデルセンの作品の中に、19世紀半ばに書かれた『シリング銀貨』というおとぎ話があります。 外国旅行に出かけた英国紳士の財布にあった一枚のシリング銀貨が、異国の地で財布からこぼれてしまい、いろいろな人たちを巡りめぐって、最後には元々の持ち主であった英国紳士のもとに戻ってくるというストーリーです。 

物語の中で、シリング銀貨に穴をあけて糸を通し「Lucky Shilling」として身に着けるという話が出てきます。 シリング銀貨は大き過ぎず、小さ過ぎず、ペンダントヘッドにちょうど良いサイズであることと、シルバーという素材は幸福に通じることから、遠いヴィクトリアンの時代よりラッキーシリングとして好まれてきた背景があるようです。 


ヴィクトリア女王時代に好まれたシールド リバースが表側のデザインに採用されています。 描かれているのは、右上にライオンの立ち姿でライオンランパント、左下にはハープクラウンド、そして三頭のライオンは『ライオンハート(獅子心王)』の愛称で知られる12世紀の英国王リチャード一世時代からのエンブレムです。 銀貨の下部には1887年の年号が見えます。

リチャード一世は十年間の治世中に国内にいたのがたったの六ヶ月という王様で、海外での戦いに明け暮れた英国王でした。 戦いで名を馳せ、ライオンハートの称号を得て、その勇気と生きざまは騎士の模範とされています。 そして現代ではサッカーのイングランド代表が使うエンブレムが、まさにこのスリーライオンなのです。

クイーン ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。

ヴィクトリア時代のイギリスについては、「英国アンティーク情報」欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や「14. Still Victorian」の解説記事も合わせてご覧ください。

最後に、イギリスの昔のお金について、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1シリング」=「12ペンス」になります。 ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。
昔、サマセット・モームの「月と六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数字でもあるのです。
1971年になってようやく旧通貨制度が廃止され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。 

この十二進法時代の名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに、気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと落ち着かないのでしょう。

このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン時代のイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服者が「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。

グッドラック シリング銀貨 (Lucky Shilling)& ヴィクトリアン パテント スターリングシルバー フレーム ペンダントヘッド with ブリティッシュ シルバー ホールマーク



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