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No. 15940 Mappin & Webb アール・デコ スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 13,6cm、重さ 28g、ボール部分の最大幅 3.6cm、ボール部分の長さ 4.5cm、ボールの深さ 8mm、1934年 シェフィールド、Mappin & Webb作、一本 八千五百円 or ケース付二本セット一万五千円

「Mappin & Webb」によって今から70年以上前に作られたスターリングシルバー ジャムスプーンです。 28グラムと持ちはかりがあって、柄の厚みも最大3ミリと、しっかり出来ています。ボール部分の基本デザインはシェルとなっていますが、1930年という年代を反映して、直線を基調としたシェルパターンになっています。

このシェルパターンの歴史を振り返ってみますと、12世紀にスペインの聖地 St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。

1920年代からのしばらくはアール・デコの時代ですが、ヴィクトリアンあるいはエドワーディアンの伝統的で凝ったシルバーデザインとは大きく異なる変更が、この時代にあったことは、とても興味深いと思います。 ある解説によれば、このデザイン上の大きな断絶を生み出した最大の要因は第一次大戦だったと言われています。 当時の人たちはヴィクトリアンとエドワーディアンの輝かしい伝統の延長上に世界大戦が起こったことに大きなショックを覚え、ポストワーの時代には、昔の時代から距離を置きたいと望む風潮が強く、そこにアール・デコがぴたりとはまったというわけです。 

柄の裏面には「Mappin & Webb」のメーカーズマーク、1934年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、オプショナルのシルバー ジュビリーマークが刻印されています。

写真五番目で見えるように、オリジナルのケースには「Mappin & Webb Ltd」の名前と、お店の所在地として「Queen Victoria Street, London」とあります。 クイーン・ヴィクトリア通りといえば、バンク オブ イングランドのあるBankからSt.ポール寺院があるSt.Paul'sの方へ向かう通りで、ロンドンの金融街シティーになります。

「Mappin & Webb」は言わずと知れた有名メーカーですが、その歴史は興味深いので、少し振り返って見ておきましょう。

マッピン関連のアンティークを扱っていると、「Mappin & Webb」とよく似た名前の「Mappin Brothers」というシルバースミスに出会うことがあります。 「Mappin Brothers」は1810年にジョセフ マッピンが創業した工房で、彼には四人の後継ぎ息子がありました。四人は上から順にフレデリック、エドワード、チャールズ、そしてジョンで、年長の者から順番に父親の見習いを勤めて成長し、1850年頃には引退した父ジョセフに代わって、四兄弟が工房を支えていました。

ところが末っ子のジョンは、工房の運営をめぐって次第に兄たちと意見が合わなくなり、ついに1859年には「Mappin Brothers」を辞めて独立し、「Mappin & Co」という銀工房を立ち上げました。 以後しばらくの間、「Mappin Brothers」と「Mappin & Co」は「元祖マッピン家」を主張しあって争うことになります。

しかし最初のうちは「Mappin Brothers」の方が勢力があったこともあり、1863年には末っ子ジョンの「Mappin & Co」は「Mappin & Webb」に改名することとなりました。 Webbというのはジョンのパートナーであったジョージ ウェブの名から来ています。

「元祖マッピン家」問題では遅れをとったジョンでしたが、兄たちよりも商売センスがあったようです。 スターリングシルバー製品以外に、シルバープレートの品にも力を入れ、目新しい趣向を凝らした品や新鮮なデザインの品を次々と打ち出し、しかも宣伝上手だったのです。 ヴィクトリアン後期には当時の新興階級の間でもっとも受け入れられるメーカーに成長し、それ以降のさらなる飛躍に向けて磐石な基盤が整いました。

20世紀に入ってからの「Mappin & Webb」は、「Walker & Hall」や「Goldsmiths & Silversmiths Co」といったライバルの有名メーカーを次々にその傘下に収めて大きくなり、今日に至っています。 また「Mappin Brothers」ですが、時代の波に乗り切れなかったのか、1902年には「Mappin & Webb」に吸収されてしまっています。

Mappin & Webb アール・デコ スターリングシルバー ジャムスプーン








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