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No. 15176 ジョージアン スターリングシルバー ハノーベリアン パターン テーブルスプーン with ヴィクトリアン デコレーション
長さ 20.4cm、重さ 46g、ボール部分の長さ 7.3cm、深さ 1.0cm、最大横幅 4.25cm、1775年 ロンドン、二万七千円

ジョージアンのテーブルスプーンを素材にして、ヴィクトリア時代にデコレーションを加えたベリースプーンです。 ボール部分のフルーツ装飾は立体感があって、光に当たるとゴールドの色合いが美しいだけでなく、柄の表側は装飾も凝っています、また、柄の裏面には軽く打ち出しの細工も施されています。 

ゴールドギルトされたボール部分にフルーツの打ち出し装飾という、このタイプのスプーンはベリースプーンと呼ばれます。 ゴールドギルトは装飾的な美しさを追求すると同時に、ゴールドは果物の酸にも強いからという実用上の理由もあって、ベリースプーンに採用されています。 ヴィクトリアンの食卓では、ラズベリー、ブラックベリー、ストロベリー等のベリー類のコンポートが好まれたようですが、これらを総称したサマーフルーツは今でもイギリス人のお気に入りです。 

ベリースプーンがイギリスで作られるようになったのは、ヴィクトリア時代に大英帝国の海外版図が拡大し、エキゾチックな果物が手に入るようになった19世紀の中頃からです。 当時はジョージアンのスプーンを装飾加工して、ベリースプーンに仕上げることが流行したため、今日私たちがアンティークのベリースプーンを手にしてみると、ジョージアンのホールマークが刻印されていることがほとんどです。 このため、ベリースプーンには作られた時が二回あることになるのです。 ホールマークによって確認できる、ベースのジョージアンスプーンが作られた時が一回目で、ベリースプーンに加工されたヴィクトリアンの時代が二回目というわけです。 そして二回目の加工年は特定出来ないのが普通です。

この品の場合は、ベースのジョージアンスプーンがハノーベリアンパターンで、かなり古い品であることも、おもしろい特徴になっています。 ホールマークがボール部分に近い、柄の細い部分に刻印されていて、古いスプーンに特徴的なボトムマーキングになっているのもよいでしょう。 裏面のホールマークは順にメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドンレオパードヘッド、そして1775年のデートレターになります。

ハノーベリアンパターン パターンは柄先が手前に曲がっていることをメルクマールに、オールドイングリッシュパターンと区別されます。 1710年頃登場し1770年頃まで作られていましたが、これはジョージアンの時代でもジョージ一世とジョージ二世が国王であったジョージアン前期とほぼ重なっています。

英国のシルバーウェアにはデートレターの制度があるので、製作年を特定できるわけですが、この品には二世紀半以上前のアンティークである手掛かりが、他にもいくつか残っていますので、順に検討してみましょう。

このスプーンはイニシャルが柄先の裏面に刻んであります。 このことは当時のテーブルマナーとして、今とは逆にスプーンが伏せた格好でセッティングされていたことを示唆しています。 スプーン一つの形状から、昔の暮らしを想像できることはとても興味深く思います。

ホールマークの刻印のされ方自体も歴史を語っています。 第一にホールマークの横に長い形です。 ライオンパサントやロンドンレオパードヘッドは六、七ミリの横長があって、これはオールドファッションなブリティッシュ ホールマークの特徴です。 第二にホールマークの刻印箇所が柄のボールに近い部分であることです。 この手法はボトムマーキングと呼ばれ、1700年頃から1770年頃に流行った方法になります。

イギリスのアンティークスプーンのデザインパターンや、テーブルマナーの変遷について、詳しくは「英国アンティーク情報」欄にあります「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご覧ください。

ジョージアン スターリングシルバー ハノーベリアン パターン テーブルスプーン with ヴィクトリアン デコレーション








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