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No. 15147 スターリングシルバー ジャムスプーン with ピアストワーク
長さ 13.7cm、重さ 20g、最大幅 3.3cm、柄の最大幅 1.25cm、柄の最大厚み 2mm、1930年 ロンドン アセイオフィス、Robert Pringle & Son作、一万二千八百円

透かし細工の綺麗なスターリングシルバー ジャムスプーンです。 ボール部分はシンプルなタイプですが、ハンドル部分の装飾とあわせて、バランスのよい出来栄えと思います。 ピアストワークは手仕事で、糸鋸を引いたギザギザ跡が残っています。 糸鋸を使って装飾を施していく労働集約的な作業であることから、職人さんの優れた技術と多くの時間をかけて作られたアンティークといってよいでしょう。 

現代のシルバースミスの方からお聞きしたことがありますが、作業にかなりの時間を要するこうした透かし細工は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや出来ないとのことでした。 この品が作られたのは今から八十年前の1930年になりますが、この辺りが古きよき銀細工の時代の終り頃にあたっているということでしょう。

写真二番目にある裏面のホールマークは順に「Robert Pringle & Son」のメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドン レオパードヘッド、そして1930年のデートレターになります。

シルバースミスの「Robert Pringle & Son」が創業したのはヴィクトリア時代が始まる二年前で、ジョージアンの時代の1835年のことです。 イギリスの銀工房はヴィクトリア時代に始まったものが多い中にあって、「Robert Pringle & Son」は老舗の一つと言ってよいでしょう。

それでは、写真の品が作られた当時のイギリスはどんなであったのか。 先日、お客様との遣り取りの中で、調べてみる機会がありました。

1929年に始まった世界恐慌といいますと、私たちは世界史をアメリカ中心に学んできましたので、米国株暴落から世界中一緒に奈落の底に落ちて行ったかのように思ってしまいがちです。 

実際のところは、1929年10月の米国株暴落から直ちに世界恐慌につながったわけではなくて、1931年頃まで、イギリスへの影響は比較的軽微でありました。 1931年5月から欧州の銀行倒産が始まって、31年9月イギリスは金本位制から離脱しました。 ところが金本位制離脱後には低金利政策が可能になって、1932年から37年までのイギリスは住宅建設ブームになっています。

当時、イギリスの金本位制からの離脱は大きな出来事でしたし、1930年代は総じて不況と言ってよいのですが、一方で住宅建設は好調でした。 光と影が同時に存在した1930年代のイギリスであったのです。

スターリングシルバー ジャムスプーン with ピアストワーク





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