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No. 14858 スターリングシルバー チャームブレスレット SOLD
ブレスレット一周の長さ 17.0cm、重さ 31g、伝書鳩の横幅 1.5cm、ハート留め具の横幅 1.5cm、SOLD

手紙を運ぶ伝書鳩のチャームは可愛らしく、また珍しいと思います。 文字が浮かぶ仕掛けチャームが付いているのも楽しいでしょう。 脱落防止用のサブチェーンもあって安心です。 
それではハートの留め具から順にチャームを見てまいりましょう。

0.ハート留め具にはブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1973年のデートレターになります。 

1.六ペンス硬貨(1967年鋳造): イギリスでは六ペンス硬貨にはラッキーアイテムの意味合いがあって好まれます。 

デイビット・スーシェ主演の名探偵ポワロシリーズの一つ、『The Theft of the Royal Ruby (=原作名:The Adventure of the Christmas Pudding)』に、クリスマスディナーの場面がありました。 

クリスマス プディングに指輪など小物をいくつか入れておいて、取り分けたときに何が入っているか、おみくじのようにして楽しむ趣向があるのです。 ディナーテーブルを囲む人たちから、六ペンスを引き当てた人に、ひときわ大きな歓声があがります。 六ペンスというのは、日本のおみくじで言ったら大吉に相当することが見て取れて、興味深く思いました。

このデイビット・スーシェのポワロシリーズは、1910年代から1930年代に時代設定されており、今から七十年から百年ほど前の様子が描かれております。 当時のイギリスの暮らしや社会の様子が分かるという意味で、アンティーク好きの方にはお薦めしたいと思います。 ディテールにこだわって見ていくと、ますますアンティークに親しみが湧きますし、いろいろと発見があって楽しめます。

2.犬:銀が中まで稠密なしっかり系のチャームです。 ボディーの部分には「SILVER」の刻印があります。

3.椅子の上にギターと帽子がのっています。
4.手紙を運ぶ伝書鳩

5.くるくるチャーム:ハートを指で弾くと、「HAPPY BIRTHDAY」の文字が浮かび上がる仕掛けチャームです。 ハート型の回転盤を固定する支柱部分の内側にはスターリングシルバーを示す「925S」の刻印があります

6.バレリーナ
7.バグパイプを奏でるスコットランドの人

コインの鋳造年は1967年ですので、この六ペンスは銀貨ではありません。 イギリスにおける六ペンスは1947年に銀貨から銅ニッケル合金に変わりました。 しかしながら六ペンス コインは縁起物として好まれることが背景にあって、チャームの一つとして取り込まれたものです。

表側はエリザベス二世の横顔で、裏面は写真に見えるように四つの花のデザインです。 四つの花とはスコットランドのあざみ、北アイルランドのシャムロック、ウェールズのリーク、そしてイングランドのバラになります。 

マザーグースのナーサリーライムに、花嫁が身につけると幸せになれるといわれるサムシング・フォーに続いて、以下のように一節があり、六ペンスが好まれる背景になっています。

Something old, something new,
something borrowed, something blue,
and a sixpence in her shoe.

六ペンスによい意味合いが付与されてきた背景には、イギリスにおける長い歴史的な事情があるわけですが、そうした歴史の中に「イングランド銀行を救った六ペンス」の話もありますので、ついでにご紹介しておきましょう。

『Manias, Panics and Crashes (Kindleberger著)』という本によれば、南海泡沫事件のさなかの1720年9月にイングランド銀行で取り付け騒ぎが起こり、大勢の預金者がお金を引き出そうと、イングランド銀行に殺到しました。 資金ショート寸前であったイングランド銀行が危うく倒産を逃れたのは、六ペンスのおかげであったというのです。

預金を下ろしに大勢の人たちが押しかけて長蛇の行列となった事態に対して、イングランド銀行が採った作戦は、さくらを行列の前の方に並ばせるということでありました。 そしてさくらの人たちに対して、預金を小銭の六ペンスでもって払い戻すということをしたのです。 

大金を六ペンスで払うものですから、一人の払い戻しにも長い時間がかかりました。 さらには、支払った大量の六ペンスは、裏口からイングランド銀行に還流させて、また使うということを繰り返したのです。

こうして、どうにかこうにか資金ショートを免れて、やりくりしているうちに、セント・ミカエルの祭日がやってきて、人々のパニック心理もようやく落ち着きを取り戻すようになりました。 祭日明けには取り付け騒ぎも収まって、イングランド銀行は正常な業務に戻ることが出来たそうです。

イギリスという国の大本をなすイングランド銀行でさえも、その昔には六ペンスによって救われたという歴史的な事実も、六ペンスのポジティブイメージに一役買っているということは、少なくとも言えそうです。

最後に、イギリスの昔のお金についてですが、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1シリング」=「12ペンス」になります。 ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。

昔、サマセット・モームの「月と六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数字でもあるのです。
1971年になってようやく旧通貨制度が廃止され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。 

余談ながら、『月と六ペンス』という対比的な題名になんとも惹かれるのですが、皆さん如何でしょうか。 この小説を読むと六ペンスを持ってみたい気がしてくるように思うのです。 ちなみにモームは「幻想と現実」を表象する二つのものとして月と六ペンスを選んだようです。

この十二進法時代の名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに、気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと落ち着かないのでしょう。 

このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン時代のイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服者が「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。

スターリングシルバー チャームブレスレット

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