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No. 14739 スターリングシルバー ケース
縦の長さ 8.0cm、横の長さ 5.5cm、最大厚み 1.15cm、重さ 45g、1928年 バーミンガム、二万九千円

両面に施されたハンド エングレービングが素晴らしい。 持っているだけで楽しい気分になれるシルバー ケースです。 

とても綺麗な銀のケースでありますが、今から八十年以上前に作られた古い品です。 世界恐慌の発端となったウォールストリートの株暴落より先立つこと一年の1928年作であることが、裏面に刻印されたブリティッシュ ホールマークを判読することで分かります。

元々はタバコ入れですが、今どきのイギリスはパブですら全面禁煙になってしまい、愛煙家の方は立場がなくなる一方です。 日本だって、この銀ケースにタバコを入れようと、お考えの方は少ないでしょう。 しかし、薬入れとか、お裁縫セット入れなど、役割を変えれば、まだまだ現役で十分に活躍できるだけのコンディションのよさを保っております。

写真一番目で中央の楯状部分は、本来ですと持ち主のイニシャルを刻むところですが、この品の場合は何も彫られておりません。 新しいオーナーの方がイニシャルを彫ることも出来ますが、鏡のような光沢を持っていることから、口紅くらいは直せますので、そういう使い途もありかと思います。

蓋を開けると内側はゴールドギルトされております。 写真三番目でみて左側上方にはメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1928年のデートレターがしっかり深く刻印されています。 また、右側下方にもスターリングシルバーを示すライオンパサントと1928年のデートレターが刻印されています。

彫刻のモチーフは渦巻きとウェーブパターンの融合デザインです。 波模様モチーフには、Continuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフのデザインです。

「Spiral=渦巻き、螺旋」というのは、とても重要なケルティックモチーフで、渦巻きは太陽を象徴し、そこからGrowth(成長)、Expansion(拡大)、Energy(活力)の意味合いが導かれます。 イギリスにおけるケルティック リバイバルの潮流の中で渦巻き様のウェーブパターンが流行っていった経緯があります。

そして、この銀のケースの特筆すべきポイントは、彫刻のタッチは既にして細かいのですが、その微細な彫刻に二種類の手法が用いられていて、他の銀ケースと比べてさらに繊細な様相であることです。

それでは、写真の品が作られ使われた当時のイギリスはどんなであったのか。 先日、お客様との遣り取りの中で、調べてみる機会がありました。

1929年に始まった世界恐慌といいますと、私たちは世界史をアメリカ中心に学んできましたので、米国株暴落から世界中一緒に奈落の底に落ちて行ったかのように思ってしまいがちです。 

実際のところは、1929年10月の米国株暴落から直ちに世界恐慌につながったわけではなくて、1931年頃まで、イギリスへの影響は比較的軽微でありました。 1931年5月から欧州の銀行倒産が始まって、31年9月イギリスは金本位制から離脱しました。 ところが金本位制離脱後には低金利政策が可能になって、1932年から37年までのイギリスは住宅建設ブームになっています。

当時、イギリスの金本位制からの離脱は大きな出来事でしたし、1930年代は総じて不況と言ってよいのですが、一方で住宅建設は好調でした。 光と影が同時に存在した1930年代のイギリスであったのです。

ブルーンバーグのニュースを聞いておりましたら、本日チャリティー アンティーク オークションがあって、出かけていったレポーターの方が銀のシガレットケースを見つけて、欲しいと思ったけれども手が出なかったと言ってました。

写真の品はどこへ出しても引けを取ることのないシガレットケースと思います。 そのレポーターの方にも見せてあげたいと思いながら聞いてました。

余談ながら、ブルーンバーグのニュースというのは、一日二十四時間、太陽とともにマーケットを追って東京、香港、ロンドン、ニューヨークと発信スタジオを移しながら流れていきます。 ロンドン時間になると、上述のようなアンティークの話題なども出てきて、なんかほっとするというか、のんびりしているというか、ちょっと他所とは違う雰囲気なんです。

スターリングシルバー ケース




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