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No. 6964 Peter & William Bateman ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット ティースプーン
長さ 12.3cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 4.3cm、最大幅 2.6cm、ボールの深さ 5.5mm、柄の最大幅 1.1cm、1807年 ロンドン、Peter & William Bateman作、一万一千円

お手入れして写真を撮り直したところ、二百年前のブライトカットの美しさをよくお伝えできる写真が撮れたと思います。 写真二番目をご覧いただくと、彫刻刀の入った角度もお分かりいただけるでしょう。 さらにルーペがあればジグザグ模様の輝き一つひとつが手仕事による彫刻であることが見てとれます。

ジョージアンの中でもジョージ三世治世時代、今からほぼ二百年前の1807年に作られたオールドイングリッシュ パターン スターリングシルバー ティースプーンです。
「19.ベイトマン ファミリーのメーカーズマーク」もご参考いただくと、このティースプーンはアン ベイトマンが引退したすぐ後に作られた品であることが分かります。

百年前の品と言えばかなり古いと思いますが、このティースプーンはその倍の二百年が経とうとしており、アンティークとして大きな魅力になっています。

彫刻は幾何学模様ではありますが、機械で切った彫刻線ではない手仕事なので、よく見るとブライトカットのジグザグが柄の中心線からずれていたり、あるいはブライトカットの幅に広い狭いがあったりして、人の温かみを感じさせます。 以前にブライトカットのティースプーンをお買い上げいただいたお客様から以下のようなコメントをいただきましたが、二世紀前のティースプーンには、現代人を惹きつける何かがあるようにも思います。

『例のティースプーンは勉強の合間に入れるお茶に毎日欠かさず使っています。 不思議なもので、使っていると、以前より輝きが出てきたように思います。 また、親しみというか、スプーンに不思議な親近感までわいてきて、ちょっと危ないのかと思ってしまうほどです....(^^;』

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

写真三番目のホールマークは順に、Peter & William Batemanのメーカーズマーク、ジョージ三世の横顔はデューティーマーク、1807年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントです。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

オールドイングリッシュ パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事を、またジョージ三世については「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」後半部分をご覧ください。