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No. 6604 帝政ロシア時代のシルバーベル
ベル本体の高さ(留め金含まず) 2.2cm、留め具を含む全体の長さ 3.0cm、底面の直径 3.0cm、重さ 10g、1896年から1907年までの帝政ロシア製、一万四千円

ちょっと珍しいアンティークをご紹介しましょう。 写真の品は今から百年ほど前のロシア製シルバーベルで、鳴らしてみるとチリチリンといい感じで、軽妙な音色がします。 

教会における結婚式の鐘(Marriage Bells)を連想させますし、英語には「sound as a bell (きわめて健康で、申し分ない状態で)」という言い回しもあります。 さらには銀であることから、シルバーベルのよい意味合いが好まれて、呼び鈴やアクセサリーとして使われたものと思います。

ベルの上部には多少のへこみもありますが、あまり目立ちませんし、これは百年の時を経たアンティークの風合いの範囲内と判断いたしました。

元々は6583シルバーベルと一緒にあったらしく、国はイギリスとロシアで違うのですが、それぞれのホールマークから推定できる年代がほぼ同じであることに興味を覚えます。

写真二番目でベルの内側に見える楕円形は、写真一番目で正面に見える刻印を裏から見たもので、これがロシア製シルバーを示すスタンダードマークになります。 この刻印はとてもはっきりしていて、ルーペで見てみると、「髪飾りをした女性の左向き横顔マーク」であることが分かります。 このマークの歴史をたどってみますと、帝政ロシア時代の1896年に初めて導入され、ロシア革命が起こって世の中がひっくり返った1917年まで使われました。 ところが、女性の顔の向きが1907年までは左向き、1908年以降は右向きに変わることから、この品の制作年は1896年から1907年までのほぼ十年間に特定出来るというわけなのです。

また、スタンダードマークの反対サイドには、メーカーズマークの刻印もあります。

世界の歴史を見渡してみても、ロシア革命はその社会が根っこから変わった大きな変動の一つでありました。 このシルバーベルがどういった経緯でロンドンに渡ってきたのかを思うと興味が尽きません。

この品が作られた当時の時代背景については、英国アンティーク情報欄にあります 「8.Wartski、英国でも頂点を極めるアンティーク ジュエリー ショップ」の解説記事もご参考まで。