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No. 6601 ヴィクトリアン スターリングシルバー ブローチ
最大直径 3.2cm、最大厚み 3mm強、1890年 バーミンガム、一万四千円

このブローチが作られたのは、ヴィクトリアン後期の1890年であることが、ホールマークを読み取ることから分かります。 当時の英国では「Japanese craze(日本趣味の大流行)」がピークを迎えておりましたので、飛翔する鳥のデザインは、ジャポニスム モチーフブックから採られたものであることが容易に想像できます。

鳥はレリーフ状に浮き出した構造になっています。 周りに配された銀の粒々はグラニュレーションと呼ばれ、ヴィクトリア期に好まれた銀装飾の手法です。 

裏面のホールマークは順に、メーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1890年のデートレター、そしてバーミンガム アセイオフィスのアンカーマークです。

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ヴィクトリアン後期の英国にあってはジャポニスムが新鮮で、大きな顧客需要があり、モチーフブック等の基礎資料も充実していたことが、今日私たちが日本趣味な英国アンティークシルバーにお目見かかれる理由なのです。 百数十年も前に多くのイギリス人たちが日本に大いなる関心を持っていたことには驚かされます。