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No. 6575 ヴィクトリアン スターリングシルバー フィドルパターン ティースプーン
長さ 13.3cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.6cm、最大幅 2.8cm、ボールの深さ 8mm、柄の最大幅 1.6cm、1856年 ロンドン、一本 七千円

今から百五十年ほども前に作られたスターリングシルバー ティースプーンですが、よく磨き上げられていて、大切に使われてきた様子が伺えるヴィクトリアン アンティークです。

このティースプーンを一目見て、まず柄先に彫られた花文字のイニシャルが二つあることに興味を惹かれました。 これまでにイニシャルが彫られたティースプーンはたくさん見てきましたが、それは必ずと言ってよいほど、イニシャルは一つでした。 なぜ二つなのか不思議です、現代ならば夫婦別姓の家庭もあろうかと思いますが、百五十年前に二つの文字を刻んだ理由は何だったのでしょうか。

花文字はなんだかフワフワしていて、なんとも楽しげで、見ていてなごめるので、二つあったらなお楽しい。 ということでポイントになり、一緒にお茶をしたら素敵だろうと思いました。

このスプーンのパターンは柄の形がヴァイオリン(Fiddle)に似ていることから、フィドルパターンと呼ばれます。 もともとは18世紀のフランスで人気だったこのフィドルパターンは、19世紀に入った頃からイギリスでも次第に流行っていきました。 フィドル パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事も併せてご覧ください。

柄の裏面に五つのホールマークがしっかり深く刻印されているのも、このティースプーンのよい特徴でしょう。 刻印は順にメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1856年のデートレター、そしてヴィクトリア女王の横顔はデューティーマークです。

さらにメーカーズマークの上に、「一」のような印が見えますが、これはジャーニーマンズ マーク(Journeymanは徒弟の上で、マスターの下に位置する。)といって、銀工房の中で誰が手掛けた仕事かを示す職人ごとのマークです。 ジャーニーマンズマークの分析はアンティークシルバーの研究の中でも最前線にあって、この工房の中でどの職人さんの作であったかは残念ながら現状ではまだ分かりませんが、こういうことを調べる専門家がいるというのは、いかにも英国的と思います。