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No. 6465 エドワーディアン スターリングシルバー ブローチ
縦の長さ 3.8cm、最大横幅 3.5cm、丸飾りの直径(グラニュレーション含まず) 1.8cm、1904年 バーミンガム、一万九千円

ヴィクトリア時代が終わって数年後の作なので、鳥のモチーフはジャポニスムの影響と見てよいでしょう。 手彫りのエングレービングは素晴らしい出来栄えと思います。 丸飾りの揺らゆら感も好きですが、リボン部分は銀がたっぷり使われたソリッドシルバーで、持った感じもしっかりしたブローチであるところが気に入りました。 花札の「梅に鶯(うぐいす)」を思わせるジャポニスムなデザインで、私はこういう日本趣味な英国アンティークシルバーを見つけると嬉しくなります。

このブローチの場合は、四つのブリティッシュ ホールマークが完備しているのもアンティークとしてのポイントになるでしょう。 裏面の刻印は左から順に、メーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1904年のデートレターです。

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ヴィクトリアン後期の英国にあってはジャポニスムが新鮮で、大きな顧客需要があり、モチーフブック等の基礎資料も充実していたことが、今日私たちが日本趣味な英国アンティークシルバーにお目見かかれる理由なのです。 百数十年も前に多くのイギリス人たちが日本に大いなる関心を持っていたことには驚かされます。