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32. ウェルシュ ボーダーの Weobley村

今回はウェールズとイングランドの国境を挟んでいくつかのアンティークな村に行ってきました。国境といっても、現在のイングランドとウェールズは共にイギリス連合王国の構成部分ですので、検問所のような境界があるわけではありません。

しかしウェールズに入りますと、その地形はイングランドではあまり見かけない山岳地形になってきますし、また、自動車の旅でしたら道路標識にウェールズ語も出てきますので、見慣れないウェールズ語に戸惑いながら、よその土地にやってきた旅気分が高まるのです。

ここはウェールズとなれば、当然のことながら行き先表示もウェールズの地名でいっぱいになるのですが、その地名は「Cwmbach Llechrhyd」とか「Pwllgloyw」という具合で、いったい何と読んでよいのやら、英語の綴りと発音に慣れた者からすると要領を得ません。 

そもそも車の走行中にちょっと見ただけでは地名がすっと頭に入ってこないので、やれあっちだったか、こっちだったかと旅の苦労も増えてきます。

「Welsh(「ウェールズの」、あるいは「ウェールズ人」の意)は異邦人や奴隷を意味する古代英語に由来しており、この一語にもその歴史が凝縮されているわけですが、ここで少しばかりウェールズの歴史を振り返っておきましょう。

ブリトン人などのケルト諸族はイギリスにおける先住民にあたり、昔はイギリス全土で暮らしておりました。ところが大陸から海を渡ってきたアングロ・サクソン諸族との戦いで次第に劣勢となって、7世紀初めまでには西方のウェールズや北方のスコットランドに追われることとなったのです。

ウェールズ人による最後の大反撃は7世紀の前半にありましたが、結局は王様を討ち取られてしまい、以後は完全に守勢となります。

それでもウェールズの天険な地形に守られて、その後も何世紀にもわたってイングランドからの攻撃をかわしてきました。しかし13世紀後半のエドワード一世の時代に、ついにウェールズはイングランドに統合されることとなったのです。


【カーディフに向かう峠から見たウェールズの山並み】



ウェルシュ ボーダーを挟んでイングランド側のWeobleyやPembridge、そしてウェールズ側のNew Radnorなどのアンティークな村々をまわってきましたが、なかでもWeobley村は可愛らしいうえに歴史を感じさせてくれ、また古くてなかなかよろしいB&Bもあって魅力的な村でしたので、少し詳しくご紹介したいと思います。

ウェブリー村には14世紀にまで遡る「Black & White」のアンティークな建物が多く、このあたりでも最も美しい村の一つと言ってよいでしょう。

ウェブリーは中世以来、騎士用の武具生産やエール(英国のビール)の醸造、そして羊毛の取引で富を築いてきた街で、1832年の選挙法改正より昔の時代には国会議員を二人も送り出していた、英国の中でも大きな街の一つでありました。

しかしマーケットタウンとしてのこの街の賑わいは17世紀頃がピークとなりました。19世紀には街の建物のいくつかが取り壊されたり、20世紀には大火でやはり多くの建物を消失したりして、今日ではこじんまりした小さな村になっています。

今では人口千人ほどの村で、往時の繁栄が信じられなくも思うのですが、14世紀に建てられた教会の尖塔が天をさして立派にそびえていますし、そもそも「Black & White」の建物の多くは、その昔にウェブリーが豊かでなかったなら、今に残るはずがないアンティークな建物なのです。


【ウェブリー村のメインストリート】:向こうはRed Lion Innで14世紀の建物、お部屋も見せてもらいましたが、けっこうよかったです。



北のはずれの教会から十分も歩けば、南の城跡まで行けて、そこで村はおしまいです。英国中世史の始まりとなるノルマン・コンケスト(1066年)の直後には、この地にお城が築かれたとのことで、かなりの昔からウェブリーが重要な拠点であったことがうかがい知れます。城跡といっても今では盛り土の跡が残るだけで、羊の群れが木陰で休んでいました。 ここはもう村はずれなので、あとはもう見渡すかぎりのフィールドです。

村の中心にはMarket Placeがあって、今ではトライアングルの敷地にバラが咲くガーデンとなっています。その昔の1261年に国王からマーケット開設の勅許状がおり、それ以来この場所で定期的に市(いち)がたって、ウェブリーの繁栄をもたらしてきたのです。

マーケットプレイスの隣に、ひなには稀な本屋さんがあったので入ってみました。店の奥にさらに部屋があるような、比較的大きな古本屋さんで、ソファーもあってゆったり本が探せます。『Markets & Fairs (Jane Dorner著)』という、英国における市の歴史を、多くの絵入りで解説した本があったので求めました。

店のご主人のお話では、ウェブリー村には読書家が多いそうですが、ご商売の大半はインターネットを通じての世界中のお客様との取引で、稀少本を探したり、送ったりでお忙しいとのこと。今もブラジルの方宛に発送準備をされているところで、「ブラジルからいったいどうしてこの本が欲しいのかな?」とちょっと不思議そうに話されました。

ウェブリー村は気に入ったので、ここで泊まることにしました。パブや宿について村の人に教えてもらって、何軒かまわってみます。まずは今晩泊まれるか訊ねて、OKだったら部屋も見せてもらったらよいでしょう。今回は初めに写真二番目のRed Lion Innに行って部屋もよかったのですが、念のため、もう一軒ぐらいと、写真三番目のThe Gablesを見てみたら、こちらの方がさらにグッドでした。 

この築700年ほどという建物は、元々は中世の時代に豊かな羊毛商の家だったといわれ、「The Gables」とは「切妻造り」のことで、建物の左右にある三角屋根の構造を指します。 ご主人のデービッドさんの何代か前の方が、ウェブリー村でサイダー(りんご酒)醸造に成功されて、村のアンティークな建物をいくつも買い取りました。そしてご両親の代には「The Gables」としてB&Bになったのです。

「Black & White」の壁はなんだか傾いたように曲がっていますし、床もところどころ水平でなくて、なんともアンティークな雰囲気です。デービッドさんのご趣味でグランド ファーザーズ クロックが玄関に置かれ、ラウンジにはタバーン クロックが掛かっていました、他にもアンティーク クロックがいくつかあって素敵です。

このところ村で結婚式がいくつかあって、「The Gables」も宿泊客が多かったようですが、今日は他に誰もなく、私たちで貸切状態でした。お聞きしたかぎりでは、宿泊されるお客様もローカルな要因で、観光の方はあまりないのかなとも思った次第。お部屋やラウンジもコージーでしたし、ボリュームたっぷりなイングリッシュブレックファストもうれしくて、それにデービッドさんも親切な方で、皆様にもお勧めしたいアンティークな宿でした。


【The Gables】:やはり築14世紀で今はB&Bになっています、ここに泊まってご主人のデービッドさんから、このお家や村の歴史を伺ってきました。



翌朝、村を散策している途中で Unicorn Innの前を通りかかったら、パブの親父さんが「昨晩は結局どこにお泊りだったかね?」と話しかけてきました。

彼には村に着いた時、夕食が食べられるパブや宿のことを教えてもらった縁があって、私たちのことを気にしてくれていたのでした。そして、「お客さんだよ。」と誰だかを呼んでくれ、Unicorn Innのオーナーであるルーシーさんに引き会わせてくれました。 

ルーシーさんはシンガポール チャイニーズの女性です。「あれまあ、日本から来たのかい。 あたしゃ四十年ここに住んでるけど、こんな田舎には何もありゃしないよ。何でこんな村に来たのかね? まあ、お茶でもお上がりよ。」と、如何にも田舎でありがちな展開になってきて、お茶をご馳走になり、しばらくお話させてもらうこととなりました。

今はもう亡くなったご主人が四十年ほど前に仕事でシンガポールに出向いた時に、ルーシーさんとロマンスがあって、この村に東洋から花嫁がやって来たこと。小さな村なので、The Gablesのデービッドさんとは親戚筋にあたること。

ご主人が亡くなって相続したUnicorn Innには幽霊が出ること。等々をお聞きしましたが、Unicorn Innのような古い建物には、必ずといっていいほど、お化け話があるのは興味深いことです。

Unicorn Innのゴーストは、幼子の火遊びで火事になりかかっていたところを知らせてくれたとか、ご贔屓のお客さんが滞在中に発作を起こしているのを知らせてくれた為に大事に至らずに済んだとか、不思議ではあるけど怖くない善良なゴーストストーリーなのでした。

このUnicorn Innも「Black & White」ティンバー フレームの建物で、やはり何百年もの歴史があります。1645年には清教徒革命の時のイギリス国王であったチャールズ一世がUnicorn Innに宿泊したという記録も残っているそうです。

【Unicorn Inn】



アンティークな村を旅して、その土地の人情に触れる機会にも恵まれたので、旅のよい思い出になりました。そういえば、ウェールズでは旅の途中で車を停めていると、「どうしましたか? 何かお困りですか?」と声をかけてくれる地元の人達が多かったように思います。

ウェブリー村のポストオフィスでは、おじいさんが荷物を抱えてやって来て、郵便局員さんに「こいつを南アフリカまで送りたいのだが、おいくらかな?」と話しているのが聞こえてきました。どうやら南アフリカ共和国に住んでいるご親戚への荷物との様子。

ルーシーさんは「こんな田舎」と言っていましたが、「こんな田舎」なのに、40年前にはシンガポールから花嫁がやってくるし、村の古本屋さんは世界中とビジネスしているし、さらに加えて、南アフリカなどという、とんでもない遠くにまで親戚が散らばっている人たちが住んでいるとは、とても可愛らしいアンティークな村ではありますが、たんなる田舎と一言では片付けられない、なんとも驚くべきグローバルさだと感じるのでした。


【村のポストオフィス】:雑貨屋さんと郵便局が一緒になったようなもの。


【村の通りで見かけたハンギング バスケット】

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