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アンティーク シルバー スプーン(5)

アンティーク シルバー スプーンの手持ち品はhttp://www.igirisumonya.com/spoon1.htm へ移しました。


No.16450 スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 15.0cm、重さ 31g、ボール部分の長さ 5.4cm、最大幅 3.4cm、柄の最大幅 1.45cm、柄の最大厚み 3mm、1918年 シェフィールド、William Hutton & Sons Ltd作、 SOLD
今から今から九十五年前に作られたスターリングシルバー ジャムスプーンです。 31グラムの持ちはかりですから銀製ジャムスプーンとしてはヘビー級のカテゴリーに入りましょう。 手にしてみると、シルバーハンドルに厚みを感じますし、重厚な銀の質感が特徴といえるアンティークです。 ボール部分のスマートなフォルムや、ゆったりゆるやかに伸びていく柄の様子には品のよさが感じられ、気に入りました。 
スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 16442 透かし柄 スターリングシルバー スプーン SOLD
長さ 14.6cm、重さ 26g、ボール部分の最大幅 3.7cm、透かし柄の最大幅 3.0cm、ねじれ柄の最大厚み 4mm強、1948年 ロンドン、 SOLD

透かしの装飾部分は、最大幅が3センチもあり、見たことがないほど幅広で、そのゴージャスな雰囲気は一級品と言えましょう。 全般に銀が厚めでしっかり出来ていることも好感が持ててグッドです。

イギリスのシルバースプーンとしては、他ではあまり見かけないタイプの品と感じます。 レアもの銀装飾になりましょう。 しかし、ブリティッシュ ホールマークが刻印されておりますので、れっきとした英国製と分かります。

ボール部分の裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 写真三番目で見えるホールマークは順にメーカーズマーク、1948年のデートレター、ロンドン レオパードヘッド、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントになります。

ハンドル部分に見えるねじり構造は、柄の強度をアップするのと同時に、光の反射が綺麗で装飾的な美しさを追求するのに役立っています。 内部まで銀が稠密なソリッドシルバーに、ねじりデザインを効かすのは、かなりの労力であったろうと思います。 

透かし柄 スターリングシルバー スプーン


No. 16427 松ぼっくり スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 12.8cm、重さ 30g、ボール部分の長さ 4.8cm、最大幅 3.75cm、ボールの深さ 9mm、松ぼっくりの直径 7mm、1964年 ロンドン、SOLD

松ぼっくり スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 15751 ヴィクトリアン スターリングシルバー ブライトカット ジャムスプーン with シェル SOLD
長さ 11.5cm、重さ 15g、ボール部分の最大幅 3.2cm、ブライトカット柄の最大幅 1.2cm、柄の最大厚み 2.5mm、1895年 ロンドン、George Maudsley Jackson作(=Josiah Williams & Co.作)、SOLD
小振りな品ながら、ボール部分のシェルデザインとブライトカットの施された柄に特徴を持つヴィクトリアン アンティーク シルバーで、バランスのよさを感じさせる銀のジャムスプーンです。 ボール部分手前に色変わりして黒くなった小さな部分がありますが、それ以外は、まず美しいジャムスプーンと言ってよいでしょう。

難があるといえばある品ですが、百二十年近く前のヴィクトリア時代終わり頃に作られて、21世紀の今日に至るまで大事に扱われて、今でもピカピカに磨かれた銀です。 こういう銀を見ていると、これから先の五十年、百年もまた大切に取り扱ってあげられればと思うのです。
ヴィクトリアン スターリングシルバー ブライトカット ジャムスプーン with シェル


No. 15426 シェル モチーフ スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 13.8cm、重さ 21g、ボール部分の長さ 5.0cm、ボール部分の最大幅 3.0cm、柄の最大幅 1.45cm、1931年 バーミンガム、SOLD
今から八十年前に作られたスターリングシルバーのジャムスプーンです。 ボール部分のフォルムが細身で品のよさを感じさせます。 また、柄元に近いボールサイドのノッチ(notch: 刻み目)構造はイングリッシュ ジャムスプーンの特徴をよく備えています。 

21グラムと持ちはかりがあって、シェルのレリーフには銀の厚みを感じます。 手にしてみると、柄はふっくらした印象で、全体として銀の質感が心地よく伝わってきます。

柄の裏面には四つのブリティッシュホールマークがしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1931年のデートレターになります。

このシェルパターンは、もともとは12世紀にスペインの聖地 St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。
シェル モチーフ スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 15571 チューダーローズ(バラの花)&ドラゴン モチーフ スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 12.1cm、重さ 21g、チューダーローズの直径 1.45cm、最大幅 3.0cm、柄の最大厚み 2.5mm、1933年 シェフィールド、Thomas Bradbury & Sons作、 SOLD

イギリスにはバラ好きな方が多いので、バラの花モチーフは人気があるように思います。 写真の品はチューダーローズが柄先にデザインされたスターリングシルバーのジャムスプーンです。 バターナイフとトングのセットとして求めましたが、この品にはさらにドラゴンの彫刻があります。 作られたのは今から八十年ほど前の1933年であることがデートレターから判読できます。

チューダーローズ(バラの花)&ドラゴン モチーフ スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 15623 エドワーディアン スターリングシルバー&マザーオブパール ジャムスプーン SOLD
長さ 13.2cm、横の長さ 3.6cmcm、重さ 15g、1905年 チェスター アセイオフィス、 SOLD
今から百年と少し前に作られたエドワーディアンのスターリングシルバー ジャムスプーンで、ハンドルはマザーオブ パールです。 差込み式のシルバー柄にマザーオブパールやジェード等のハンドルがついたジャムスプーンはあまり見かけないので、レアものアンティークと言えましょう。

写真一番目で見えるように、ボール部分の先にはブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、チェスター アセイオフィスのシティーマーク、そして1905年のデートレターになります。 下側のメーカーズマークは刻印があまいですが、上側にあるライオンパサント、チェスター シティーマーク、デートレターはしっかり深く刻印されています。

ウェーブパターンのハンドエングレービングも綺麗です。 手彫りのエングレービングの背景部分には、写真で見て、色合いが濃くなっているところがありますが、これは微細な彫刻線で影をつけた細工で、1ミリ間隔に何本もの彫刻線が刻まれている様子が、ルーペでご覧いただくと分かります。 かなり細かなエドワーディアンの限界的な職人技と言えるでしょう。

彫刻デザインの波模様はオーソドックスなヴィクトリアンおよびエドワーディアン アンティークの特徴です。 波模様のウェーブパターンは、Continuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)を象徴するクリスチャンモチーフで、ヴィクトリアンやエドワーディアンの時代に好まれました。

チェスターシルバーというのも希少価値があってポイントとなりましょう。 英国各地のアセイオフィスで検定を受けたスターリングシルバーのおそらく9割以上は、ロンドン、シェフィールド、バーミンガムのいずれかの品で、チェスターは数が少ないのです。 

裏面を見るとチェスター アセイオフィスのシティーマークがくっきりと読み取れます。 チェスターのマークは「Three Wheat Sheaves(三つの麦束)」と呼ばれ、1686年から使われてきたものですが、1962年にチェスターアセイオフィスが閉鎖となったので、今はもうありません。

ウィート シーフ(麦束)とは、豊穣、生産力(Fecundity)、肥沃さ(Fertility)のシンボルで、英国ではラッキーモチーフとして好まれる縁起物です。 そもそも小麦はギリシャ神話に出てくる「農業、豊穣、結婚の女神デーメーテール」を象徴しています。 以前にミントン美術館で見た「ウィート シーフを抱えた少女の絵皿」にとても惹かれ、この少女の顔立ちはデーメーテールを意識したのかしらと、妙に気になったのを覚えていて、それ以来どうも私はこのウィート シーフというモチーフに惹かれるのです。

マザーオブ パールという素材はミルクホワイトの輝きが内側からこぼれてくるようで、光に当たると見えてくるうっすらとした虹色の輝きが綺麗です。 

マザー オブ パールの品をお買い上げいただいたお客様から、次のようなお便りをいただきましたので、ご紹介させていただきます。
『取手の白蝶貝のうっすらとした輝きがとても綺麗です。 まるで、嵐が来る前の空のようだと思いました。 上空を凄い速さで白い雲が流れていく中、時折、空全体がぱあっと明るくなる様子を髣髴とさせます。』

イギリスは一日の中でもお天気の移り変わりが激しくて、さっきまで晴れていたかと思うと、一転してにわかに雲が天を覆うことも多く、お客様からの文章にあったような光景をしばしば目にいたします。 なるほどと、マザーオブパールをとてもよく形容しているように思いました。
エドワーディアン スターリングシルバー&マザーオブパール ジャムスプーン


No. 15619 桜の花 シルバースプーン SOLD
長さ 10.5cm、ボール部分の直径 2.7cm、ボール部分の深さ 5mm、重さ 5g、SOLD

桜の花びらが可愛らしい銀のスプーンです。 薬味用に使ってみたいと思って求めました。 写真二番目に見えるように、ボール裏面の先の方に、素材を示す「SILVER」の刻印があります。

桜の花 シルバースプーン


No. 15582 エドワーディアン Forget-me-not (勿忘草) フラワーエングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 11.8cm、重さ 15g、ボール部分最大幅 2.75cm、柄の最大幅 1.05cm、1903年 シェフィールド、 SOLD

もともとは15582 ジャムスプーンと、15572 ピクルスフォークと、15574 バターナイフで、三本セットを構成しておりました。 柄先のイニシャルを入れるところの彫刻はハートシェイプで同じですし、すべて同一メーカーによる1903年の作となっています。 

セットでお求めいただける場合には、三本セットで二万八千円とさせていただきます。

今から百年以上前、エドワーディアンの時代が始まった頃に作られたスターリングシルバー ジャムスプーンです。 ボールの柄元がカットされたタイプのジャムスプーンは、大陸ヨーロッパ諸国ではあまり見かけないので、英国風なジャムスプーンと言ってよいでしょう。

ボール部分のエングレービングは彫刻線の強弱がよく効いて美しい仕上がりになっています。 ブライトカット様の深めな彫りは光を美しく反射します。 また微細な直線カットを重ねた彫りやジグザグカットの配列など、様々な技巧が施されていて、アンティークハント用のルーペが一本あれば楽しみも増すと思います。 

柄先にはイニシャルを入れるところがあります、ハートシェイプで可愛らしいと思います。 イニシャルは彫られていないので、新しいオーナーの方がご自分のイニシャルを入れることも出来ましょう。

写真二番目に見えるブリティッシュ ホールマークは順にシェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1903年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。

ボール部分と柄先に近いあたりに、繊細な小花の彫刻が二つ施してあります、花の様子からみてForget-me-not (勿忘草) でありましょう。 

わすれな草はヨーロッパを原産とする、薄青色の小花が可憐な一年草で、信実とか友愛のシンボルとされます。 花言葉は「Forget-me-not」そのもので、「忘れないで」です。

「Forget-me-not」はイギリスのフィールドでよく見られる花で、昔から咳止めなどの薬草としても使われてきましたので、人気があって役に立つ花です。 イギリスの勿忘草は、細かく言うと四つほど種類があります。 野原で一般的なのは「フィールド勿忘草」、森の中で見られる「ウッド勿忘草」はやや大型です。 イエローからブルーに色が変わっていくのが「チェインジング勿忘草」で、ふさが特徴の「タフティド勿忘草」もあります。

日本語で「忘れな草」を「勿忘草」と書くと、漢文調な雰囲気で古っぽく見えて、万葉集や古今和歌集にも出てきそうな日本古来の野草のようにも感じます。 実際には「Forget-me-not」が日本にやってきたのは、百年とちょっと前のことで、「勿忘草」or「わすれな草」と訳語の日本名が付けられたのは、日露戦争があった1905年のことでした。 写真のジャムスプーンが作られたのは1903年ですので、ちょうどこの頃に、日本語の「勿忘草」or「わすれな草」が誕生したとわけです。

それでは、イギリスではどうかと言うと、これまた日本と同じ事情で、実は「Forget-me-not」という名前は舶来品の訳語でありました。 「Forget-me-not」という花の名は、元々は中世ドイツの伝説が起源で、ドイツ語の「忘れないで!」というのが、根っこになって世界中に広がっていったのです。 この伝説をもとにしたポエムをイギリス人のサミュエル・コルリッジが書いたのが1802年でありました。 そしてこれが英語の中に「Forget-me-not」が受容されるきっかけになったのです。

ドイツ起源の「勿忘草」がデンマークやスウェーデンに伝わり、そしてフランスに伝わり、イギリスに入ってきたのが1802年、それから百年ほどして日本へ、言葉の伝播の歴史も興味深く思います。
エドワーディアン Forget-me-not (勿忘草) フラワーエングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 15450 ベル & フラワー ピアストワーク シルバー スプーン SOLD
長さ 15.1p、重さ 47g、ボール部分の長さ 5.2cm、ボールの深さ 0.8cm、透かし柄の最大幅 3.2cm、柄の最大厚み 2mm、デンマーク製、1918年 コペンハーゲン、 SOLD
今から九十年以上前の1918年に、デンマークのコペンハーゲンで作られたシルバー スプーンになります。 デザインとモチーフのよさに加えて、銀が厚めでしっかり出来ていて気に入りました。 透かし柄に横幅があって、ゴージャス感がすごいところが一番の特徴になりましょう。 手にしてみると、ずっしりで、銀の質感もバッチリです。 

写真三番目に見えるように、ボール部分の裏面にはメーカーズマークと、デンマーク製シルバーのステートマークである「コペンハーゲンのスリータワー」が刻印されています。

ベルのモチーフは教会における結婚式の鐘(Marriage Bells)を連想させますし、英語には「sound as a bell (きわめて健康で、申し分ない状態で)」という言い回しもあります。 さらには純銀素材であることから、シルバーベルのよい意味合いが好まれて、縁起ものシルバーウェアとして作られたものと思います。



No. 15148 エドワーディアン スターリングシルバー  ジャムスプーン SOLD
長さ 14.4cm、重さ 21g、最大横幅 3.65cm、柄の最大幅 1.35cm、柄の最大厚み 2mm弱、1909年 シェフィールド、SOLD
手彫りのエングレービングが美しく、ボール部分の横幅が広いこともあって、豪華な雰囲気のエドワーディアン アンティーク ジャムスプーンです。 写真二番目にボール部分の拡大がありますが、なかなかに繊細な彫刻が施されているのが、お分かりいただけると思います。

ブリティッシュ ホールマークがどれもしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 写真三番目に見える裏面のホールマークは順に、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1909年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 この美しいシルバーウェアが作られたのは1909年ですから、正式な‘アンティーク’に晴れて昇格したばかりの品ということになります。 

一言に百年といっても、やはりそれだけの時の経過は大変なことと思います。 ちなみにこの頃の歴史年表を眺めてみますと、1910年:エジソンが電球を発明とか、1912年:タイタニック号氷山に衝突して沈没とか、出てきます。

このアンティークが作られた時代というのは、電灯もなかった時代なわけで、こうしたアンティークを手にしながら、その昔の時代に思いを馳せるのはアンティーク好きの楽しみであろうと思うのです。

ちなみに、写真のアンティークが作られた1909年は明治四十二年にあたっており、この年の六月から漱石の『それから』が朝日新聞に連載されておりました。 前年には『三四郎』、そして翌年には『門』が連載になっています。 夏目漱石 三部作の時代は、このエドワーディアン アンティークが作られて使われた時代とほぼ重なっております。

英国におけるアンティークという言葉の厳密な使い方については、英国アンティーク情報欄にあります「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。
エドワーディアン スターリングシルバー  ジャムスプーン


No. 16564 「飛翔する鳥」&「蝶」 ジャポニスム モチーフ シルバー サービング スプーン SOLD
長さ 15.6p、重さ 23g、ボール部分の長さ 5.5cm、最大横幅 4.25cm、ボールの深さ 1.0cm、デンマーク製、1903年 コペンハーゲン アセイオフィス、 SOLD
今から百年以上前の1900年代初めに、デンマークのコペンハーゲンで作られたシルバー サービング スプーンです。 柄の裏面にはメーカーズマークや、デンマーク製シルバーを示すステートマークである「コペンハーゲンのスリータワー」が刻印されています。
「飛翔する鳥」&「蝶」 ジャポニスム モチーフ シルバー サービング スプーン


No.16751 ヴィクトリアン スターリングシルバー スプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 12.6cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.2cm、ボール部分最大幅 2.65cm、透かし柄の最大幅 1.55cm、1891年 シェフィールド、Henry Holland作、SOLD
いくつかあったうちの、最後の一本になります。



No.16807 アール・ヌーボー エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 12.9cm、重さ 18g、ボール部分最大幅 3.1cm、柄の最大幅 1.25cm、1902年 シェフィールド、Cooper Brothers & Son作、アール・ヌーボー デザイン登録は1884年、SOLD
柄に施されたフラワーと流麗な植物デザインのレリーフが美しく、銀の輝きに好感が持てるエドワーディアン アンティークです。 作られたのは今から百年以上前の1902年で、エドワーディアン初期になりますが、デザイン登録されたのは1884年で、ヴィクトリアンの終り頃となっています。 ボール部分がフラットな平板タイプは珍しく、柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。
アール・ヌーボー エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 16070 三つ葉のクローバー ピアストワーク シルバープレート ジャムスプーン SOLD
長さ 13.7cm、重さ 21g、ボール部分の最大横幅 3.7cm、柄の最大厚み 3mm、透かし柄の最大幅 2.55cm、SOLD
シルバープレートの品ですが、時間をかけて作られた素晴らしい出来栄えで、美しいなかにも重厚な雰囲気を持った、いかにも英国風なアンティークと感じます。 柄先に向かって三つ葉のクローバーのデザインで、モチーフのよさに惹かれて求めました。  

糸鋸を引いた跡も繊細で、ルーペで詳細に調べてみると、細工のよい品であることが分かります。 手仕事で糸鋸を引いていくのですから、職人さんの優れた技術と多くの時間がかかります。 現代のシルバースミスの方からお聞きしたのですが、当時の手間をかけた丁寧な仕事は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや出来ないとのこと。 

そもそもこれだけの仕事が出来る職人さんは、現代では探しても見つからないわけで、このジャムスプーンのピアストワークを眺めているだけでもアンティークな気分に浸れます。

英語には「live in the clover (安楽に暮らす)」という言い回しがあり、こうした三つ葉のクローバーのよい意味合いが、このジャムスプーンには込められています。 クローバーと安楽の繋がりについて、牧草を刈り入れしていたファーマーの方から教えていただいたことがあるので、ご紹介しておきましょう。 

牧草など植物の成長には土中の窒素分が必要ですが、クローバーは進化した植物で、大気中の窒素を直接に取り込んで養分に出来るのだそうです、そのため、クローバーのある畑は肥沃になります。 また家畜の飼料としてもクローバーの繊維質とプロテインが動物たちの成長に欠かせないのだそうです。 と言うわけで、クローバーに恵まれた農場は栄え、安楽に暮らしてゆけるということでした。

シルバープレートウェアの見方については、アンティーク情報欄 「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」の解説記事もご参考ください。
三つ葉のクローバー ピアストワーク シルバープレート ジャムスプーン


No.16797 アトキン ブラザース シルバープレート ジャムスプーン SOLD
長さ 15.5cm、重さ 31g、ボール部分の最大横幅 3.8cm、柄の最大厚み 3mm、Atkin Brothers Ltd作、SOLD
柄先からボール部分に至るゴージャスな装飾に惹かれます。 ボールサイドの切れ込みは、ノッチ構造と呼ばれますが、このあたりは典型的な英国風です。

ボール部分がフラットな構造のジャムスプーンは、英国アンティーク ジャムスプーンとしては少ないタイプになることから、こうした平板タイプのジャムスプーンを特に集めるコレクターの方があります。

柄先に見えるシェルパターンは、12世紀にスペインの聖地 St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。

シルバープレートの品ですが、時間をかけて作られた素晴らしい出来栄えで、ゴージャスで美しいなかにも重厚な雰囲気を持った、いかにも英国風なアンティークと感じます。 

それから、このアンティーク ジャムスプーンの大きなポイントは、シルバープレートの品でありながら、メーカーズマークの判読および識別が可能で、ヴィクトリアンの有名メーカーの一つである「Atkin Brothers Ltd」の作であることが分かる点にあります。 柄の裏面には「HA」「EA」「FA」の三つの刻印が並んでいて、これはAtkin三兄弟のHarry Atkin、Edward Atkin、そして Frank Atkinのイニシャルを合わせたものになっています。

英国の多くのシルバースミスはヴィクトリア期の19世紀後半創業という会社が多いのですが、このジャムスプーンを作ったAtkin Brothers Ltd.は、その創業が1750年という老舗です。 三兄弟が父親のヘンリー・アトキンから銀工房を譲られたのが1853年のことで、それ以降は「Atkin Brothers」として工房が運営されてきました。 また第一次大戦を経て英国の勢いがピークを過ぎるとともに消えていったシルバースミスが多い中にあって、Atkin Brothers Ltdの勢いは衰えませんでした。 1930年代にはこの会社は当代一流の職人を抱える会社として名を馳せていました。 

1938年の英国産業展覧会ではAtkin Brothersご自慢の職人、親方衆がクイーンメアリーに謁見を許されお褒めの言葉を授かったとの記録が残っています。 親方衆の中には、Atkin Brothers勤続63年のハリーデニスや勤続62年のジョンストークスが含まれていました。 そして当時31人いた親方衆の平均勤続年数は47年4ヶ月だったそうです。 こうした親方たちの手仕事に支えられた品物のクォーリティは相当高かったと考えられます。
アトキン ブラザース シルバープレート ジャムスプーン


No.16788 ヴィクトリアン スターリングシルバー スプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 12.6cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.2cm、ボール部分最大幅 2.65cm、透かし柄の最大幅 1.55cm、1891年 シェフィールド、Henry Holland作、SOLD

ヴィクトリアン スターリングシルバー スプーン with ピアストワーク


No.16787 ヴィクトリアン スターリングシルバー スプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 12.6cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.2cm、ボール部分最大幅 2.65cm、透かし柄の最大幅 1.55cm、1891年 シェフィールド、Henry Holland作、SOLD




No. 16049 花びらデザイン ブラス ジャムスプーン SOLD
長さ 13.2cm、重さ 20g、最大幅 3.8cm、ヴィクトリアン後期の英国製、SOLD

素材はブラス製で、花びらデザインの彫刻がとても繊細なジャムスプーンです。

品のよさを感じさせてくれるヴィクトリアン アンティークと感じます。

花びらデザイン ブラス ジャムスプーン


No. 15040 フランシス・ヒギンス ヴィクトリアン スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 13.4cm、重さ 34g、ボール部分最大幅 3.5cm、柄の最大幅 1.7cm、柄の最大厚み 4mm、1886年 ロンドン、Francis Higgins作、SOLD
酒瓶とジョッキを手にして陽気に踊る姿が印象的なアンティークです。 柄先に向かってもゴージャスなヴィクトリアーナですが、銀がたっぷりで重たいこともポイントになっております。 有名シルバースミスであるフランシス・ヒギンスは独自のパターンブックを持っておりますが、バカナリアン パターンの派生系として登録されているデザインなのだろうと推測します。

ボール裏面に刻印されているブリティッシュ ホールマークは順に、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1886年のデートレター、ヴィクトリア女王の横顔マーク、そして「Francis Higgins」のメーカーズマークです。 メーカーズマークのハート形は片側部分がややあまい刻印になっておりますが、判読に問題はありません。

シルバーウェアについての参考書を紐解くと、ヴィクトリア時代の最重要なシルバースミスとして、フランシス・ヒギンスとジョージ・アダムス(= Chawner & Co.)が引き合いに出されることが多いようです。 このジャムスプーンを作ったのはその一つである「Francis Higgins」になります。

メーカーズマークはハート型に「FH」が入ったモダンな印象の刻印なのですが、当時のホールマークとしては珍しい形で、そんなことからも一度見たら忘れられないマークです。 Francis Higginsの名前は、やはりコレクター需要が高いのは事実なので、メーカーにこだわりのない方も、シルバーのお勉強がてら、「ハートにFH」=「Francis Higgins」と覚えておかれてもよいでしょう。

また、デートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドン アセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておくと便利でしょう。

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、「英国アンティーク情報」欄の「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。
フランシス・ヒギンス ヴィクトリアン スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 14987 バラの花 レリーフ スターリングシルバー クリスニングスプーン SOLD
長さ 13.5cm、最大幅 2.8cm、重さ 24g、ボール部分の深さ 8mm、柄の最大幅 1.35cm、柄の厚み 2mm強、1957年 シェフィールド、James Dixon & Son作、SOLD
バラの花 レリーフ スターリングシルバー クリスニングスプーン


No. 15062 エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 13.3cm、重さ 13g、ボール部分の最大幅 2.8cm、クルッとした柄の最大幅 1.65cm、1902年 バーミンガム、William Hutton & Sons Ltd作、SOLD
エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 5438 エドワーディアン スターリングシルバー シュガーシフター スプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 11.2cm、重さ 18g、ボール直径 3.95cm、ボール部分の深さ 0.7cm、柄の最大幅 1.35cm、1905年 シェフィールド、Atkin Brothers Silversmith Ltd.作、SOLD
今から百年と少し前のエドワーディアンの時代に作られたスターリングシルバー シュガー シフタースプーンです。 シフタースプーンには華奢な感じの品が多いものですが、写真のシフターはボール部分の銀に厚みがあってしっかりした作りとなっており、、それが18グラムという持ちはかりにも反映されているように思います。 

一般的なシフターと比べてボール部分がフラットなタイプであることも珍しいでしょう。 透かしは手仕事で、糸鋸を引いたギザギザ跡が残っています。 マグニファイイング グラスで詳細に調べてみると、糸鋸を引いた跡も繊細で、細工のよい品であることが分かります。

写真二番目にピアストワークの影絵が綺麗だったので撮ってみました。 あるいはまた、暗いところで懐中電灯を使って壁に大きな影を映し出すと子供が喜びますが、大人でも楽しいものだと思うのです。 アンティークシルバーのちょっと変わった楽しみ方をご参考まで。

シルバースミスは一流どころのAtkin Brothers Silversmith Ltd.です。 柄の裏面にはメーカーズマーク、1905年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィス王冠マークの四つのブリティッシュ ホールマークが深く刻印されています。 

英国の多くのシルバースミスはヴィクトリア期の19世紀後半創業という会社が多いのですが、このシフターを作ったAtkin Brothers Ltd.はその創業が1750年という老舗です。 

また第一次大戦を経て英国の勢いがピークを過ぎるとともに消えていったシルバースミスが多い中にあって、Atkin Brothers Ltdの勢いは衰えませんでした。 1930年代にはこの会社は当代一流の職人を抱える会社として名を馳せていました。 

1938年の英国産業展覧会ではAtkin Brothersご自慢の職人、親方衆がクイーンメアリーに謁見を許されお褒めの言葉を授かったとの記録が残っています。 親方衆の中には、Atkin Brothers勤続63年のハリーデニスや勤続62年のジョンストークスが含まれていました。 そして当時31人いた親方衆の平均勤続年数は47年4ヶ月だったそうです。 こうした親方たちの手仕事に支えられたシルバーウェアのクォーリティは相当高かったと考えられます。

徒弟制度の善し悪しは別として、当時のAtkin Brothersのような職人集団は、今日の世の中では望むべくもありません。 あるシルバースミスの方からお話を伺ったのですが、人件費の高騰した今日のイギリスにあっては、昔のシルバースミスと同じ仕事は到底出来ないとおっしゃっていました。

こういう綺麗な小品と出会えると、つい求めてしまうのですが、実用としてのシフタースプーンはなかなか出番がないのも事実です。 また、コレクターの立場から言うと、シフタースプーンは人前に出せる機会が少ないのも残念です。(変な話ですが、やはりこれはコレクターの心理ではないでしょうか?) 美しい品なので観賞用に持っているだけでも楽しいのですが、出番があればもっと嬉しい。 どなたかアイディアがあったらご教示ください、とお願いしたら以下のアドバイスをいただきましたので、ご紹介させていただきます。

(追記1)
『さて、シフタースプーンについてなのですが、和食好きの我が家の例は邪道ですが、一応、お話しします。
本当に普段の食卓で、薬味をすくうのに使っています。さらしネギなどです。
その場合、古伊万里やアンティークバカラのグラスなどに薬味を入れたりします。
自家製のふりかけやジャコピーマンのようなものをとりわけるのにも使ったりします。(ロマンがありません〜)
もう少しましな使い方としては、黒豆や各種の煮豆をすくうくらいでしょうか。
それから、小さなヴィクトリア後期以降のものではできないのですが
比較的大型の、縁の丸いタイプでしたら湯豆腐や水餃子をすくうのに使えます。
フランス製でよくある、透かしの凝った20センチ以上のものです。
これはちょっと素っ頓狂な使い方と思っていましたら、某骨董商の方も湯豆腐に使っておられるということで、自信を持ちました。
形状によっては、ティーストレーナーのような使い方もできるかもしれません。
凝った茶漉しはなかなか見つけにくいので、シフタースプーンで代用すれば素敵だと思います。』
シフタースプーンは小振りですので、湯豆腐というわけには参りませんが、和食で薬味、さらしネギなら出番も多いし楽しいなと思いました。

(追記2)
また、他のお客様からのアドバイスもご紹介します。
『こちらのサイズのシフタースプーンでは、湯豆腐用としては無理かも とおっしゃっていますが、我が家では夏に冷や奴を頂くときに(特にパーティの時などは)お豆腐を一口角にきってボウルにいれておき、それぞれですくって召し上がっていただいています。
これくらいの大きさでしたら、大丈夫ではないでしょうか。結構好評ですよ〜。』



No. 15147 スターリングシルバー ジャムスプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 13.7cm、重さ 20g、最大幅 3.3cm、柄の最大幅 1.25cm、柄の最大厚み 2mm、1930年 ロンドン アセイオフィス、Robert Pringle & Son作、SOLD
透かし細工の綺麗なスターリングシルバー ジャムスプーンです。 ボール部分はシンプルなタイプですが、ハンドル部分の装飾とあわせて、バランスのよい出来栄えと思います。 ピアストワークは手仕事で、糸鋸を引いたギザギザ跡が残っています。 糸鋸を使って装飾を施していく労働集約的な作業であることから、職人さんの優れた技術と多くの時間をかけて作られたアンティークといってよいでしょう。 

現代のシルバースミスの方からお聞きしたことがありますが、作業にかなりの時間を要するこうした透かし細工は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや出来ないとのことでした。 この品が作られたのは今から八十年前の1930年になりますが、この辺りが古きよき銀細工の時代の終り頃にあたっているということでしょう。

写真二番目にある裏面のホールマークは順に「Robert Pringle & Son」のメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドン レオパードヘッド、そして1930年のデートレターになります。

シルバースミスの「Robert Pringle & Son」が創業したのはヴィクトリア時代が始まる二年前で、ジョージアンの時代の1835年のことです。 イギリスの銀工房はヴィクトリア時代に始まったものが多い中にあって、「Robert Pringle & Son」は老舗の一つと言ってよいでしょう。

それでは、写真の品が作られた当時のイギリスはどんなであったのか。 先日、お客様との遣り取りの中で、調べてみる機会がありました。

1929年に始まった世界恐慌といいますと、私たちは世界史をアメリカ中心に学んできましたので、米国株暴落から世界中一緒に奈落の底に落ちて行ったかのように思ってしまいがちです。 

実際のところは、1929年10月の米国株暴落から直ちに世界恐慌につながったわけではなくて、1931年頃まで、イギリスへの影響は比較的軽微でありました。 1931年5月から欧州の銀行倒産が始まって、31年9月イギリスは金本位制から離脱しました。 ところが金本位制離脱後には低金利政策が可能になって、1932年から37年までのイギリスは住宅建設ブームになっています。

当時、イギリスの金本位制からの離脱は大きな出来事でしたし、1930年代は総じて不況と言ってよいのですが、一方で住宅建設は好調でした。 光と影が同時に存在した1930年代のイギリスであったのです。
スターリングシルバー ジャムスプーン with ピアストワーク


No. 14832 エドワーディアン ファーン(Fern)パターン エングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 13.7cm、重さ 17g、ボール部分の最大横幅 3.5cm、柄の最大幅 1.25cm、1907年 シェフィールド、James Dixon & Son作、 SOLD
ボール部分にノッチ(切れ込み)構造は、オーソドックスなイングリッシュ ジャムスプーンのフォルムといえましょう。 ファーン(Fern)パターンは手彫りの彫刻で、華美に過ぎず、品のよさを感じさせます。 モチーフから判断しますと、クリスティングのお祝い品として作られたものかも知れません。

ブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ボール裏面のホールマークは順に、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1907年のデートレター、そしてJames Dixon & Sonのメーカーズマークです。

James Dixon & Son は1806年創業のシルバースミスで、シェフィールドで創業後、順調に発展し、1873年にはロンドンに進出しました。 1900年頃にはロンドンのお店は5つに増えていました、また1912年にはオーストラリアのシドニーにも支店を開いています。 1851年のロンドン万国博覧会には多くの作品を出品したとの記録が残っており、その後20世紀初頭にかけて、海外での展覧会にも出展し、パリ、メルボルン、ミラノ等で名声を博しました。

家族的な経営で、職人さんの中には、親、子、孫…と5世代にもわたり、ここで銀製品を作り続けた方もいらしたようです。 このジャムスプーンは今から百年ほど前の1907年作ですので、James Dixon & Sonがロンドン進出に成功し、ポッシュなシルバースミスとして人気も出て、一番勢いがあった頃の作品と言えそうです。

ファーン(Fern)パターンとは、シダ模様を指します。 19世紀のイギリスにおいては、稠密かつ精巧なナチュラルデザインとしてファーンが好まれ、コンサバトリーで育てる人気の植物となっていました。 ウォード箱を使ってさまざまな種類のファーンを収集することも広く行われておりました。 そうしたことが背景にあって、ファーンパターンはヴィクトリアン装飾の中でも特に人気の高いモチーフのひとつとなったのでした。 ヴィクトリアンのフラワーコード(花言葉)によれば、FernにはFascination(魅惑)、Magic(不思議な力)、Sincerity(誠意)といったコードがあてられています。

もともとは王宮庭園であったキューガーデンが、王立植物園として生まれ変わったのはヴィクトリア時代の初め頃でありました。 植物研究施設としてのキューガーデンが、ヴィクトリアンの人たちの植物好みを引っ張ったと言うこともあるでしょう。

写真のシルバーアンティークに施された植物文様には、百年ほど前の人たちの植物好きが色濃くは反映されているわけです。

アンティークを手にしていると、その品が作られた当時のイギリスとか、その頃の日本はどんなだったろうとか、あれこれ背景を考えてみたくなる性分です。 写真の銀スプーンが作られたのは、日本で言えば明治四十年のことで、当時の日本は日露戦争が終わって間もない頃でありました。 

夏目漱石の『三四郎』は、明治四十年夏の終りから翌年初までの東京を舞台にして話が進んでいきますので、まさに写真のアンティークが作られた頃のお話ということになります。

二年にわたるロンドン留学経験から当時のイギリスをよく知り、日本の文明開化について考えた漱石は、『三四郎』において広田先生に「いくら日露戦争に勝って一等国になってもだめですね。」と言わせています。 そして三四郎の感想は、「日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。」という時代背景なのです。

私には幕末の黒船来航から明治維新、日清&日露戦争を経て先進国の仲間入りを果たした日本のほぼ六十年間というのは、イギリスが大発展を遂げたヴィクトリア時代の六十年間に重なって見えます。 

明治とともに生きた漱石の作品を深く読むことで、時代の高揚に触れ、明治の精神を知ることを通して、百年ほど前のイギリスを振り返ってみる、これがイギリス人ではなく日本人である私の英国歴史の観察方法の一つです。

英国アンティーク情報欄にあります 「14. Still Victorian (百年ほど前のイギリスはどんな様子であったのか?)」の解説記事もご参考まで。
エドワーディアン ファーン(Fern)パターン エングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン


No. 15683 アイビー モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー クリスニング スプーン SOLD
長さ 14.3cm、重さ 28g、最大幅 3.15cm、ボールの深さ 0.9cm、柄の最大幅 1.4cm、1899年 シェフィールド、James Deakin & Sons Ltd作、SOLD
今から百十年以上前に作られたスターリングシルバーのクリスニング スプーンです。 ヴィクトリア時代の終わり頃、19世紀末に作られており、かなり古いアンティーク シルバーであることは魅力となりましょう。 

アイビー モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー クリスニング スプーン


No. 14799 エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン SOLD
長さ 13.3cm、重さ 18g、最大横幅 3.3cm、柄の最大幅 1.35cm、柄の最大厚み 3mm、1905年 バーミンガム、 SOLD
今から百年以上前のエドワーディアンの時代に作られたスターリングシルバーのジャムスプーンです。 ボールに見える彫刻部分とプレーン部分の境目には、ブライトカット様の彫りで境界ラインが装飾されていて、ねじれ柄の輝きとともに、光の反射が綺麗です。

繊細なハンドエングレービングのデザインは植物模様とウェーブパターン(波模様)の融合です。 波模様モチーフにはContinuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフになります。

波模様の背景部分には、色合いが濃いめになっていて影がかかったように見えますが、このシェードはとても細やかな手彫りの彫刻を縦横に巡らせて影をつけたもので、ルーペで見ていただくと当時の限界的な手仕事の素晴らしさも納得いただけると思います。 そして、柄元に向かうねじれ柄は装飾的な美しさを追求するとともに、スプーンの強度をアップするのにも役立っている装飾構造です。

写真三番目に見えるように、柄の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1905年のデートレターになります。

1905年といえば五月には日本海海戦があって、そして日露戦争が終った年にあたり、このころ夏目漱石は『我輩は猫である』を『ホトトギス』に連載中で、翌年には『坊っちゃん』や『草枕』が発表された時代と思えば、ずいぶん昔であることが実感できます。 

世界史のビックイベントとしても、バルト海、北海、大西洋、喜望峰を経て日本へ向かうロシアのバルチック艦隊の動きが注視され、当時のイギリスでは日本海海戦の行方が大変な興味を持って見守られていたとの記録が残っております。

このジャムスプーンが作られた前年の秋からロシアのバルチック艦隊は日本へ向けて航行中でした。 そして1904年10月にはイギリス沖合いの漁場ドッガーバンクで、漁船を日本の水雷艇と誤認したバルチック艦隊が、英国漁船砲撃事件を引き起こして、英国世論が激高する事態となっています。 

日本に向かって戦争に行くロシア艦隊が、途中で英国漁船を何百発もの砲弾で打ち払って、間違いと分かった後には救助もせずに通り過ぎてしまったのですから、誰だって怒るだろうと思います。 

当時の日本とイギリスは日英同盟を結んでおりましたが、ドッガーバンク事件を契機にイギリス世論もおおいに日本に味方しました。 そしてイギリス政府によるバルチック艦隊の航海妨害などナイスアシストもあって、日本海海戦に向けて有利な展開となったのは幸いでした。 世界が固唾を呑んで1905年5月の海戦の行方を見守っていた、このアンティークはそんな時代の品なのです。
エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン


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