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No. 7988 ヴィクトリアン スターリングシルバー ケーキナイフ with マザーオブパール ハンドル
長さ 23.8cm、重さ 75g、ブレード最大幅 2.1cm、ブレード背の最大厚み 2mm、1896年 シェフィールド、二万四千円

今から百年以上前のヴィクトリアン後期に作られたスターリングシルバー ケーキナイフです。 色艶のよいマザー オブ パール ハンドルは最大厚みが1センチほどあって、内側からミルクホワイトの輝きがこぼれてくる感じで、光に当たるとうっすらと虹色の輝きが出るのがとても綺麗です。

ブレードに彫られた手彫りのエングレービングは、輪郭は深めの彫りで、それとは対照的に小花の内部には細やかなタッチの彫りも施されていて、美しい仕上がりになっています。 四つのブリティッシュホールマークが、これまた深くくっきりと刻印されているのも好印象でしょう。 写真のマークは左から、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1896年のデートレター、そしてメーカーズマークです。

ケーキナイフですので、可愛らしいデザインではありますが、75グラムと持ちはかりがあって重たくて、ギザギザしたブレード背の最大厚みも2ミリほどあり、英国風なしっかりタイプのナイフでもあります。 

ブレードの背はギザギザと鋸(のこぎり)状になっています。 ケーキをサーブするのに、なぜ鋸かとも思いますが、イギリスのケーキは表面を砂糖の塊のようなアイシングで、こてこてに固めたケーキが多く、実際のところ切り分けには鋸が必要なのです。

このアイシングたっぷりのイギリス風ケーキは本当に美味しくないのでびっくりします、日本でこんなケーキが出てきたら、誰もがきっと絶句することでしょう。 しっとりとした普通のケーキとは似ても似つかぬ、水気もなくぱさぱさしたスポンジに砂糖の塊が数ミリの厚さで塗りつけてある食べ物です。

ところがもっと驚くのは、イギリスの子供たちは日本やフランス風のしっとりと美味しいケーキよりも、ぱさぱさごわごわのこうしたケーキがお気に入りなことです。
うちの娘の友達が集まるパーティーで、私が手作りケーキを作ってもあまり喜ばれません。近くのスーパーマーケットで買ってきたようなアイシングたっぷりのケーキがいいのです。

このアンティーク ケーキナイフのギザギザした鋸を見ると、百年以上前のヴィクトリアン ケーキもきっと凄まじいものだったのだろうと思います。 百年以上の月日をかけて、ブリティッシュ トラディショナル ケーキの伝統がイギリスの子供たちにしっかり根付いているのです。

アンティークをきっかけに、その国の文化や伝統について考えてみるのは楽しいことだと思います。 英国アンティーク情報欄の「27.ホールマーク漏れと英国人気質」解説記事もついでにご覧ください。 また、このケーキナイフが作られた頃の時代背景については、「14.Still Victorian」もご参考まで。