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No. 7607 クィーン ヴィクトリア メダル
直径 3.9cm、厚さ 3mm、重さ 18g、1899年 Spink & Son作、英国製、一万円

既にSOLDの品ですが、重要なメーカー情報の見落としに気が付きましたので、追加でご案内させていただきます。

遠いヴィクトリアンの暮らしが垣間見れる、ちょっと面白いアンティークが手に入ったのでご紹介しましょう。 ヴィクトリア女王のレリーフが厚めに浮き出していて、王冠や月桂樹の葉、そして女王の表情がしっかりとよく出来た品です。大きさの割には軽めなので、素材はシルバーではないでしょう。この品はヴィクトリア時代も終わり頃の1899年に、学校へ時間通りにしっかり通ったことに対するアウォードとして I. Roy氏宛に贈られた品であることが裏面の記述から分かります。
ヴィクトリア時代については「英国アンティーク情報」の「14.Still Victorian」の解説記事もご覧ください。

最初に説明記事を書いた時には、うっかり見落としてしまったのですが、裏面のメダル下部にメーカー名が『SPINK & SON、 LONDON』とあってびっくりしました。 スピンクは1666年創業の世界でもっとも古い歴史を持つと言われる古美術商で、専門は「Medal and order manufacturers, jewellers and silversmiths, antique and fine art dealers.」という、英国のエスタブリッシュメントを顧客とするたいへんな老舗なのです。

どんなにたいへんかと言うと、メイフェアのボンドストリート辺りの高級アンティーク店であれば、確かに高級ではありますが、観光客も含めて買い物客が多い通りでもあり、敷居が高そうなお店でも入ってみることはそう難しくありません。 しかしスピンクがあるセント・ジェームス界隈のキングストリートは英国の王侯貴族のお膝元で、『セント・ジェームス界隈のキングストリートはその名にふさわしい威厳に満ちた通りだ。街路の突き当たりで艶やかな緑色をのぞかせる広場から、一台のロールスロイスが現れた。車は音もなく私の脇を通り過ぎ、少し先のどっしりとした円柱の門のある建物の前で静かに止まった。つばの広い帽子をかぶったサマースーツ姿の貴婦人が降り立ち、門衛に迎えられながら玄関を入っていく。(六嶋由岐子著、「ロンドン骨董街の人々」)』という風情なのです。

この品を最初に見た時、ヴィクトリア女王の表情がしっかりとよく出来た品と思いましたが、スピンクの作と分かれば納得です。

「ロンドン骨董街の人々」という本は、六嶋氏がスピンクに勤務された経験を書かれたとても面白い本ですので、ロンドンアンティークのアッパーマーケットに関心がある方や、スピンクについて詳しく知りたい方にお勧めします。



裏面の様子