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No. 6911 ヴィクトリアン スターリングシルバー クロス
クロス本体の縦(丸い留め金含まず) 4.3cm、横 2.65cm、厚さ 1mm強、重さ 6g、1893年 バーミンガム、二万四千円

ソリッド スターリングシルバーの大きめなクロスで、持った感じのかなりしっかりしたヴィクトリアン アンティークです。 彫りの綺麗なクロスであることに加えて、今から百十三年前の1890年代に作られたという年代的な古さもアンティークとしての大きな魅力になっています。

四方に向かって末広がりなシェイプなので、彫刻面が広く取れています。 おかげで手彫りのエングレービングの美しさが際立って、ゴージャスな印象のヴィクトリアーナに仕上がっています。

手彫りのエングレービングはアイビーと三つ葉の植物模様デザインです。 クロスの基本デザインは深めなタッチで彫られていますが、背景のシェード部分はとても繊細なエングレービングで、1ミリ間隔に十本ほどの細かさで彫刻線を引いた仕事です。 写真では解像力不足でよくご覧いただけないのが残念ですが、マグニファイイング グラスで見ていただくとヴィクトリアンの手仕事の繊細さに驚かれると思います。

19世紀後半からしばらく、ヴィクトリアンやエドワーディアンのイギリスでは、当時の自然主義的傾向にアイビーがよくマッチした為、バルコニーやガーデンファーニチャーに絡まるアイビーが大変好まれました。 アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。

四つのブリティッシュ ホールマークがすべてしっかりと深く刻印されているのも、このアンティークの好ましい特徴になっています。 裏面のホールマークは順に、メーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1893年のデートレター、そしてバーミンガムアセイオフィスのアンカーマークです。 

ヴィクトリア時代とは1837年から1900年までの64年間ですが、ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という言葉もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢います。

このクロスが作られた頃の時代背景については、英国アンティーク情報欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や「14. Still Victorian」の解説記事もご参考ください。