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No. 6876 スターリングシルバー フィドルパターン クリスティング デザートスプーン with フラワー エングレービング
スプーン長さ 16.8cm、重さ 35g、ボール部分の長さ 5.2cm、最大横幅 3.8cm、柄の最大幅 1.85cm、1911年 ロンドン、John Round & Son Ltd.作、一万五千円

今から95年前、エドワーディアンの時代が終った年に作られたスターリングシルバー スプーンです。 サイズ的にはデザートスプーンの大きさで、柄に彫られた繊細で美しいエングレービングから判断して、クリスティングのお祝い品だったと思われます。 クリスティング スプーンというのは、そのまま仕舞い込まれて使われずに今に残っていることも多くて、アンティークとしてはありがたいケースなのですが、この品もそうした事例の一つです。

花模様やその周りの二重ラインの装飾など、手彫りの彫刻はかなり細やかな仕事で、写真では十分にその繊細さがお伝え出来ませんが、アンティークハント用のルーペがお手元にあれば、この限界的な職人技の素晴らしさを分かっていただけると思います。 お花を形作る彫りは深めのタッチで、じっくり観察していくと、彫りの跡から彫刻刀を振るった向きまでもが窺い知れ、銀職人さんの息遣いが伝わってくるところにも私は惹かれます。

メーカーのJohn Round & Son Ltd.はシェフィールドの大きなシルバースミスで、アンティークとしても今日でもよく見かける有名メーカーの一つです。 ジョン ラウンドによって1847年シェフィールドで創業され、当初はスプーンとフォークのメーカーでした。職人技の素晴らしさとデザインの優雅さで、次第にその評価を確立して、息子のエドウィンをパートナーとして迎える頃には、銀器なら何でもこなすシェフィールドの大メーカーに成長していました。 第一次大戦を境にしてイギリスの国力が衰えていくと、多くのシルバースミスも衰退していった中で、John Round & Sonは1962年までシルバースミスとして仕事を続けていたというのも珍しい例と思います。

柄の裏面に刻印されたホールマークは順に、シェフィールドの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1911年のデートレター、そしてJohn Round & Son Ltd.のメーカーズマークです。

また、フィドルパターンについては、「4.イングリッシュ スプーン パターン」もご参考ください。