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No. 6875 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット ティースプーン
長さ 12.5cm、重さ 13g、ボール部分の最大幅 2.5cm、ボールの深さ 6mm、柄の最大幅 1.2cm、1795年 ロンドン、George Burrows作、一万円

今から二百十年以上前に作られたブライトカットが美しいスターリングシルバー ティースプーンです。 オールドイングリッシュ パターンはアンティークスプーンの系譜上はかなり古いパターンに属しますが、現代でも見かける生きているパターンなので、古めかしさを感じないことが面白さの一つと思っています。

アンティーク スプーンパターンの系譜について、詳しくはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご参考ください。

1700年代の作になりますので、英吉利物屋の取り扱い品の中でもかなり古い方の品になります。 ジョージアンの中でも1760年から1820年までのジョージ三世時代は長かったので、アンティークにおいても、この時代の品には「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。

柄の中心線に沿ってブライトカットが施され、柄先に向けては楕円状のブライトカットにつながっていきます。 その途中にある房飾りのようなデザインも彫りが深くて綺麗です。 これらのエングレービングは幾何学模様ではありますが、機械で切った彫刻線ではない手仕事なので、よく見るとブライトカットは中心線に対して多少左右にぶれていたりして、人の温かみを感じさせます。 以前にブライトカットのティースプーンをお買い上げいただいたお客様から以下のようなコメントをいただきましたが、二世紀前のティースプーンには、現代人を惹きつける何かがあるようにも思います。

『例のティースプーンは勉強の合間に入れるお茶に毎日欠かさず使っています。不思議なもので、使っていると、以前より輝きが出てきたように思います。また、親しみというか、スプーンに不思議な親近感までわいてきて、ちょっと危ないのかと思ってしまうほどです....(^^;』

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

写真二番目のホールマークは順に、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1795年のデートレター、ジョージ三世の横顔はデューティーマーク、そしてメーカーズマークになります。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

またジョージ三世については「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」後半部分もご参考まで。