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No. 6871 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット ティースプーン
長さ 12.1cm、重さ 12g、ボール部分の最大幅 2.45cm、ボールの深さ 6.5mm、柄の最大厚み 2mm、1809年 ロンドン、一万一千円

ジョージアンの中でもジョージ三世治世時代に作られたオールドイングリッシュ パターン スターリングシルバー ティースプーンです。 もうすぐ二百年が経とうという古さはアンティークとしての大きな魅力になりますが、小花模様にブライトカットのエングレービングの美しさも素晴らしい品と思います。

柄の中心線に沿ってブライトカットが施され、柄先に向けて花模様を介して、楕円状のブライトカットにつながっていきます。 この品に施されたブライトカットは彫りが深めで、光の反射が綺麗です。 エッジ部分や楕円状ブライトカットに沿っても繊細なビーズパターンが入っていて、花模様の彫りも含めて、細工の良さと優雅な雰囲気を感じさせてくれるジョージアン アンティークです。 

これらのエングレービングは幾何学模様ではありますが、機械で切った彫刻線ではない手仕事なので、よく見るとブライトカットのジグザグ模様にブレがあったりして、人の温かみを感じさせます。 以前にブライトカットのティースプーンをお買い上げいただいたお客様から以下のようなコメントをいただきましたが、二世紀前のティースプーンには、現代人を惹きつける何かがあるようにも思います。

『例のティースプーンは勉強の合間に入れるお茶に毎日欠かさず使っています。不思議なもので、使っていると、以前より輝きが出てきたように思います。また、親しみというか、スプーンに不思議な親近感までわいてきて、ちょっと危ないのかと思ってしまうほどです....(^^;』

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

写真二番目のホールマークは順に、メーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1809年のデートレター、そしてジョージ三世の横顔はデューティーマークです。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

オールドイングリッシュ パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事を、またジョージ三世については「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」後半部分をご覧ください。