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No. 6831 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュパターン テーブルスプーン
長さ 21.9cm、重さ 62g、ボール部分の長さ 7.6cm、ボール部分最大幅 4.5cm、深さ 1.0cm、1794年 ロンドン、二万四千円

今から二百十年以上も前のアンティークで、1700年代の作になりますので、英吉利物屋の取り扱い品の中でもかなり古い方の品になります。 ジョージアンの中でも1760年から1820年までのジョージ三世時代は長かったので、アンティークにおいても、この時代の品には「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。

写真二番目のホールマークは順に、メーカーズマーク、ジョージ三世の横顔はデューティーマーク、1794年のデートレター、ロンドン レオパードヘッド、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントです。 

英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、このテーブルスプーンが作られた時代は、イギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 そしてこのテーブルスプーンが作られた18世紀の終わり頃といえば、お隣のフランスで革命が起こって間もない時期にあたり、当時のイギリスはいつ対岸の火事が飛び火してくるか、ひやひやものでありました。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

オールドイングリッシュ パターンについては、英国アンティーク情報欄の「4.イングリッシュ スプーン パターン」を、そしてジョージ三世とデューティーマークについては、「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご覧ください。