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No. 6803 Mappin & Webb スターリングシルバー ペーパーナイフ
長さ 21.8cm、重さ 55g、ブレード最大幅 1.25cm、ブレード背の最大厚み 2mm、ハンドル最大幅 2.0cm、最大厚み 1.25cm、1913年 ロンドン、Mappin & Webb作、二万四千円

今から93年前、エドワーディアンの時代が終わった頃に作られたスターリングシルバーのペーパーナイフです。 ブレード部分は厚みが感じられて、55グラムと持ちはかりもあることから、しっかりした印象のペーパーナイフに仕上がっています。 シルバーハンドルも大きめでゴージャスな雰囲気ですし、持った感じも良く手になじみ、使いやすい品と思います。

ブレード部分に刻印された四つのブリティッシュ ホールマークは順に、1913年のデートレター、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして「Mappin & Webb」のメーカーズマークです。 

このバターナイフを作った「Mappin & Webb」は言わずと知れた有名メーカーですが、その歴史は興味深いので、少し振り返って見ておきましょう。

マッピン関連のアンティークを扱っていると、「Mappin & Webb」とよく似た名前の「Mappin Brothers」というシルバースミスに出会うことがあります。 「Mappin Brothers」は1810年にジョセフ マッピンが創業した工房で、彼には四人の後継ぎ息子がありました。四人は上から順にフレデリック、エドワード、チャールズ、そしてジョンで、年長の者から順番に父親の見習いを勤めて成長し、1850年頃には引退した父ジョセフに代わって、四兄弟が工房を支えていました。

ところが末っ子のジョンは、工房の運営をめぐって次第に兄たちと意見が合わなくなり、ついに1859年には「Mappin Brothers」を辞めて独立し、「Mappin & Co」という銀工房を立ち上げました。 以後しばらくの間、「Mappin Brothers」と「Mappin & Co」は「元祖マッピン家」を主張しあって争うことになります。

しかし最初のうちは「Mappin Brothers」の方が勢力があったこともあり、1863年には末っ子ジョンの「Mappin & Co」は「Mappin & Webb」に改名することとなりました。 Webbというのはジョンのパートナーであったジョージ ウェブの名から来ています。

「元祖マッピン家」問題では遅れをとったジョンでしたが、兄たちよりも商売センスがあったようです。 スターリングシルバー製品以外に、シルバープレートの品にも力を入れ、目新しい趣向を凝らした品や新鮮なデザインの品を次々と打ち出し、しかも宣伝上手だったのです。 ヴィクトリアン後期には当時の新興階級の間でもっとも受け入れられるメーカーに成長し、それ以降のさらなる飛躍に向けて磐石な基盤が整いました。

20世紀に入ってからの「Mappin & Webb」は、「Walker & Hall」や「Goldsmiths & Silversmiths Co」といったライバルの有名メーカーを次々にその傘下に収めて大きくなり、今日に至っています。 また「Mappin Brothers」ですが、時代の波に乗り切れなかったのか、1902年には「Mappin & Webb」に吸収されてしまっています。