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No. 6798 ヴィクトリアン スターリングシルバー クロス
クロス本体の縦(丸い留め金含まず) 4.0cm、横 2.2cm、厚さ 5mm強、1891年 バーミンガム、二万三千円

今から百十五年前のヴィクトリアン後期に作られたホロー(中空)構造のスターリングシルバー クロスです。

断面が六角形の構造になっているのが珍しく、私はこの形のクロスを初めて見ました。 また、振ってみると、コロコロカラカラと可憐な音がするのは鈴のようで、このクロスの不思議な魅力になっています。 これは製作時に小さな金属片を中に忍ばせた仕掛けで、こうした細工を施したクロスはこれまでに二、三回見ただけですので、これもまためったに見かけないレア物アンティークと言えましょう。

同様な鈴の仕掛けがある「No. 6797 ヴィクトリアン スターリングシルバー ナイフ」とほとんど同じ時期に作られた品であることにも興味を覚えます。

水藻が流れるような植物模様と、「SOUVENIR(思い出)」の刻み文字で、Continuity(連綿と続いていくこと)、Immortality(不滅)、あるいは Eternal Life(永遠の魂)等の意味合いを表象しているものと思われます。

裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 写真二番目のホールマークは順に、メーカーズマーク、バーミンガムアセイオフィスのアンカーマーク、1891年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントです。

ヴィクトリア時代とは1837年から1900年までの64年間ですが、ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という言葉もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢います。

このクロスが作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にありますの「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や、「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。