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No. 6770 スターリングシルバー ティーストレーナー
長さ 13.1cm、重さ 36g、ボール部分直径 6.1cm、ボールの深さ 1.6cm、1944年 シェフィールド、James Dixon & Son作、二万九千円

糸鋸をひいた跡が残る繊細な透かし彫りは、仕上がりの良いクラフツマンシップで、一流シルバースミスの作であることが感じられます。

写真二番目で裏面の柄元に並んだホールマークは順に、James Dixon & Sonのメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスのクラウンマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1944年のデートレターです。

この品が作られた1944年は第二次大戦の最中になります。 英国は戦勝国とはなったものの、大変な時期であったことは間違いありません。 ロンドンはドイツから弾道ミサイルの攻撃を受けたり、爆撃機による空襲も頻繁にありました。 私の住む町はロンドンの北の郊外で爆撃の目標にはならなかったようですが、近所のお年寄りの話では、ロンドンを空襲した帰りの爆撃機が、残った爆弾を燃料節約の為に落としていくコースに当たっていて、怖かったとのこと。 とは言うものの、茶道具のような不要不急の品を作っていたとは、当時のイギリスは結構余裕もあったんだなあ、と思いました。 

メーカーのJames Dixon & Son は、1806年創業、家族的な経営で、職人さんの中には、親、子、孫…と5世代にもわたり、ここで銀製品を作り続けた方もいらしたようです。 シェフィールドで創業後、順調に発展し、1873年にはロンドン進出を果たしました。 1900年頃にはロンドンのお店は5つに増えていました、また1912年にはオーストラリアのシドニーにも支店を開いています。 1851年のロンドン万国博覧会には多くの作品を出品したとの記録が残っており、その後20世紀初頭にかけて、海外での展覧会にも出展し、パリ、メルボルン、ミラノ等で名声を博しました。