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No. 6763 エドワーディアン スターリングシルバー オールドイングリッシュパターン デザートスプーン
長さ 18.1cm、重さ 52g、ボール部分の長さ 6.7cm、最大横幅 3.9cm、1901年 シェフィールド、Cooper Brothers & Son作、一万四千円

ヴィクトリア時代が終わり、エドワーディアンとなった年に作られたスターリングシルバー オールドイングリッシュパターン デザートスプーンで、百年以上昔のアンティークになります。

プレーンタイプのデザートスプーンですが、52グラムと持ちはかりがあって、銀の重みをしっかり感じさせてくれる品です。 柄の最大厚みは3ミリ半ほどになりますし、柄先にいたっても持ってみると中ほどに向かって銀が厚く、ふっくらした感じのスプーンです。

裏面のホールマークは順に、Cooper Brothers & Sonのメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1901年のデートレターです。

オールドイングリッシュ パターンについては、「英国アンティーク情報」欄にあります「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事を、また、この品が作られた当時の時代背景については、「14. Still Victorian」の解説記事をご参考ください。

クーパーブラザースについて長年疑問に思っていたことが、最近ある確信をもって解決したものですから、それが嬉しくてつい力が入り、会社の名を解説文中に重ねて記したものです。とは言っても、それはシルバー愛好家の私個人が、自分の疑問に答えを見つけただけのことで、この解説文はその内容を何もお伝えしていない訳ですから、寺田様には不審に思われたことすみませんでした。
クーパーブラザースについて、ホームページ中で詳しい解説は無いのですが、このシルバースミスの作は次の二ヶ所に写真があります。
1.英国アンティーク情報欄、「5シルバーホールマークとジョージアンの国王達」中の(写真1)透かしティースプーン。
2.品物欄、アンティークシルバーナイフ中の8423ペーパーナイフ。
どちらもCB&Sと刻印された盾の形のメーカーズマークがご覧になれると思います。

以下は疑問と答えの内容です。

上記透かしティースプーンを見ていただけると、このメーカーが素晴らしい品を作っていることがお分かりいただけると思います。
私が以前からこのメーカーに注目していたのは、一つにはその技術が優れていること、二つには比較的よく見かけるマークでシルバースミスの中でもメジャーであるようだった為です。以前、マッピン&ウェッブの箱入りCB&Sを見かけたこともあり、マッピン&ウェッブに納入できる上位メーカーだったことも知りました。

ところが、一つ分からないことがありました、それは盾状CB&Sのメーカーズマークが、
「The Directory of Gold & Silversmiths 1834-1914」というホールマークガイドブックに載っていないことでした。
この本は上下900ページにも及ぶ英国シルバーメーカーズマークの定本とも言える本で、かなりマイナーなシルバースミスも網羅しています。
なぜ、メジャーメーカーなのに掲載されていないのか?
それどころか、似たようなマークでCB&Sの刻印がお団子状になったマークはあり、そのメーカーの名はCharles Boyton & Sonとあるのです。
イギリス人アンティークディーラーの中でも、CB&S盾状マークを見てチャールズボイトンだと言う方もあり、またクーパーブラザースだと言う方もありで、混乱に拍車がかかりました。
そして、世の中に出まわっているCB&Sは圧倒的に盾状マークが多いのです。

私が注目してきた盾状CB&Sマークは、クーパーブラザースなのか、チャールズボイトンなのかで、長いこと疑問を抱えてきたのです。

ところが最近、8423の箱入りペーパーナイフを偶然手に入れました。
刻印は盾状CB&S、オリジナルケースにはCooper Brothers & Sons Ltdとありました。
かつてのシルバースミスは、同業他社に卸して販売を任せるケースは多かったのですが、今回の場合、頭文字の同じチャールズボイトンが偶然にクーパーブラザースに卸したと考えるより、やはりクーパーブラザースが自社品を自分で売ったと考えるのが自然です。

と言うわけで、楯状CB&Sはクーパーブラザースに間違いないと確信するに至ったというわけでした。

通常はメーカーズマークの識別にそれほど苦労はしませんが、定本にも出ていないメジャーメーカーと言う点に難しさがありました。
定本に取り上げられているマークは1834年から1914年に登録されたマークと言うことですから、おそらく楯状CB&Sのアセイオフィスへの登録が1914年より後だったのではないかと考えられます。

定本が年代を1834-1914と限定していることにはそれなりの意味があります。
英国シルバーの歴史の中でメーカーズマークが導入されたのは1363年のことですから、1834年以前も含めるとすれば、途方も無い仕事になってしまいます。
また、英国シルバーが隆盛を極めたのは、産業革命後、それもやはりビクトリアンとエドワーディアンの時代であったことは間違いありません、1914年の第1次世界大戦の勃発と共に、英国の古き良き時代は急速に終わりを告げます。
しかし総論としては上記の通りでも、個々のビジネスにおいては、クーパーブラザースのように1914年以降でも元気のよいシルバースミスがあったということではないかと思います。