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No. 6532 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ with マザー オブ パール ハンドル
長さ 19.3cm、重さ 56g、ブレードの最大幅 2.55cm、柄の最大幅 1.8cm、柄の最大厚み 9.5mm、1853年 バーミンガム、George Unite作、二万二千円

今から百五十年以上前の1853年に George Uniteの銀工房で作られたMOPハンドルのスターリングシルバー バターナイフです。 六十余年続いたヴィクトリア時代を前期、中期、後期の三つに分けるとすればこの品が作られたのはヴィクトリアン前期で、この頃はイギリスの世情もダイナミックに動いていた時期にあたります。 1850年代のイギリス歴史年表を見てみると、1851年の第一回万国博覧会に始まり、クリミア戦争、セポイの反乱、そしてインドの直接統治開始と、荒々しい激動の時代だったことが分かります。 このバターナイフが作られた1853年には江戸時代の日本でもペリーの黒船来航騒ぎがあって、日本が世界の渦巻きの中に巻き込まれていく発端ともなる事件がありましたが、これも偶然ではなく世界的な時代の潮流だったことが分かります。

このバターナイフを見てみると、質実剛健なヴィクトリアン前期の時代風潮をよく反映した豪快な雰囲気が伝わってきます。 柄は大きくてジョイント部分もしっかり出来ています。 ブレード背の厚みは柄に近い部分で2ミリほどあって、銀がしっかり使われており、全体で56グラムとかなり持ちはかりもあって、重厚な印象のバターナイフです。 長さが19センチ以上と、現代的な感覚からはバターナイフとしては大きく感じますが、これは古いアンティーク バターナイフほど大きいという傾向に沿っています。 マザー オブ パール柄に変色した部分がありますが、ビューッと勢いよく空高くを流れるすじ雲のようで、このバターナイフにはマッチングしていて、私は好印象に思います。

ホールマークは順に、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ヴィクトリア女王の横顔でデューティーマーク、1853年のデートレター、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、そしてGeorge Uniteのメーカーズマークです。

ジョージ ユナイトについては、英国アンティーク情報欄の「3.ジョージ ユナイト(1798−1874)」解説記事を、また、英国のバターナイフの歴史については、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」も合わせてご覧ください。