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No. 6286 ジョージ三世 スターリングシルバー ブライトカット シュガートング
長さ 13.7cm、重さ 35g、つまみの間隔 3.9cm、ジョージ三世のデューティーマーク(1785年から1822年)あり、二万二千円

現代のシュガートングと比べるとかなり大きな品で、だからこそ、全面にエングレービングされたブライトカットや、細やか彫刻をたっぷりと堪能出来る、手元に置いて楽しいアンティークになっているように思います。 また、アンティークにもいろいろありますが、この品は1800年前後の品ですから、二百年ほどの時を経ているという古さは、大きなポイントになるのではないでしょうか。 とても古いのにコンディションが良好なのも優れた特徴です。

左右両方の柄と、トング中央の背に当たる部分にはブライトカットが施されています。 ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

また縁取り部分や、つまみ部分に伸びていく繊細で優美な二重ビーズパターンのエングレービングも美しいと思います。 二種類合計四つの小花模様エングレービングも可愛らしさを感じます。 トング柄の中心線に沿ったジグザグ模様のブライトカットは幾何学模様ではありますが、機械で切った彫刻線ではない手仕事なので、よく見るとその幅が一様でなかったりと、それがかえって人の温かみを感じさせます。 

写真一番目で見えているホールマークはスターリングシルバーを示すライオンパサントと、ジョージ三世の横顔でデューティーマークです。 もう片方のトング柄内側にはメーカーズマークが刻印されています。

1800年前後にロンドンで作られたシルバーウェアにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われます。 このトングにはアセイオフィスマークがありませんが、マークがないことから、かえってロンドン アセイオフィスによる検定と判断がつきます。

デートレターがありませんが、ジョージ三世の横顔マークから、1785年から1822年まで製作年の幅を狭められます。 そして、アセイオフィスマークがないことから、1800年前後のロンドン製とさらに、製作年の幅を狭められると言うわけです。

ジョージアンの時代の中でも、ジョージ三世の治世(1760年から1820年まで)が最も長かったこともあり、この時代のアンティークには「ジョージ三世」の名を冠することが英国ではよくあります。 

シュガートングは、角砂糖ばさみで、アフタヌーンティの優雅さを演出するのに一役かってきた品です。 ですが、このぐらい大きなトングですと、私は角砂糖にこだわらず、いろんな用途に使ってみたいと思います。 例えば思い出すのは、以前住んでいた香港の、マンダリン オリエンタル ホテルのアフタヌーンティーです。サンドウィッチやパティスリーといったお決まりのコースに加え、アジアンテイストの春巻きなどが添えられ、西洋と東洋のよいところを取り入れているなあと感心したものです。(英国にも点心付きアフターヌーンティーがないかなーと懐かしくなります。西洋風だけだと、何か物足りない気分になるのです。)

この品のような大きめのトングで、春巻きやしゅうまいといった点心をはさんで使うのも楽しいかと思います。 イギリスでは、アイスキューブを挟むのにアンティーク トングを使っている方もいらっしゃいます。 また、英国のアンティークマーケットにはアメリカ人の買い手が多いのですが、彼らの使用法はほとんどアイスキューブ用だそうです。