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No. 6033 フランス製 シルバー クロス
クロスの縦(留め具含まず) 4.1cm、クロスの横 2.7cm、クロス下部の最大横幅 1.5cm、厚さ 2mm弱、重さ 12g、フランス製、一万六千円

横幅と厚みがあって、12グラムとかなり持ちはかりもあり、いかにも重厚な雰囲気のシルバークロスです。 裏面は打ち出しになっていて、表と裏で違った雰囲気が楽しめるのもいいと思いました。

長いこと使われてきたクロスであるようで、上部の留め具には磨耗がありますが、普段使いしていく上で問題はないでしょう。 この留め具の磨耗具合からみてもかなり古い品であるようです。 フランスのホールマーク制度にはデートレターの定めがないので、製作年を特定することは出来ませんが、おそらく19世紀の後半の、イギリスで言えばヴィクトリア時代の品と思われます。 

この品はちょっと見ただけではフレンチクロスであることが分かり難いのですが、アンティークハント用のルーペがあれば、とても小さな手掛かりを読み取ることで、フランス製であることが解読できます。 それでは、この機会にフランスのホールマークについて少し解説しておきましょう。

1838年に導入されたフランス製シルバーのスタンダードマークにはいくつかの種類があります。 大きめな銀には知恵と武勇の女神、ミネルバの横顔マークを、そして比較的小さな銀には「いのししの頭」あるいは「蟹」のマークが刻印されます。 また、大小ともに菱形のメーカーズマークを刻印するようにも定められています。

ただ、問題は「いのししの頭」と「蟹」のマークの大きさが、1.25mm*1.75mmと小さいので判読が難しいことです。 まず、マークサイズが小さいので見落としがちになり、そもそもこの品はフレンチらしいと気付くのに時間がかかります。 そしてさらに、小さな刻印の中に描かれた図柄まで識別するには、刻印の表面をクリーニングする必要も出てきますし、やはりルーペの助けが必要にもなりましょう。

具体例で見てみますと、このクロスの場合には、写真二番目の裏面で半円環部右側に小さな菱形マークが見えることから、フレンチ メーカーズマークではないかと気付きます。 そして写真一番目では半円環部左側にあるキズのような刻印の表面を綺麗にしてルーペで詳細に見たところ、「蟹」のマークが識別出来て、初めてフレンチクロスであることが分かるのです。

このようにホールマークを判読するプロセスには手間もかかるのですが、時間をかけてフレンチクロスであることを調べ上げると、その頃にはけっこうな愛着も湧いて来るというのが、アンティークハンターの性分なのかと思うのです。



裏面の様子