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No. 6011 スペイン銀貨のピアストワーク ブローチ
直径 3.8cm、重さ 12g、ブローチ本体の厚み(留め金含まず) 2mm、素材の銀貨は1790年頃から1805年頃のスペイン製、一万六千円

今から二百年ほど前のスペイン銀貨に、糸鋸を使った手仕事で、見事な透かし細工が施されています。 デザインは元々の8レアル銀貨のままで、「ヘラクレスの柱 (Pillars of Hercules)」に挟まれた王冠とシールド(Crowned Shield)はスペインの国章です。 そして、シールド内には「Leon and Castile(ライオンとお城)」が入っています。

裏面にはスペイン国王カルロス四世のポートレートがあったはずですが、削られて平らになっており、アクセサリーとして完成度が高められています。 1790年から1805年頃に作られた銀貨ですので、普通に使われた銀貨なら磨耗も激しいところでしょうが、ミントの銀貨をブローチに加工したようで、王冠や「Leon and Castile」の絵柄などしっかり残っています。 

断面をルーペで観察すると、糸鋸を引いたギザギザ跡が細やかでレベルの高い仕事です。 これだけの透かしを完成させるには、確かな手仕事の技術がまず必要で、さらに大変な時間と手間がかかったブローチと思います。

「ヘラクレスの柱」はスペイン国旗にも描かれる象徴ですが、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスの手になるとされる二本の柱とは、地中海の出入り口にあたるジブラルタル海峡を挟むヨーロッパ側のジブラルタルと、アフリカ側のアビラ山を指し、古代地中海文明においてはここが地の果てとされていました。 そして現在のジブラルタルは、18世紀初頭のスペイン継承戦争の結果、イギリスがスペインから奪ったままとなっており、標高400メートルほどの岩山に三万人が住む英国領です。 

地中海を望むジブラルタルという響きに惹かれて、旅したことがあるのですが、不思議なところでありました。 二、三キロ四方という狭い岩山の領土は、平地が少ないので、ジブラルタル空港の滑走路を幹線道路が横切っています。 飛行機の離着陸時には、電車の踏み切りのように遮断機が降りて、道路は通行止めになるのです。 周りはスペインなのに、そこだけイギリスの飛び地というのも変な感じでした。 英国政府がジブラルタル市民を優遇してガソリンが安いらしく、スペインの人たちが給油にやってきて、国境が混雑していたのも、なんだか印象に残っています。 


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