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No. 5767 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 15.9cm、重さ 24g、ブレード部分の最大幅
2.1cm、柄の最大幅 1.5cm、1893年 ロンドン、George
Maudsley Jackson作(=Josiah Williams &
Co.作)、一万七千円
ブレードとハンドルの全面にわたって手彫りのエングレービングが施され、ゴージャスな雰囲気のスターリングシルバー バターナイフです。 作られたのはヴィクトリアン後期の1893年のことで、ゆうに百年以上の時を経ているという古さも魅力と思います。 見たところ華やかな印象のアンティークでありますが、その一方で、柄は最大で3ミリの厚みがあって、しっかり作られた銀のバターナイフであることもポイントです。
ブレード中央に位置するお花のエングレービングは可愛らしく、植物文様とウェーブパターンの融合デザインはオーソドックスなヴィクトリアン アンティークの特徴です。 波模様のウェーブパターンは、Continuation(続いていくこと)や
Eternity(永遠)を象徴するクリスチャンモチーフで、ヴィクトリアンやエドワーディアンの時代に好まれました。
手彫りの彫刻はかなり細やかな仕事で、写真では十分にその繊細さがお伝え出来ませんが、アンティークハント用のルーペがお手元にあれば、この限界的な職人技の素晴らしさを分かっていただけると思います。 ルーペでじっくり観察していくと、彫りの跡から彫刻刀を振るった向きまでもが窺い知れ、銀職人さんの息遣いが伝わってくるところにも私は惹かれます。
柄の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 ホールマークは順に「GMJ
(=George Maudsley Jackson)」のメーカーズマーク、ロンドンレオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1893年のデートレターとなっています。
George Maudsley JacksonはJosiah Williams
& Co.の共同パートナーの一人であったことから、GMJはJosiah
Williams & Co.と実質同体と考えてよいシルバースミスになります。
ホールマークのガイドブックである『JACKSON'S
HALLMARKS』によれば、「GMJ」についてのコメントは「Wide
range of particularly good flatware.」とありますので、GMJ単体の評価もかなり高いのですが、Josiah
Williams & Co.も有名シルバースミスの一つです。
一般にヴィクトリア時代創業のシルバースミスが多い中にあって、Josiah
Williams & Co.はジョージアンの時代に始まった老舗の一つになります。 1800年創業のJosiah
Williams & Co.はブリストルのメーカーで、地方では最大のシルバースミスでした。 今日でも中世の街並みや大聖堂が美しいブリストルは、16世紀にはエイボン川河口の貿易港として栄え、その後はイングランド南西部の主要都市として発展しました。 しかし大きな都市であったがゆえに、第二次大戦中の1940年11月24日にはドイツ軍による空襲を受け、Josiah
Williams & Co.も工房を失い、残念ながら140年の歴史に幕を閉じました。
それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあると思います。
ちなみにヴィクトリアンの物品を示すアンティーク専門用語に「Victoriana」という言葉があります。 ヴィクトリア時代は1837年から1900年までの六十余年の長きにわたり、英国の国富が大いに伸びた時代なので、アンティークコレクターにもヴィクトリアーナ専門という方が英国には結構いらっしゃるようなのです。
この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、英国アンティーク情報欄にあります「14. Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。
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