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No. 5725 アール・デコ スターリングシルバー  ピアストワーク コーヒースプーン 六本セット ケース付
長さ 9.5cm、重さ 6g、ボール部分の最大幅 2.0cm、柄の最大幅 8mm強、1937年 バーミンガム、三万八千円

今から七十年以上前に作られたスターリングシルバー  コーヒースプーンで、アール・デコの直線的なデザインを特徴とし、手間のかかった透かし細工がポイントになっています。 ピアストワークは内側のみならず、輪郭の外側にも糸鋸を引いたギザギザ跡が残っており、外回り部分も糸鋸で切り取った作りとなっているのは珍しく、時間のかかった手仕事であることが分かります。 元々はコーヒー用ですが、ティースプーンとされてもよいでしょう。

それぞれボール裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1937年のデートレターになります。

英吉利物屋ではヴィクトリアンの品を扱うことが多いので、1937年というと、なんだか新しいようにも感じます。 しかし、歴史年表を眺めてみると、写真の六本セットが作られた前年には日本では二・二六事件が起こっています。 雪の降りしきる東京で陸軍の青年将校らが反乱を起こし、首相官邸などをおそって、高橋是清ら大臣のほか多くの政府高官を暗殺したり、重傷を負わせたりした大事件でした。 これ以降の日本が太平洋戦争へと大きく舵をきっていく分水嶺となった出来事だったわけで、あらためて年月の経過を考えてみると、やはりずいぶんと昔の品だと思うのです。

1920年代、30年代はアール・デコの時代ですが、ヴィクトリアンあるいはエドワーディアンの伝統的で凝ったシルバーデザインとは大きく異なる変更が、この時代にあったことは、とても興味深いと思います。 ある解説によれば、このデザイン上の大きな断絶を生み出した最大の要因は第一次大戦だったと言われています。 当時の人たちはヴィクトリアンとエドワーディアンの輝かしい伝統の延長上に世界大戦が起こったことに大きなショックを覚え、ポストワーの時代には、昔の時代から距離を置きたいと望む風潮が強く、そこにアール・デコがぴたりとはまったというわけです。 

アール・デコについてはいろいろな説明がありますが、この解説はかなり言いえているように思います。 イギリスを隅々まで旅してみて、どんな小さな田舎の村にも、第一次大戦の戦没者を悼む記念碑が建っているのを知りました。 英国人の暮らしを根底から揺るがした出来事であったことが想像されるのです。

アール・デコ スターリングシルバー  ピアストワーク コーヒースプーン 六本セット ケース付






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