アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い品一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 5611 ヴィクトリアン スターリングシルバー ティーキャディー スプーン
長さ 9.5cm、重さ 20g、ボール部分の最大幅 4.05cm、ボール部分の長さ 5.1cm、ボールの深さ 1.0cm、1897年 チェスター、二万八千円

今から百十年前のヴィクトリアン後期に作られたスターリングシルバーのティーキャディースプーンで、三つ葉のクローバーのハンドル部分に特徴があって素敵です。 裏面には1897年のデートレター、チェスターアセイオフィスのシティーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして少し刻印があまくなっていますがメーカーズマークがあります。 

ティーキャディースプーンは比較的に品薄なアンティークであること、ヴィクトリアンという古さ、チェスター アセイオフィスで検定を受けていること、そしてデザインのよさを考え合わせると、なかなかレアなヴィクトリアーナと思います。

まず、チェスターシルバーというのは希少価値があってポイントとなりましょう。 英国各地のアセイオフィスで検定を受けたスターリングシルバーのおそらく9割以上は、ロンドン、シェフィールド、バーミンガムのいずれかの品で、チェスターは数が少ないのです。 

裏面を見るとチェスター アセイオフィスのシティーマークがくっきりと読み取れます。 チェスターのマークは「Three Wheat Sheaves(三つの麦束)」と呼ばれ、1686年から使われてきたものですが、1962年にチェスターアセイオフィスが閉鎖となったので、今はもうありません。

ウィート シーフ(麦束)とは、豊穣、生産力(Fecundity)、肥沃さ(Fertility)のシンボルで、英国ではラッキーモチーフとして好まれる縁起物です。 そもそも小麦はギリシャ神話に出てくる「農業、豊穣、結婚の女神デーメーテール」を象徴しています。 以前にミントン美術館で見た「ウィート シーフを抱えた少女の絵皿」にとても惹かれ、この少女の顔立ちはデーメーテールを意識したのかしらと、妙に気になったのを覚えていて、それ以来どうも私はこのウィート シーフというモチーフに惹かれるのです。

さらに、英語には「live in the clover (安楽に暮らす)」という言い回しがあり、こうした三つ葉のクローバーの良い意味合いがこのティーキャディースプーンから感じられます。 クローバーと安楽の繋がりについて、牧草を刈り入れしていたファーマーの方から教えていただいたことがあるので、ご紹介しておきましょう。 牧草など植物の成長には土中の窒素分が必要ですが、クローバーは進化した植物で、大気中の窒素を直接に取り込んで養分に出来るのだそうです、そのため、クローバーのある畑は肥沃になります。 また家畜の飼料としてもクローバーの繊維質とプロテインが動物たちの成長に欠かせないのだそうです。 と言うわけで、クローバーに恵まれた農場は栄え、安楽に暮らしてゆけるということでした。

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、英国アンティーク情報欄にあります 「14.Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。 





裏面の様子

アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い品一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ