アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い品一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 5299 エドワーディアン MIZPAH 9カラットゴールド ブローチ
横の長さ 4.5cm、最大縦長 1.2cm、ブローチ本体の最大厚み(留め具含まず) 3.5mm、ハートの横幅 9.5mm、1901年 バーミンガム、Sydenham Brothers作、一万九千円

エドワーディアンの時代が始まった年に作られたMIZPAHモチーフの9カラットゴールド ブローチです。 MIZPAHと聞いても、クリスチャンでない方々にはちょっとピンと来ないと思うのですが、ヴィクトリアンやエドワーディアンの頃の人たちにとっては、ほとんど誰もが知っている人気のキーワードでありました。

というのは、このMIZPAHメッセージは旧約聖書Genesis(創世記)の一節で、"And Mizpah; for he said, The Lord watch between me and thee, when we are absent one from another."に由来しており、恋人たちの間でお互いの愛が末永く続きますようにと、MIZPAH ジュエリーをプレゼントしあうことが、19世紀の終わり頃にとても流行ったことが背景にあるのです。

ハートには大きく 「MIZPAH」 とあって、背景部分には 「The Lord watch between me and thee, when we are absent one from another.」と大変に細かな文字が彫りこんであります。

「MIZPAH」以外にも、アイビーモチーフもあり、さらに両サイドにはホースシューも見えていて、盛りだくさんなところも興味深いと思います。

19世紀後半からしばらく、ヴィクトリアンやエドワーディアンのイギリスでは、当時の自然主義的傾向にアイビーがよくマッチした為、バルコニーやガーデンファーニチャーに絡まるアイビーが大変好まれました。 アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。

ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄三つが描かれて「Three Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の図式はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。

メーカーの Sydenham BrothersはジョージとロバートというSydenham兄弟によって、ヴィクトリアン中期の1873年にバーミンガムで創業されたジュエリーメーカーです。 ダイヤモンドやその他のジェムストーンを用いたジュエリーが得意分野でしたが、シルバー&ゴールドスミスとしてもアセイ登録しており、写真のようなブローチも作っていたというわけです。

この分野のアンティークは現代の品には見られない雰囲気と、一つ一つが個性的で同じものをまず見かけないのが特徴で、ホールマークから製作年やメーカーの特定が可能なことも多いので、私は興味深いアンティーク分野と思っています。





アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い品一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ