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No. 5265 ベリースプーンタイプ スターリングシルバー フィドルパターン ティースプーン
長さ 13.5cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.5cm、最大横幅 2.9cm、柄の最大幅 1.5cm、1872年 ロンドン、Henry Holland作、八千円

ベリースプーンタイプでティースプーンの大きさというのは珍しいと思います。 ボール部分はゴールドギルトされています。 柄の裏面には「Henry Holland」のメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1872年のデートレター、そしてヴィクトリア女王の横顔マークがしっかり深く刻印されています。

この品を作った「Henry Holland」は有名シルバースミスの「Holland, Aldwinckle & Slater」と実質同体で、英国シルバーウェアの歴史の中でも大きな役割を果たしてきた有力メーカーの一つです。 イギリスのアンティーク シルバーウェアに関する参考書を紐解きますと、ヴィクトリア期の重要シルバースミスとして、ジョージ・アダムスとフランシス・ヒギンスが挙げられることが多いようです。 この二大メーカーを繋ぐ役割を担ったのが「Holland, Aldwinckle & Slater」でありました。 

「Holland, Aldwinckle & Slater」はヴィクトリア時代が始まった翌年の1838年に、ヘンリー・ホランドがロンドンで創業した銀工房です。 1866年にはElizabeth Eaton & Sonを買い取って、事業規模を拡大していきます。 1883年には新たに二人のパートナーが加わり、工房名は「Holland, Aldwinckle & Slater」と変わりました。 その後もいくつかのシルバースミスを買収し、ヴィクトリア期を通じて有力なシルバースミスに成長していきましたが、1883年にこの時代の最有力シルバースミスであったジョージ・アダムスのChawner & Coを買収したことは大きな出来事となりました。 Chawner & Coから移ってきた腕の確かな銀職人たちは「Holland, Aldwinckle & Slater」の名声を高めることとなったのです。

その後の工房史も見ておきますと、エドワーディアンの時代以降まで優秀な銀職人が集まる一流メーカーとして活躍しましたが、1922年にはフランシス・ヒギンスに買収されることになって、その歴史を終えました。 ヴィクトリアンとエドワーディアンの時代を通して、英国シルバーウェア史の中心に常に位置してきた「Holland, Aldwinckle & Slater」は、当時の一流メーカーの一つと言ってよいでしょう。

このスプーンのパターンは柄の形がヴァイオリン(Fiddle)に似ていることから、フィドルパターンと呼ばれます。 もともとは18世紀のフランスで人気だったこのフィドルパターンは、19世紀に入った頃からイギリスでも次第に流行っていきました。 フィドル パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご覧ください。

この品が作られたヴィクトリア時代については英国アンティーク情報欄にあります 「14.Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。 

上記にあります週間新聞パンチの発行年月が1873年2月で、このティースプーンが作られた1872年にかなり近いことは、時代背景を知る上で特に興味を覚えます。






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