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No. 5173 スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 11.5cm、重さ 12g、最大幅 3.1cm、柄の最大幅 1.1cm、柄の最大厚み 2mm弱、1935年 バーミンガム、French, Brinton & Co作、一万円

小振りなスプーンになりますが、ボール部分が幅広なことや柄元に近い部分のノッチ構造など、ブリティッシュ ジャムスプーンの要件はしっかり備えておりますので、ジャムスプーンあるいはプリザーブスプーンで間違いないでしょう。

作られたのは今から七十年ほど前の1935年になりますが、大切に使われてきたようで、コンディションも良好で美しい小品と思います。 ボール部分のハートシェイプが可愛らしいので、毎朝の普段使いにジャムやプリザーブ一般に使っていけたらよさそうですし、あるいはこのサイズの特徴を活かして薬味に使うのもいいかなと思いました。

ボール裏面には「A.J.B」のメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1935年のデートレターがしっかり深く刻印されています。

ボール裏面にホールマークがある場合は、長年の使用によって刻印がかすれてくることが多いものですが、このジャムスプーンの四つのホールマークは、とても鮮明なのもよいポイントでしょう。

この品のメーカーズマークはAJBと刻印されていて、Alfred Jacob Bartholomewの略です。
そしてAJBというメーカーズマークは、French Brinton & Coという工房が使っていたいくつかのメーカーズマークの一つになります。

この工房は以下のように何回か名前を変えています。
Jacob French 1821-1841
Jacob French & Sons 1841-1869
John & George French 1869-1870
John French & Co 1870-1890
French, Brinton & Co 1890-

創業者のJacob Frenchから息子たちの代に移り、1890年には、新たにBrinton氏を共同経営者に迎えた工房の略誌が見て取れるかと思います。
Alfred Jacob Bartholomew は1875年にこの工房のパートナーとなっています。
1916年頃には工房を支えていたのは、Brinton氏だったようですが、第一次大戦のため職人を失い事業は縮小していったようです。

「A.J.B」のAlfred Jacob Bartholomewが工房で活躍していたのはヴィクトリアン後期のことですが、メーカーズマークにはブランド価値があることから、後々まで引き継がれて使われるのが普通です。 こうした経緯については、アンティーク情報欄にあります「3. ジョージ・ユナイト」の解説記事もご覧になってください。

小さなジャムスプーン一本から、この品が作られた七十年前に思いをめぐらせ、さらには「A.J.B」のマークからヴィクトリアン後期に、そしてそもそも銀工房が始まったジョージアンの時代に、しばしタイムスリップしていけるのが、アンティークの楽しみとも思えるのですが如何でしょうか。

「A.J.B」の活躍した時代については、「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」もご参考まで。




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