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No. 5165 Peter & Ann Bateman スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット ティースプーン
長さ 12.4cm、重さ 10g、ボール部分の長さ 3.9cm、最大幅 2.3cm、ボールの深さ 0.6cm、1794年 ロンドン、Peter & Ann Bateman作、一万円

今から二百年以上前のジョージ三世時代、18世紀終わり頃に作られたオールドイングリッシュ パターン ブライトカット ティースプーンです。 アンティークの中でも1700年代の作という古さは大きな魅力になりますが、加えてこの品の場合は「Peter & Ann Bateman」の作であることがポイントになっています。

このティースプーンを見ていく場合、二つの意味で混乱の時代に作られた品であることに興味を覚えます。 まず1790年代はベイトマン ファミリーにとって大変な時でありました、さらに加えて英国全体も混乱の時代にありました。

1790年にヘスター・ベイトマンが引退し、彼女の二人の息子達であったピーターとジョナサンによってファミリービジネスは引き継がれました。 ところが翌1791年にはジョナサンが亡くなってしまいます。 ジョナサンの奥方であったアンがご主人に代わり、ピーターとビジネスパートナーを組み、PB,AB(ピーター、アン ベイトマン)のマークで工房は引き継がれました。 大御所へスターの引退と、息子ジョナサンの不幸、そしてジョナサンの奥方アンの登場という工房の歴史を、私はアンの立場から見てしまい、大変な時であったろうと想像するのです。

英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、このティースプーンが作られた時代は、イギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 そしてこのティースプーンが作られた1794年頃は、フランス革命がますます先鋭化していって、当時のイギリスはいつ対岸の火事が飛び火してくるか、ひやひやものでありました。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

写真二番目のホールマークは順に、「Peter & Ann Bateman」のメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1794年のデートレター、そしてジョージ三世の横顔マークはデューティーマークになります。 それから、柄先に彫られたイニシャルは「B」です。

ベイトマン ファミリーの系譜については、 「19.ベイトマン ファミリーのメーカーズマーク」の解説記事もご参考ください。 また、オールドイングリッシュ パターンについては、「4.イングリッシュ スプーン パターン」を、そしてデュティーマークについては、「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご覧ください。






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