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No. 5143 ジャポニスム スターリングシルバー ブローチ
直径 2.6cm、本体部分の最大厚み(留め具含まず) 3.5mm、ピンの長さ 3.2cm、ヴィクトリアン後期の英国製、一万一千円

小枝にとまり羽ばたこうとしている小鳥のモチーフは、ヴィクトリアン後期におけるジャポニスムの流行に沿ったものでしょう。 当時の英国では「Japanese craze(日本趣味の大流行)」がピークを迎えておりましたので、小鳥のデザインは、ジャポニスム モチーフブックから採用されたのだろう考えられます。

手彫りのエングレービングはかなり繊細な仕事で、小鳥のボディーで色合いが濃いめに見える部分は、1ミリ間隔に何本もの細かな彫刻線を刻んで影を付けていった、手仕事としては限界的な細工になっています。

ホールマークはありませんが、彫刻の素晴らしさ、小鳥のモチーフ、そしてピンの長さやブローチ全体の構造からみて、ヴィクトリアン後期に英国で作られたスターリングシルバー ブローチで間違いところでしょう。

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ヴィクトリアン後期の英国にあってはジャポニスムが新鮮で、大きな顧客需要があり、モチーフブック等の基礎資料も充実していたことが、今日私たちが日本趣味な英国アンティークシルバーにお目見かかれる理由なのです。 百数十年も前に多くのイギリス人たちが日本に大いなる関心を持っていたことには驚かされます。





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