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No. 5019 ジャポニスム モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー ティースプーン
長さ 10.7cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 3.5cm、最大横幅
2.2cm、柄の最大幅 1.15cm、1896年 ロンドン、Francis
Higgins作、一本 七千円 (5本あります-->4本あります-->2本あります-->SOLD)
スプーンの表側には、梅の木に花がちらほら咲いていて、ジャポニスムな雰囲気が漂っています。 しかしこの品の特徴はむしろ裏面にあるでしょう。 裏面を見ていくと、柄の中ほど目立つ位置にメインモチーフとして鶯がとまっていて、「梅に鶯」のジャポニスムモチーフが決定的になります。 あらためて全体のデザインを見渡すと、表側にも小枝のてっぺんに鳥がとまっているのに気が付きました。
今から百十年も前のヴィクトリアン アンティークになりますが、あまり使われた様子がなく、コンディションが良好なこともよいでしょう。 裏面のボール部分にはロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1896年のデートレター、そして「Francis
Higgins」のメーカーズマークがしっかり刻印されています。
(1)今から百年以上前に作られたアンティークで、かなり古いヴィクトリアーナであること。
(2)「Francis Higgins」はヴィクトリア時代を代表するシルバースミスであること。
(3)イギリスで「日本趣味の大流行」のあった終わり頃に作られており、優良メーカーの作ということもあり、ジャポニスム アンティークとしても完成度が高いこと。
等がポイントになりましょう。
シルバーウェアについての参考書を紐解くと、ヴィクトリア時代の最重要なシルバースミスとして、フランシス・ヒギンスとジョージ・アダムス(=
Chawner & Co.)が引き合いに出されることが多いようです。 このティースプーンを作ったのはその一つであるになります。
メーカーズマークはハート型に「FH」が入ったモダンな印象の刻印なのですが、当時のホールマークとしては珍しい形で、そんなことからも一度見たら忘れられないマークです。 Francis
Higginsの名前は、やはりコレクター需要が高いのは事実なので、メーカーにこだわりのない方も、シルバーのお勉強がてら、「ハートにFH」=「Francis
Higgins」と覚えておかれてもよいでしょう。
1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。
サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。
その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、
Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of
Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book
of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」
そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese
Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese
craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。
ヴィクトリアン後期の英国にあってはジャポニスムが新鮮で、大きな顧客需要があり、モチーフブック等の基礎資料も充実していたことが、今日私たちが日本趣味な英国アンティークシルバーにお目にかかれる理由なのです。 百数十年も前に多くのイギリス人たちが日本に大いなる関心を持っていたことには驚かされます。
裏面の様子
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