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No. 4438 Many Happy Returns アンティーク ポストカード
横の長さ 14.2cm、縦の長さ 9.1cm、1930年代の英国製、二千円

しっかりした紙質のアンティーク ポストカードで、周囲のレリーフ飾りもかなりの立体感があります。 

このアンティーク ポストカードの見所は次の三点でしょう。

(1) The Telephone saves Time and Moneyの消印
(2) 「Hand Tinted」という手法
(3) 午後九時半の消印(1933年2月3日)

裏面をご覧いただくと、消印に「The Telephone saves Time and Money」というスタンプが使われているのが分かります。 この消印にはポストカード マニアックの終焉と、イギリスにおける電話の時代の到来が見て取れることから、歴史社会学的な資料として興味深く思います。

『The Victorian House(Judith Flanders著)』という本によると、ヴィクトリア時代のイギリスにおいては、ものすごい数のポストカードが行き来していたようです。 当時のイギリス都市部では、郵便配達が一日に五、六回に及んでいました。 職場で働く旦那さんが、ランチタイムの頃に、奥様宛に「今日の帰宅は午後六時の予定です。Love」とか書いてポストカードを送れば、夕方までに届くという状況だったのです。

電話が広く普及する前のことで、多くの人たちにとって、ちょっとした用事を伝える手段として、郵便システムがこれほどに発達していたのです。 ヴィクトリア時代でもまだ前期にあたる1851年の新聞『The Times』に掲載された投書の例がありました。 それによると、ロンドンで午後一時半に投函された手紙が、その日の午後四時になっても、3キロ離れた宛先に届かなかったという苦情だったのです。 逆に言うと、当時のロンドンではそれが当たり前だったわけで、百五十年前のイギリス郵便、恐るべしだったのです。

それほどまでに便利であったイギリスの郵便制度ですが、二十世紀に入ると電話という文明に利器が登場してきて、イギリスにおけるポストカード人気は1910年代ころにピークを迎えることになります。

電話が普及するには時間がかかりましたが、このポストカードが遣り取りされた1933年当時には、多くの人々に対して「The Telephone saves Time and Money」というメッセージを送り、電話の利用を促進させようという時代にまでなっていたということを示しています。

使われている切手は King GeorgeX One Penny Red 切手です。 ちなみに、ジョージ五世は切手コレクターとしても有名です。 切手収集が「帝王の趣味」といわれるのはジョージ五世に由来します。

昔のポストオフィスは朝早くから夜遅くまでやっていました。 そういえばシャーロック・ホームズの探偵小説の中でも、夜遅くに電報を打つ場面があったような。 それでも午後九時半の消印というのはちょっと驚きです。 当時の郵便局が夜はいつまで営業していたのか、調べてみてもなかなか資料は見つからないもので、裏付けになるアンティークな資料性にも注目です。

写真二番目をご覧いただくと、切手に描かれているのが英国王ジョージ五世のポートレートです。 ジョージ五世は1910年から1936年までの英国王で、その王妃がドールハウスでも有名なQueen Maryになります。 メアリー王妃はアンティークや刺繍が趣味の奥方でした。 




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