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No.4168 アール・デコ スターリングシルバー バターナイフ with ピアストワーク
長さ 14.6cm、重さ 20g、ブレードの最大幅 1.85cm、柄の最大厚み 3mm弱、1943年 バーミンガム、二万二千円

このスターリングシルバー バターナイフは手元に置いて見るほどに、美しい銀製品と思います。 見たところフォルムのやわらかさを第一印象として感じますが、柄は最大厚みが3ミリ弱あって、銀の重みが心地よく、しっかり作られています。 

細身ブレードの先の方は最大横幅が1.85cmありますが、中ほどは絞りが入って1.2cmになり、ブレードの緩やかな湾曲とあいまって、綺麗な流線型のフォルムになっています。

ピアストワークは直線と楕円が交錯する幾何学デザインで、アール・デコの系譜上にある品と言ってよいでしょう。 手仕事で糸鋸を引いた跡が残る繊細な透かし細工は、仕上がりの良いクラフツマンシップです。

手仕事で糸鋸を引いていくのですから、職人さんの優れた技術と多くの時間がかかります。 現代のシルバースミスの方からお聞きしたことがありますが、昔の時代の手間がかかった丁寧な仕事は、現代の労働コストが上昇した英国では、大変なお金がかかり、もはや同じようには出来ないとのことでした。

写真二番目で見えるように、柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークが、しっかり深く刻印されているのもこの品のよい特徴です。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1943年のデートレターになります。

それから、この銀のバターナイフが作られた1943年は第二次大戦中のことになります。 英国は戦勝国とはなったものの、大変な時期であったことは間違いありません。 戦争中のロンドンはドイツから弾道ミサイルの攻撃を受けたり、爆撃機による空襲も頻繁にありました。 私の住む町はロンドンの北の郊外で、直接には爆撃の目標にはならなかったようですが、近所のお年寄りの話では、ロンドンを空襲した帰りの爆撃機が、残った爆弾を燃料節約の為に捨てて帰るコースに当たっていて、怖かったとのこと。 とは言うものの、こうした優雅な銀製品を作っていたとは、当時のイギリスは結構余裕もあったんだなあ、と思うのです。



柄の裏面の様子

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