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No. 20119 ロザリオ クロス with スタンホープ
クロスの縦 4.1cm、横 2.7cm、厚さ 0.6cm、ロザリオ一周の長さ 57cm、1910年代、英国製、二万五千円
クロス中央にある直径わずか1.5mmほどのレンズを覗き込むと、「幼子のキリストを膝に抱いて座った聖母マリアの前に跪く聖ドミニクの図」のマイクロフィルム写真がとてもはっきりくっきりと見えます。どんな絵かお伝えしようと思いざっと描いてみました、本当はもっと精密な宗教画なのですが、ご参考まで。
この仕掛けはスタンホープと呼ばれます。ヴィクトリア中期にクリスタル素材のスタンホープレンズとマイクロフォト技術が開発されたことによって、ピンの頭ほどのマイクロフォト写真に、お祈りの図などを撮って、それを拡大して見せる仕掛けが可能になったものです。スタンホープは1870年頃から1920年頃まで主に作られていました。
その後はスタンホープレンズを作るメーカーがなくなってしまい、この技術も絶えました。今日では技術を復活させてスタンホープを作っている愛好家のメーカーがアメリカに一社だけあるそうです。
先日、英国でスタンホープ研究の第一人者の方とお話させていただく機会があって、いろいろ教えていただきました。何でもその道の専門家がいて、ずいぶんマイナーなことでも調べている人がいるというのが、イギリスという国の面白いところだと思います。また、イギリスにはスタンホープ コレクターズクラブがあって、年に一度はミーティングを開いて、セミナーや情報交換をしているとのことでした。
このクロスはお祈りの際に用いる数珠(じゅず)でロザリオ(rosary)と呼ばれます。クロス本体の彫刻が美しく、数珠にも丸モチーフのデザインで統一された彫刻が施されています。
スタンホープが夏目漱石の『吾輩は猫である』に出ていると教えていただきました。
夏目漱石 『吾輩は猫である』六、迷亭君と細君の会話
迷亭君は今度は右の袂の中から赤いケース入りの鋏(はさみ)を取り出して細君に見せる。「奥さん… この鋏を御覧なさい… ここに蠅の眼玉くらいな大きさの球がありましょう、ちょっと、覗いて御覧なさい」
「おやまあ写真ですねえ。どうしてこんな小さな写真を張り付けたんでしょう。」
以上です。
私が思いますには、スタンホープが英国で流行っていた頃に、漱石はロンドン留学しておりますので、漱石はイギリスでスタンホープを見知る機会があって、そんな経験が『猫』にもあらわれているのだろうと考えます。
今ではあまり見かけないスタンホープ、漱石の時代には流行りものだったことが、うかがい知れるのは、このアンティークの面白さと感じます。
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