アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ
No. 20098 アール・デコ Good Luck ホースシュー ネイル スターリングシルバー ティースプーン SOLD
長さ 10.7cm、重さ 10g、最大幅 2.45cm、柄の最大幅 9.5mm、Ethel Mary Ventress作、1939年 シェフィールド アセイオフィス、(6本あります-->SOLD)
グッドラック ホースシューネイル デザインの純銀ティースプーンです。
イギリスではホースシューがグッドラック アイテムとされますが、そのホースシューを打ち付ける釘も、グッドラック アイテムとされていて、ホースシューネイルを使ったアートの分野があります。
写真のティースプーンは、アール・デコの時代に登場した、そうした分野の一つに位置する銀製品です。
ティーやコーヒーのたびに、グッドラックも一緒にという趣向は楽しいと思います。 また、シルバーそのものにもグッドラックの要素があり、ダブル・グッドラックで、イギリスでは人気があったものでしょう。
ボール裏面にはブリテッィシュホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順に「Ethel Mary Ventress」のメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1939年のデートレターです。 メーカーの「Ethel
Mary Ventress」は、ティーストレーナーの分野ではイギリスの定番モデルを多く作っているシルバースミスなので、聞き覚えのある方も多いでしょう。
ホースシューはイギリスではグッドラックの意味があって人々に好まれます。 縁起のよさが好まれ、パブの看板に蹄鉄三つが描かれて、写真四番目のような「Three
Horseshoes」なんていう名前のパブもありますので、「ホースシュー=幸運」の図式はイギリス人の暮らしに深く根ざしていることが分かります。
シャーロック・ホームズの『白銀号事件』を読んでいましたら、ホームズの「I think that I shall put this horseshoe into my pocket for luck.(このホースシューは幸運があるように、私が貰っておきましょう。)」という台詞に出会いました。 この探偵小説は1892年12月に発表されていますので、少なくともヴィクトリアンの頃には、「ホースシュー=グッドラック(幸運)」の連想があったことが分かります。 シャーロック・ホームズ シリーズには、アンティークなヴィクトリアンの暮らし向きが読み取れる場面が豊富なので、注意して読むと面白いようです。
それでは、なぜホースシューが好まれるようになったのか。 ヴィクトリア時代に書かれた 『The Horse Shoe, The True Legend of St. Dunstan and The Devil』 という書物には、ホースシューにまつわる伝説が書かれています。 その概要をご紹介してみましょう。
後にカンタベリー大司教になったセント・ダンスタンは、ハープを弾くのが上手で鍛冶屋の仕事もこなす器用な人でした。 ダンスタンが夜にハープを奏でていると、デビルがやって来て邪魔をするようになりました。 デビルの悪戯に困ったダンスタンは一計を案じて、蹄鉄を取替えに来たデビルの蹄足にホースシューの留め釘を深く打ち込んだのでした。
痛がるデビルにダンスタンはこう言います。 「これからは礼拝の邪魔をしないこと、音楽を奏でる邪魔をしないこと、そしてホースシューを掲げた家には寄り付かないこと。 これを守るなら直して進ぜよう。」 デビルはダンスタンと契約をかわし、以降はホースシューが魔除けの役割を果たすようになり、さらには Good Luck をもたらすお守りとされるようになったのでした。
ライオンの刻印は英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 このライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。
横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から470年ほど前の1544年のことになります。 これは当時チューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。
銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。
歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。
彫刻のないプレーンタイプになりますが、品のよいフォルムは十分に美しく、磨きぬかれたソリッドシルバーの輝きを楽しむのも、またよいのではと思わせてくれるアンティーク スプーンと感じます。
お客様から、なるほどと思わせていただいたお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。
『先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。』
私はアンティーク ランプ ファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか心が落ち着くものでした。
【アイスクリーム スプーンとしてもおすすめ】
以前に英吉利物屋のお客様から次のようなコメントをいただきました。
『銀のスプーンは熱伝導率が高いので、我が家ではアイスクリームをすくうときに重宝しています。なめらかに力をいれずにすくうことができます。ティースプーンも、いつも使うわけではありませんから、これから暑くなってくると、銀スプーンの使用頻度が高くなるというわけです。銀は口当たりも柔らかく、美味しさ倍増で、一度使うと手離せません。』
あるいは、また別のお客様からは、こんなコメントもいただきました。
『銀の口当たりと言うのでしょうか、冷たいものでも冷たさがワンクッション置いて伝わるようなあの感じが大好きなので、銀のスプーンを是非と思っています。アイスクリームが大好きで、冬でも毎日食べてしまうので、それなら一層美味しくなるように銀のスプーンで食べたいと思い、探しています。』
どうやら、銀スプーンとアイスクリームの相性のよさに惹かれる方が多いようです。
この相性でありますが、銀素材の熱伝導率と関係があるのだろうと見ております。
現行の市販アイスクリームスプーンでは、比較的に熱伝導率の高いアルミニウムが使われることがありますが、比べてみると銀の熱伝導率は圧倒的です。すべての金属の中で銀の熱伝導率がもっとも高いという事実があります。アイスクリームスプーンを作るなら、本当はアルミニウムより銀が最高の素材ということだろうと思います。
ちなみに調べてみましたら、以下のようでした。
熱伝導率(単位: W・m-1・K-1)
銀 420
金 320
アルミニウム 236
鉄 84
ステンレス鋼 16.7 〜 20.9
ゴールドよりも熱伝導率が高く、すべての金属の中で最高の熱伝導率を有するという銀の特性、銀ファンとしては覚えておきたいところ、とても興味深く思っています。
想像してみてください。この飾り、元々は長さが4センチほどの真っすぐな蹄鉄釘が16本あっただけです。それを曲げて組んで作り上げたヴィクトリアン鍛冶屋さんの匠の技を感じます。