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No. 18987 グッドラックのお守り & ボールマーカー ジョージ五世 シリング銀貨 
シリング銀貨の直径 2.35cm、重さ 6g、厚さ 1.5mm、シリング銀貨は1936年 鋳造、九千三百円

グッドラックのシリング銀貨、私はゴルフの時にボールマーカーとして使っています。 銀貨のグッドラック効果がよいのか、グリーン上で集中力が増し、好結果につながるように思います。 イギリス人のゴルファーはカナダやニュージーランドなど外国コインをマーカーに使う人も多いですが、お膝元であるイギリスの、それも銀貨と分かると、興味を示す人が多いので、話題性もあってグッドです。

ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。 一方で、今ではもうないシリング銀貨という言葉の響きにはノスタルジーを感じます。 

例えば、ヴィクトリア時代に英国留学した夏目漱石がシャーロック・ホームズで有名なロンドンのベーカー街で昼食したら 2シリングほどだったと日記に書いていて、そんな資料から当時の暮らしに思いを馳せるのも、シリング銀貨を通じたノスタルジックなアンティークの楽しみ方と思います。

王冠の上にライオンが乗ったデザインが見えます。 細かいことを言うと、大紋章の各部を構成する部分にはいろいろな呼び名がありますが、紋章の天辺にある飾りをクレストと言います。 ジョージ五世の大紋章のクレストが、写真一番目に見える王冠&ライオンのデザインであるわけです。

イギリスで人気のある強い動物といえば、まずはライオンが挙げられます。 イギリスの数多いパブの中にあって、もっとも多い名前が「Red Lion」で、英国人のライオン好きを示しています。 この国には約六万弱のパブがありますが、そのうちで一番多いパブの名前は「Red Lion」で、六百軒のレッドライオンがあると言われます。 英国中のパブのうちほぼ百軒に一軒はレッドライオンという計算です。

歴史的に見ても、三頭のライオンは『ライオンハート(獅子心王)』の愛称で知られる12世紀の英国王リチャード一世時代からのエンブレムです。 リチャード一世は十年間の治世中に国内にいたのがたったの六ヶ月という王様で、海外での戦いに明け暮れた英国王でした。 戦いで名を馳せ、ライオンハートの称号を得て、その勇気と生きざまは騎士の模範とされています。 

そして現代ではサッカーのイングランド代表が使うエンブレムが、まさにこのスリーライオンなのです。 そんなわけで、サッカーのイングランド代表のことを 『11頭のライオン』と呼ぶのも一般です。

さらに言えば、スターリングシルバーの銀純度を保証するブリティッシュ ホールマークも横歩きライオンの刻印で、ライオンパサントと呼ばれます。 

こうしてみると、イギリスにおいては大事なものはみなライオンといっても言い過ぎではないように思います。

写真二番目に見えるのは英国王ジョージ五世のポートレートです。 ジョージ五世は1910年から1936年までの英国王で、その王妃がドールハウスでも有名なQueen Maryになります。 メアリー王妃はアンティークや刺繍が趣味の奥方でした。

『裸の王様』、『みにくいアヒルの子』、『人魚姫』などで有名なアンデルセンの作品の中に、19世紀半ばに書かれた『シリング銀貨』というおとぎ話があります。 外国旅行に出かけた英国紳士の財布にあった一枚のシリング銀貨が、異国の地で財布からこぼれてしまい、いろいろな人たちを巡りめぐって、最後には元々の持ち主であった英国紳士のもとに戻ってくるというストーリーです。 

物語の中で、シリング銀貨に穴をあけて糸を通し「Lucky Shilling」として身に着けるという話が出てきます。 シリング銀貨は大き過ぎず、小さ過ぎず、ペンダントヘッドにちょうど良いサイズであることと、シルバーという素材は幸福に通じることから、遠いヴィクトリアンの時代よりラッキーシリングとして好まれてきた背景があるようです。 

シリング銀貨の周りにはギザギザが付いており、これはよく見かける硬貨の特徴ですので、当たり前のように思われるかも知れません。 ギザギザがあった方が滑り難くて、失いにくいからでしょうか。 それもあるかも分かりませんが、最初にギザギザ銀貨が鋳造されたのは三百五十年ほど前の1663年のことで、それにはもっと大事な理由がありました。

銀貨の歴史を紐解くと、遠い昔には銀の重量そのもので商取引が行われた時代もありました。 しかしこれでは取引毎に重さを量ったり、銀の純度を疑ってみたりと、円滑な取引が出来ません。 そこで銀貨が発明されました。 時の為政者が銀貨の質を保証して、人々は銀の重量ではなくて、銀貨の刻印を信じて商取引をするようになりました。 

銀の重量ではなく、硬貨に刻まれた文字や数字による支払いは、商業活動を大いに伸ばしたわけですが、悪いことする人たちも出てきます。 銀貨の端から銀を少しずつ削り取って銀を盗むのです。 銀貨の重さが少し軽くなっても、表面に刻まれた価値で取引が出来ることを願いながら。 

しかしこうした泥棒行為が幅を利かせてくると、『グレシャムの法則』が働き始めます。 グレシャムは「悪貨は良貨を駆逐する。」と言いました。 綺麗で完全な銀貨と、軽くなった銀貨が手元に入ってくると、人々は綺麗な銀貨は手元に残し、軽くなった銀貨は取引に使おうとします。 こうして良貨は退蔵されて世の中から駆逐され、やがて流通する銀貨は悪貨ばかりになっていくというわけです。

銀貨のギザギザは、銀貨の周囲から少しずつ銀を削り盗る不正を予防するために、イギリスで1663年に初めて導入されたのでした。

最後に、イギリスの昔のお金についてですが、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1シリング」=「12ペンス」になります。 ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。
昔、サマセット・モームの「月と六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数字でもあるのです。
1971年になってようやく旧通貨制度が廃止され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。 

この十二進法時代の名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに、先日気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと落ち着かないのでしょう。 

このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン時代のイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服者が「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。

グッドラックのお守り & ボールマーカー ジョージ五世 シリング銀貨



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