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No. 18986 バンク オブ イングランド 10
シリング 銀行券 シルバーケース入り ペンダントヘッド
with IN EMERGENCY BREAK GLASS
「10 Shilling Note」の銀製ホルダー 縦*横*奥行き
1.15cm*1.35cm*0.85cm、一万一千円
銀ケースに10シリングのお札が折り畳んでしまってあります。 ケースの裏面には素材が銀であることを示す
「SILVER」刻印があります。
10 Shillingはハーフポンドにあたり、後の時代にはシリングコインになりましたが、その昔は
10 Shilling札が使われておりました。 その
10 Shillingのお札を折りたたんで、直方体のシルバーケースに入れてあります。 ケースの側面には「IN
EMERGENCY BREAK GLASS」と刻印があって、イマージェンシー用という洒落っ気もあるのですが、珍しい「10
Shilling Note」を実際に使う人がいなかったのは当然です。 こうした「10
Shilling Note」や「1Pound Note」は今ではコレクターアイテムで、専門に取り扱っているアンティークディーラーもあります。
1971年までのイギリスでは、1ポンド=20シリング=240ペンスだったので、「10
Shilling Note」=ハーフ ポンドになります。
ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計算するのも億劫です。 一方で、今ではもうないシリングという言葉の響きにはノスタルジーを感じます。
例えば、ヴィクトリア時代に英国留学した夏目漱石がシャーロック・ホームズで有名なロンドンのベーカー街で昼食したら
2シリングほどだったと日記に書いていて、そんな資料から当時の暮らしに思いを馳せるのも、シリング アクセサリーを通じたノスタルジックなアンティークの楽しみ方と思います。
『裸の王様』、『みにくいアヒルの子』、『人魚姫』などで有名なアンデルセンの作品の中に、19世紀半ばに書かれた『シリング銀貨』というおとぎ話があります。 外国旅行に出かけた英国紳士の財布にあった一枚のシリング銀貨が、異国の地で財布からこぼれてしまい、いろいろな人たちを巡りめぐって、最後には元々の持ち主であった英国紳士のもとに戻ってくるというストーリーです。
物語の中で、シリング銀貨に穴をあけて糸を通し「Lucky
Shilling」として身に着けるという話が出てきます。 シリング銀貨は大き過ぎず、小さ過ぎず、ペンダントヘッドにちょうど良いサイズであることと、シルバーという素材は幸福に通じることから、遠いヴィクトリアンの時代よりラッキーシリングとして好まれてきた背景があるようです。 写真のペンダントヘッドは10シリング紙幣ですから、ラッキー効果も十倍かも。
最後に、イギリスの昔のお金についてですが、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1シリング」=「12ペンス」になります。
昔、サマセット・モームの「月と六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数字でもあるのです。
1971年になってようやく旧通貨制度が廃止され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。
この十二進法時代の名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに、先日気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times
Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと落ち着かないのでしょう。
このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン時代のイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服者が「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。
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