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No. 18853 スターリングシルバー フレーム入り ジョージ六世 ラッキーシリング エナメルワーク ペンダントヘッド
縦の長さ(留め具含む) 3.4cm、直径 2.45cm、厚み3mm、重さ 7g、シリングは1951年鋳造、9,800円

「シリング(Shilling)」という、今では廃~されてしまってもうない貨幣単位のノスタルジックな響きと、エナメルワークの美しさに惹かれました。 シリングを囲んでいるフレームはスターリングシルバーで、「SILVER」の刻印があります。

大きな王冠の上に両手に剣を持ったライオンが座っています。 ライオンの頭上にもクロスの付いた王冠があり、赤いエナメルで装飾されています。 下部の大きな王冠はゴールド、赤、青、黄色、茶色のエナメル装飾です。 両サイドのシールドは黄色と黄緑のエナメルです。 背景部分は黒エナメル、そしてライオンと「ONE SHILLING」や「1951」の文字や数嘯ヘゴールド エナメルになっています。 

ハ真二番目で裏面に見えるジョージ六世の横顔はゴールド エナメルで、背景部分は表と同様な黒エナメルとなっています。 

肖像は現女王エリザベス二世の父君にあたる英国王ジョージ六世です。 「王位を賭けた恋」で有名なエドワード八世が劇的な退位を遂げた後に、急膀、英国王になったのがジョージ六世でした。 ご本人も自分が国王向きなパーソナリティーであるとは思っていなかったようで、それまでに国王になる準備がまったく出来ていなかったこともあって、初めのうちは周囲からも大丈夫だろうかと心配されました。 

ところがその後の対ドイツ戦争中に、側近たちがバッキンガム宮殿からの疎開を進言したのに、それを拒んで、爆撃を受けるロンドンから執務を続けたことで、国民の人気が上がりました。 戦争中のロンドンはしばしばドイツの爆撃機が来たり、さらにはV1やV2と呼ばれるミサイルまでもが飛んでくる危険な状況でありました。 そんな中でロンドンにあって英国民を鼓舞し続けたジョージ六世の評価が上がったのは当然と言えば当然でしたが、さらには王妃や子供たちを大切にする理想的な家庭の夫であったことも、「良き王」として英国民の尊敬を集める理由となったのでした。

イギリスにおけるシリングは1920年にスターリング純度925から純度500に変更となって、それが第二次大戦後の1946年まで続いております。 ハ真の品は1951年鋳造なので、銀貨ではありませんが、ラッキーシリングというモチーフのよさと、エナメルワークの組み合わせはポイントになりましょう。

『裸の王様』、『みにくいアヒルの子』、『人魚姫』などで有名なアンデルセンの作品の中に、19世紀半ばに書かれた『シリング銀貨』というおとぎ話があります。 外国旅行に出かけた英国紳mの財布にあった一枚のシリング銀貨が、異国の地で財布からこぼれてしまい、いろいろな人たちを巡りめぐって、最後には元々の持ち主であった英国紳mのもとに戻ってくるというストーリーです。 

物語の中で、シリングに穴をあけて糸を通し「Lucky Shilling」として身に着けるという話が出てきます。 シリングは大き過ぎず、小さ過ぎず、ペンダントヘッドにちょうど良いサイズであることとも遠いヴィクトリアンの時代よりラッキーシリングとして好まれてきた背景であるようです。 

いつもヴィクトリアンやエドワーディアンの品をご紹介することが多いので、六十年ほど前の品というと、新しいようにも感じるのですが、この品が作られた時代を振り返ってみると、やっぱりずいぶん昔だと思えてきます。 ハ真の品が作られた頃に起こったのが、有名なロンドンの「Great Smog」であります。

1952年125日、ロンドンでは折りからの寒さの中、風が止み濃い霧がたち込み始めました。 この霧はそれから3日間ロンドンを覆うことになります。 寒さで人々が石炭ストーブをどんどん焚くものですから、霧の原因となる微粒子核が撒き散らされて、霧がどんどん深くなっていったのです。 ものすごい霧で、2〜3メートル先はおろか、伸ばした自分の指先さえはっきり見えなかったと伝えられています。 映画館や劇場でもドアの隙間から霧が入り込んで、スクリーンや舞台が見えず、キャンセルが相氓ャました。 そして濃霧による交通事故や不清浄スモッグによる呼吸器障害のために、ロンドンで四千人もの死メが出る大惨魔ニなったのです。 

昔からロンドンと言えば、霧の街として有名でしたが、「Great Smog」は長いロンドンの歴史の中でも最悪の出来魔ニなりました。 そしてこれを契機に数年後の1956年には清浄空気法が定められることとなったのです。 

石炭ストーブ梠繧フ「Great Smog」のエピソードは今日では考えられない出来魔ナすが、この品が作られた六十年ほど前という時代に思いをいたす面白い手掛かりにはなるでしょう。

エナメルワークとは日本語で言うと「オ宝焼き」のことで、金属にガラスソv袒薬を焼き付ける装飾技法です。 元々は古代エジプトに起源を持ちますが、奈良時代には日本にも伝来しました。 その後、オ宝焼きは日本で技術的な発展を遂げ、ヴィクトリア梠繧フ英国では、逆に日本の技術が大いに研究もされました。 このあたりの経緯は、「英国アンティーク情報」欄の「10.エルキントンミのシルバープレート技術と明治政府の岩倉g節団」後半に解説がありますので、ご参考まで。 

イギリスの昔のお金についてですが、1ポンド=20シリング=240ペンスなので、「1シリング」=「12ペンス」になります。 ポンド、シリング、ペンスと三つの単位を持っていた英国の旧通貨単位はなんだかとても複雑で、十二進法が混じっているので計Zするのも億劫です。
昔、サマセット・モームの「撃ニ六ペンス」の題名を初めて見た時に、なぜ六ペンスなのかと思ったものですが、十二進法の通貨単位では、ちょうどきりがよい数嘯ナもあるのです。
1971年には旧通貨制度が廃~され、1ポンド=100ペンスのすっきりした十進法の制度に代わって現代に至っています。 

この十二進法梠繧フ名残が、今日の英国人の暮らしにまだ残っていることに、先日気が付きました。 娘が通ったイギリスの小学校では、掛け算の九九のことを「Times Table」と呼んで、低学年の子供たちは日本と同じように暗唱するまで練習します。 ところが日本と違うのは「一の段」から始まる九九が「九の段」で終わらないのです。 イギリスの九九は12*12まで覚えます。 日本の九九は81通りですが、英国の九九は12*12=144通りです。 今日の十進法の暮らしなら「十一の段」や「十二の段」は不要なはずですが、ずいぶん昔の名残が未だに残っていて、先生たちも「十二の段」まで教えないと翌ソ着かないのでしょう。 

このややこしい12進法の呪縛をイギリス人にかけたのは、一千年近く前にイングランドを征服してノルマン王朝を開いた、元々はフランス貴族のノルマンディー公ウィリアム(=ウィリアム一世)だったことが知られています。 彼がやってくる前のサクソン梠繧フイングランドでは、「1シリング」=「5ペンス」だったものを、この新しい征服メが「1シリング」=「12ペンス」にせよと定めたのでした。 そしてその後、お金の単位については1971年までウィリアム一世の定めが守られてきたわけで、そしてまた、今でも21世紀の子供たちが「十二の段の九九」を習っているわけなのです。

スターリングシルバー フレーム入り ジョージ六世 ラッキーシリング エナメルワーク ペンダントヘッド

ラッキーシリング エナメルワーク ペンダントヘッド with スターリングシルバー フレーム

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