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No. 18205 ジャポニスム モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 13.0cm、重さ 21g、最大幅 3.2cm、ボールの深さ 0.8cm、柄先の銀球の直径 0.9cm、1896年 シェフィールド、James Deakin & Sons Ltd 作、一万八千五百円

竹を模したハンドルのデザインは、あまり見かけることがないので不思議な感じがいたします。 ブリティッシュ ホールマークを手掛かりに製作年を調べてみると、今から116年前のヴィクトリア時代終り頃にあたる1896年作と分かりました。 そうなると、ジャポニスムな竹のデザインに納得がいきます。

ヴィクトリアンのジャポニスム モチーフ ブックの影響が明らかなアンティークで、私はこういった日本とイギリスのカルチャーが交錯するシルバーを見つけると嬉しくなります。

どうして、こういった和風モチーフの銀製品がヴィクトリア時代のイギリスで見られるかというと、それは百五十年以上にわたる日本美術研究の蓄積がイギリスにあるからです。 

1853年のペリー来航以来、日本の工芸が広く西欧に紹介され、英国シルバーの世界にも日本の伝統的なモチーフとして蝶などの虫、飛翔する鳥、扇、竹、さくら等のデザインが取り入れられていきました。1870年代、80年代のこうした潮流はオーセンティック ムーブメントとして知られています。

サムライの時代が終わった頃、1870年代前半における英国のジャポニスム取り込みについては、英国アンティーク情報欄の「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」記事後半で詳しく解説していますのでご覧になってください。

その後のジャポニスム研究は、モチーフブックなどの成果となって、以下のような書籍が次々と発表されていきます。
「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」、 「A Grammar of Japanese Ornament and Design(1880年、Cutler)」、「Book of Japanese Ornamentation(1880年、D.H.Moser)」

そして1880年代の後半にはジャポニスム モチーフブックの集大成である「Japanese Encyclopedias of Design(Batsford)」が出て、Japanese craze(日本趣味の大流行)のピークとなりました。

ちなみに、イギリスにおけるジャポニスム研究書のさきがけとなった「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」の著者であるオールコックという名前、聞いた覚えのある方もいらっしゃるかと思います。

サー・ラザフォード・オールコックは、幕末の日本で数年間暮らしたイギリスの初代駐日公使です。 当時のイギリス公使館は、現在の品川駅から徒歩七分、港区高輪の東禅寺に置かれていましたが、オールコック在任中には、攘夷派浪士が英国公使館を襲撃した東禅寺事件など起こっています。 まさに命がけの日本勤務であったろうと思います。 彼は幕末日本滞在記である 『大君の都 (岩波文庫 上・中・下)』も残しています。

オールコックと言えば、幕末期のイギリス外交官としての仕事に注意が向きがちですが、一方では日本美術に傾倒し、「Art and Art Industries of Japan(1878年、 Sir Rutherford Alcock)」という著作も残しているわけで、日本のよさを広く海外に紹介してくれた、よき広報官という側面もあったのでした。

オールコック初代駐日公使、「Art and Art Industries of Japan」、ヴィクトリア時代のJapanese craze(日本趣味の大流行)、ジャポニスム研究、数多くのモチーフブック等々、こういう歴史的な背景があって、イギリスで作られ現代に到っている銀製品というわけです。

百年以上前のヴィクトリアン アンティークになりますが、コンディション良好で綺麗なことはポイントになりましょう。 

ボールの内側には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもこの品のよい特徴です。 ホールマークは順に 「James Deakin & Sons Ltd」のメーカーズマーク、1896年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールドの王冠マークになります。

「James Deakin & Sons Ltd」は1865年にジェームス・ディーキンによってシェフィールドで創業されたのが始まりです。 1886年には彼の三人の息子達、ウィリアム、ジョン、アルバートもパートナーに加わり、ファミリービジネスとして上述の社名に変更し、事業は順調に発展していきました。 1888年にはロンドン支店開設、ヴィクトリア時代後期の1890年代には、スコットランドのグラスゴーとアイルランドのベルファストにも支店を開設しています。 

しかし多くのシルバースミスがそうであったように、事業のピークは英国の国力がピークであったビクトリア後期からエドワーディアンの時代にあったようです。 その後は事業を次第に縮小していき第二次世界大戦が始まった1940年には店を閉めました。 メーカーズマークの「JD WD」はJohn & William Deakinのイニシャルになっています。

ジャポニスム モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー ジャムスプーン



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